食品
「巣ごもり需要」で増益の企業も
健康志向の高まり背景に好調維持
食品原料や加工食品、飲料などを製造・販売し、生活に欠かせない食品業界。国内メーカーは世界的にも高い技術力と開発力を持っており、また人口減少によって国内市場の縮小が見込まれる中、海外市場に販路を拡大する動きも目立つ。
注目データ
食品製造業の製造品出荷額等(2017年)
35兆2954億円
対前年比1.8%の増加。業種別では野菜・果実缶等製造業が同6.7%増加しており、原材料コストの上昇が影響しているようだ。(農林水産省まとめ)
企業動向
●カップ麺やパックご飯伸びる
原材料の高騰や消費増税で値上げが目立つ食品業界は、コロナ下での「巣ごもり需要」から業績を伸ばす企業もある。即席麺大手の日清食品ホールディングスの2020年3月期連結決算は、「カップヌードル」などの主力商品が過去最高売り上げを達成するなどし、純利益が対前期比51.5%増の293億円の最高益に。東洋水産も「赤いきつねうどん」などが好調で、純利益が26.8%伸びた。民間調査によると、コロナ下の休校に伴う給食代替で、パックご飯のサトウ食品、冷凍パスタの日本製粉、カレーのハウス食品グループなどが店頭売り上げを伸ばした。
●日本食ブームにのる海外事業
コロナ下で健康志向がさらに高まった。乳業最大手の明治ホールディングスは、ヨーグルトやプロバイオティクスの販売が伸び、2021年3月期の純利益は695億円の最高益になると予想する。健康志向チョコレートの市場拡大も図る。キッコーマンは日本食ブームにのる海外事業や国内での豆乳飲料の伸びなどから、20年3月期連結決算が純利益265億円の最高益になった。
●ビール大手、「副業」で稼ぐ
酒類市場が振るわない。ビール大手4社の2019年12月期決算は3社が減益となった。アサヒグループホールディングス(HD)の国内の酒類事業の売上高は前期比2.9%減の8868億円。一方、国際事業は高級ビールを欧州などで展開して増益に。キリンHDは豪州の子会社の損失が響き、純利益が同63.7%減となった一方、海外での医薬品販売が好調だ。サッポロHDは株売却による損失などで純利益が半減し、不動産事業がカバーする収益構造が続く。サントリーHDは北米を中心にバーボンウイスキーが好調で、4社で唯一の増収増益となった。コロナ下では、家庭向けの缶入り商品が「巣ごもり消費」で好調な一方、主力の飲食店向けビールが大きく落ち込む。
トピックス
★食品ロス、業界全体の課題
「食品ロス削減推進法」が2019年10月に施行された。農水省によると、17年度の食品ロスは612万㌧で、集計を始めた12年度以降最少。事業者からの発生量が前年度比7%減ったのが大きい。明治は家庭用商品100品目以上で賞味期限を年月日から年月表記にすることを発表。こうした動きはキユーピー、森永製菓など業界全体に広がっている。
★家庭向け大豆ミート商品続々
ヴィーガンやベジタリアンの多い訪日外国人に向けて、飲食店のメニューとして拡大してきた大豆ミート。2020年に入り、大塚食品や日本ハムなど、各メーカーから大豆ミートを使用したハンバーグやカレーなどが登場し、一般家庭にも定着しそうだ。
2024/12/12 更新
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