商社(総合・専門)
資源に頼らない事業戦略を推進
海外進出や業務提携も盛ん
総合商社は、豊富な資金力と情報を活用し、海外の大規模プロジェクトに関わったり、他業種と連携したりする日本ならではの業態だ。貿易を中心に商品やサービスを幅広く扱い、取引の手数料を得るトレーディングと、事業投資の二つを収益の柱としている。
注目データ
5大商社の収益(2020年3月期決算)
44兆7752億円
三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、住友商事、丸紅の連結の収益を合算するとこの規模になる。前期は47兆4023億円だった。
企業動向
●総合商社、非資源分野へ投資強化
コロナ禍によって、原油価格が急落するなど資源分野の事業がさらに悪化した。大手7社の2020年3月期決算はいずれも減収となり、丸紅は過去最大の1975億円の赤字を計上した。三菱商事、三井物産、住友商事、双日は減益。伊藤忠商事、豊田通商は増益を果たした。
大手商社は2000年代以降、鉄鉱石、原油、天然ガスや太陽光発電などの世界的な需要増を受け、利益を生み出してきた。しかし資源価格が下落すると打撃が大きいため、近年、非資源分野への投資を強化し、資源に頼らない事業戦略を採りはじめた。食料分野に強い伊藤忠商事は、子会社のファミリーマートへの出資比率の引き上げを表明。インフラを生かし、物流コストの削減やデジタル戦略の強化を図る。三菱商事も17年にローソンを子会社化し、小売り事業を強化している。「資源商社」とも呼ばれる三井物産はヘルスケアなど医療関連分野に注力。住友商事はケーブルテレビのジュピターテレコム(J:COM)などメディア事業に強みをもつ。
●専門商社の再編続く
「専門商社」は鉄鋼、機械、繊維、化学、食品、医薬品などのジャンルに特化した卸売りが事業の柱。メーカーから独立した企業や、総合商社と関係の深い企業も多い。内需依存が強かったが、近年は海外進出する会社が増え、化学系商社の長瀬産業や稲畑産業はグローバル化に積極的に取り組んで業績を伸ばした。
事業領域の見直しから再編が続く。食品系では2011年に三菱食品、電子・半導体系では15年にマクニカ・富士エレホールディングス(HD)が企業統合でそれぞれ発足し、各分野をリードする。
医薬品系では、物流面の強化をめざして他社との協業が目立つ。メディパルHDは、医薬品専門の運送会社への出資で三菱倉庫と19年に業務提携し、20年6月には医薬品や検査用資材の搬送などで、臨床検査大手のみらかHD(現H.U.グループHD)と業務提携すると発表した。アルフレッサHDも、調剤薬局などから患者宅に薬を直接配送する仕組みをヤマトHDと共同開発している。
トピックス
★企業向け電子商取引が拡大
企業が企業向けに行う電子商取引(BtoB-EC)の拡大がめざましい。経済産業省の国内電子商取引に関する市場調査によると、2019年の市場規模は前年比2.5%増の353.0兆円。個人消費者向けのBtoC-ECの市場規模約19.4兆円と比べて圧倒的な差だ。全ての商取引市場規模に対するEC化率は、BtoB-ECで31.7%と増加傾向にある。業種では建設・不動産業、食品、産業関連機器・精密機器などで、拡大している。
2024/12/12 更新
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