業界MAP

機械・プラントエンジニアリング

輸出が軸、世界貿易の荒波で奮闘
生産ラインのIoT化が加速


 建設機械や工作機械、造船、重機などを製造する機械業界と化学プラントなどの生産設備を設計・建築するプラントエンジニアリング業界。輸出比率が高いため、米中の貿易摩擦や為替変動といった世界情勢の影響を受けやすい。製造ラインではIoT化が加速。
 

注目データ


工作機械受注額(2019年)
1兆2299億円



 前年比32.3%減で3年ぶりの減少。自動車関連の低迷に加え、米中貿易摩擦で製造業全体の投資意欲が減退したことも要因だ。(日本工作機械工業会)

 

企業動向

●重工大手、航空関連事業からの転換も

 総合重機メーカー最大手の三菱重工業は、国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の開発の遅れにコロナ禍が追い打ちをかけ、2020年3月期決算で営業損益が20年ぶりに赤字に転落した。傘下の三菱航空機の開発拠点二つを閉鎖するなど、態勢を縮小する。航空エンジンの需要が減ったIHIは、「脱炭素」にかじを切った中期経営計画の目標達成をはかる。川崎重工業の同3月期連結決算は純利益が前期比32.0%減。コロナ禍で主力の二輪車販売の減少や円高が響いた。

●建機業界にコロナ禍直撃

 日本建設機械工業会によると、2020年5月の建設機械出荷金額は1324億円で前年同月比35.4%減少。コロナ禍もあり外需は10カ月連続の減少となった。建機国内1位のコマツは、アジアでの鉱山機械の需要減などが響き、20年3月期の純利益が前期比40.0%減に。建設現場向けのICT(情報通信技術)事業の海外展開を本格化させる。
 自動車や電子機器の金型や部品を製造する工作機械メーカー。スマートフォンの普及と中国市場の拡大に引っ張られ好況が続いていたが、米中貿易摩擦とコロナ禍が響く。オークマは20年4~9月期の業績について、前年同期比で9割を超える大幅な減益になると予想する一方、次世代通信技術「5G」や自動運転技術関連の設備投資が見込まれる。

●プラントエンジニアリングは「冬の時代」

 プラントエンジニアリング業界は日揮、千代田化工建設(千代化)、東洋エンジニアリングが3強。高い技術力を誇るが、近年、米国事業のつまずきなどから経営が悪化している。千代化は米国での液化天然ガスの工事の影響で債務超過に陥り、筆頭株主の三菱商事などから計1800億円の資金支援を受ける。
 

トピックス

★工場生産ラインにも5Gの波

 大手工作機械メーカーDMG森精機は、KDDIと協力して次世代通信技術「5G」を使ったデジタルファクトリーの実現に向け、実証実験を2020年から始めた。機械の稼働停止の大きな原因となる切りくずの堆積場所と量をAIが推論し、洗浄経路を計算して除去するという。稼働状況を精細に監視できるほか、夜間のうちにソフトウェアをいっせいに更新するといった利用方法も期待できる。

★造船1・2位が新会社

 国内造船首位の今治造船と2位のジャパンマリンユナイテッドが商船事業の設計・営業部門を統合した新会社「日本シップヤード」を設立。日本製は韓国や中国に規模で引き離されているが、設計の提案数や速さを高めて対抗し、国内業界再編を加速させる呼び水になる可能性もある。