業界MAP

運輸・倉庫

鉄道大手は多角化を加速
増える宅配、ITで効率化


 旅客(ヒト)や貨物(モノ)の移動に携わり、生活や経済活動を支える業界。鉄道、空運、海運、陸運、倉庫といった業態があり、国内外の景気変動に大きく左右される。災害時にすみやかに復旧し、輸送を維持するライフラインとしての役割も重要だ。
 

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オフピーク

電車内の混雑を避けるため、鉄道各社はピーク時以外での通勤・通学を推奨するキャンペーンなどを実施。感染症予防の意味でも注目を集めている。

 

企業動向

●鉄道大手は沿線外にも事業進出

 JR東日本、JR東海、JR西日本などのJR各社や、東急、東武鉄道、名古屋鉄道、近鉄グループホールディングス(HD)、阪急阪神HD、西日本鉄道などの私鉄は、事業の多角化を進める。駅ナカや駅周辺の商業施設に加え、沿線以外でもレジャーや不動産などに進出。本業でも通勤客向けの座席指定列車、豪華観光列車などの新サービスを打ち出している。

●コロナの影響、航空業界でひときわ

 国内航空会社はANAホールディングス(HD)と日本航空が双璧だが、コロナ禍で人の移動が抑制され、需要が激減した。減便で飛ばなくても人件費や機体費など固定費が大きい。ANAHDは2020年4~6月期決算で純損益が1088億円の赤字に。日航ともども21年度入社の新卒採用を、一部を除き中止した。影響は大手だけでない。15年の破綻後に再建されたスカイマークは再上場の申請を取り下げ。ピーチ・アビエーションは20年3月期決算で営業損益が73億円の赤字に。スターフライヤーも20年4~6月期決算で純損益が37億円の赤字だった。

●輸出入なら海運、陸運業界もITで効率化

 日本の輸出入で海運の割合は99%以上を占める(トン数ベース)。海運会社は日本郵船、商船三井、川崎汽船が大手だ。海外大手に対抗し、3社は定期コンテナ船事業の統合会社を設立し、2018年4月に事業を開始した。
 トラック輸送が主力の陸運は日本通運、ヤマトホールディングス(HD)、SGHD(佐川急便)などが大手。日本郵便も宅配便を手がける。近年はネット通販が増え、一方で人手は不足。各社は近年、運賃値上げに踏み切り、ITの活用などで効率化を図る。
 倉庫の大手は三井倉庫HD、住友倉庫、三菱倉庫、冷蔵倉庫のニチレイなど。物流全体を一括受託するサードパーティー・ロジスティクスの取り組みも進む。

 

トピックス

★リニア新幹線、2027年開業に黄信号

 JR東海が、まず品川~名古屋間で開業予定のリニア中央新幹線。目標の2027年開業に疑問符がともっている。静岡県のトンネル工区が大井川の水源域で、工事で流量が減る懸念が地元にあり、協議が難航。JR側は27年開業には20年6月中の了解が必要としたが、同月の川勝平太知事とJR東海社長の会談は不調。7月の国交省の仲介案も実らなかった。

★再配達削減へ「置き配」、コロナで注目

 宅配便の荷物を玄関前などに置いて帰る「置き配」。不在がち、あるいは配達員との対面を避けたい人も増え、近年、日本郵便やヤマトホールディングスが導入。コロナ禍を機に広がりそうだ。業界には再配達削減のメリットがあるが、盗難防止などの課題も。