業界MAP

教育・その他サービス

AI教材やオンライン化が加速
人材不足続く介護業界に新技術も


 教育業界には学習塾・予備校、語学学校、幼児英才教育、通信教育・出版社などがある。少子化によって市場が縮小を続ける中、教育のICT(情報通信技術)化や学習指導要領の改訂、大学入試改革などに対応したきめ細かいサービスが成長の鍵となっている。

 わたしたちの暮らしを支える大切なサービスの中には、介護・福祉サービス業界、警備業界がある。いずれも人材不足が深刻だ。労働環境の改善を図るため、AI(人工知能)などの最新技術を活用する動きが広がっている。

 

注目データ


教育産業全体の市場規模(2018年度)
2兆7656億円


前期比0.9%増。学習塾・予備校、幼児向け英会話教材市場、学生向け通信教育市場など9分野で市場拡大。19年度も微増の予測。(矢野経済研究所)

要介護(要支援)認定者数(2019年3月末)
658万人


前年同月比17万人増。要支援1~要介護2の軽度が65.5%を占める。保険給付費は9兆6266億円となり、00年度のおよそ3倍に。(厚生労働省)

 

企業動向

●オンライン講義や通信教育のニーズ高まる

 教育現場のICT化が、コロナ禍によって一気に加速している。文部科学省は全国すべての小中学生(約900万人)に1人1台のパソコンやタブレット端末を配備して高速通信網を整備する「GIGAスクール構想」の当初予定を前倒しし、2020年度内に配備を終えるべく巨額の補正予算を組んだ。また、政府の教育再生実行会議は「ポストコロナ期における新たな学び」をテーマに議論を進め、オンライン教育、少人数学級、前倒しでの9月入学案などを検討し、21年5月をめどに首相へ提言する方針だ。
 オンライン講義の拡大を受け、学習塾・予備校ではAIを利用した教材が活躍している。17年創業のアタマプラスが開発したアプリ「atama+」は、駿河台学園、Z会グループの栄光などが次々と導入し、全国の塾1900教室にまで利用が広がっている。同社と駿台は自宅で受験できるオンライン模試を開始し、7月の第1回申し込みは国内最大規模となる4万人を突破した。河合塾のグループ会社もAI教材「河合塾One」を主に予備校に通えない生徒向けに開発している。
 矢野経済研究所によると、20年度のeラーニングの国内市場規模はオンライン教育の需要の高まりから前期比4.5%増の2460億円と予測している。デジタル学習教材のすららネットでは、自治体や公立学校での採用が拡大し、3月末からの3カ月間で利用者が57%の大幅な伸びを示し、6月には約11万人を数えている。
 通信教育のニーズも高まっている。ベネッセホールディングス(HD)は20年3月期の連結純利益が前期比28%増の62億円。コロナ禍で塾や英語教室が開けなくなったが、国内通信教育講座「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」が好調で、4月の会員数は271万人と前期より9万人増やした。巣ごもり需要は大きく、学研HDは同9月期の業績見通しで、児童書などの教育コンテンツ事業の営業利益が前期の約10倍増になるとの予想を立てている。

●海外での教育ビジネスに広がり

 教育ビジネスの海外展開は、経済活動のグローバル化で在外邦人が増えてくるとニーズが高くなった。駿河台学園は海外校を2020年に欧米やアジアで4校新設し、世界14カ国で21校を運営する体制にする。公文教育研究会は世界57カ国・地域に8800教室をもち、 19年12月時点ではカナダやインドネシアなどで生徒数が伸び、世界の学習者数は392万人に上っている。「明光義塾」を展開する明光ネットワークジャパンは韓国や台湾で個別指導塾を展開している。学研HDはミャンマーでの小学生向け学習塾を広げている。
 一方、コロナ禍によって、事業展開に大きな支障が出ている国・地域も生じている。

●介護業界、AIやロボットを活用

 家族だけで担っていた高齢者の介護を社会全体で支え合う介護保険制度が導入され、20年となった。高齢人口が増える一方、今後、15~64歳の現役世代は急減し、厚生労働省によると、介護人材は2025年度には約34万人不足すると見込まれている。そうした中、AIや介護ロボットなどの先端技術を活用し、業務の効率化を図ろうとする動きがある。ニチイ学館はNECと共同で、ケアプランの作成にAIを活用する研究をしている。SOMPOケアは介護現場でのICT化を進め、浴室や居室に見守りセンサーを設置したり、介護記録をタブレット端末で共有したりして、介護職員の負担軽減を図る。介護ロボットの開発・導入に補助金制度を設ける自治体もある。
 人材不足が特に深刻なのは訪問介護職。厚労省によると、18年度の有効求人倍率は13.1倍で介護職全体の3.95倍を大きく上回る。さらにコロナ禍によって現場は切迫している。テレワークができない職場で、介護という営みを支えなければならない。在宅医療クリニックや訪問介護事業所の多くは小規模のため、法人を超えて、マスクなどの感染防御資材を地域単位で配備しようとする動きもある。

●成長続く警備業界、事業領域も拡大

 警察庁の調べでは、2018年末の警備業者数は9714業者(前年比1.7%増)、警備員数は55万4517人(同0.4%増)だった。ここ数年は微増傾向で、近年は、一般家庭のホームセキュリティーの普及、コンビニエンスストアのATM導入による現金運搬警備業務、大規模イベントにおける雑踏警備業務など、警備業が担う領域は拡大している。
 一方、保安分野の有効求人倍率は19年11月時点で8.1倍。「きつい仕事の割に低賃金」というイメージもあって敬遠され、極端な人手不足が続く状況にある。東京五輪・パラリンピックでは1万4千人の警備員が必要とされ、業界1位のセコムと2位の綜合警備保障(ALSOK)など14社が警備業務の共同企業体を設立。全国数百社に声をかけて人材を確保し、警備員向けの教育プログラムを行っている。

 

トピックス

★本・映画から大学選び 河合塾、HP公開

 予備校大手の河合塾が、小説やマンガ、映画などを題材に大学選びができるデータベース「みらいぶっく」をインターネットで公開している。約1800作品を紹介し、その作品に関連する分野を学べる大学や学科が検索でき、コロナ禍でオープンキャンパスに行けない中高生の進路選びをバックアップする。全国の大学など265の研究分野と約5千学科をカバーし、その研究室の卒業生の就職・進学先や、最先端の研究者へのインタビュー動画もある。

★ECC講師が企業に常駐、「社内留学」サービス

 英会話教室大手のECCは講師を企業などに常駐させ、従業員の希望に沿ったレッスンを自由に受けられるようにするサービスを2019年12月から始めた。受講生はレッスンの時間や形式、難易度を自分で選んで予約し、企業が認めれば就業時間内でも受講できる。利用料は1人週1回のレッスンで年間6万円ほどで、原則企業が全額を負担する。今後はグローバルな人材を育成したいと考える企業のほか、学校などにもサービスを売り込んでいく。

★SOMPOケア、新たな視点で介護現場に工夫

 SOMPOケアは、介護付き有料老人ホーム約1万8千室すべてに、医療・介護用ベッド国内トップのパラマウントベッド社製の「眠りSCAN」を導入する。マットレスの下に設置されたセンサーで寝ている人の体動を検出してデータを送り、「睡眠」「覚醒」「起き上がり」「離床」といった状況、心拍や呼吸の数を携帯端末やパソコンのモニターにリアルタイムで表示。介護職員の負担を軽減する狙いだ。
 また、同社が運営するサービス付き高齢者向け住宅では、東京芸大の履修証明プログラムを修了したアーティストが一緒に暮らす取り組みを展開している。1年間にわたって、コンサートやお話会などのイベントを企画し、介護の職員とは違った立場でかかわることで、新たな交流が生まれている。

★セコム、センサー感知で高齢者宅を見守り

 セコムはITベンチャーのチカクと共同で、高齢者見守りの新サービスを始めた。プライバシーに配慮してカメラは使わず、通信機能とセンサーがついた専用機器を高齢者宅のテレビに接続し、室内の温度や湿度、照度を把握。データに基づいて、人工知能が高齢者の起床や就寝を判断し、「実家が起きたようです」「寝たようです」といったメッセージが家族のスマートフォンに表示される。