業界MAP

証券

株式上場支援やコンサルタントも担う
スマホで株取引、提携が相次ぐ


 証券会社は、株式売買の仲介手数料や自らの運用売買で収益を上げている。総合証券会社は、株取引だけでなく、株式上場に向けた支援やコンサルタントなど幅広い業務を担う。ネット証券会社も割安な手数料で存在感を増す。
 

注目データ


証券会社258社の営業収益(2019年度)
3兆8324億円


速報値で前期比3%増。純利益は2875億円でほぼ前期並み。黒字会社は148社で、全体の57%を占めた。(日本証券業協会)

 

企業動向

コロナ禍で1~3月苦戦

 総合証券大手3社の2020年3月期決算は、野村ホールディングス(HD)が2169億円の黒字(前期は1千億円の赤字)、SMBC日興証券は前期比18%増の392億円の黒字、大和証券グループ本社は同5%減の603億円の黒字だった。ただ、コロナ禍で世界的な株安になった20年1~3月期は、野村HDが345億円の純損失に転落。大和証券も前年同期比16%減の112億円の黒字にとどまるなど苦戦した。

個人の金融資産に期待 

 個人投資家のすそ野がコロナ下でさらに広がりを見せ、証券各社はスマートフォンによる取引を本格的に始動させている。
 無料通信アプリのLINEと野村HDが共同で設立したLINE証券が2019年8月、アプリ内で株式売買ができるサービスを始めた。LINE証券は1株単位数百円から購入でき、LINEアプリの中で操作し、取引完了までは数回タップするのみで平日午後9時まで即時注文できる手軽さで、LINEのメインユーザーである20~40代の資産形成層への浸透を狙う。「(日本の個人金融資産)1800兆円が貯蓄から資産形成に流れるムーブメントを起こせる」(野村HD幹部)と期待する。
 SBIホールディングス傘下でスマホ専業のSBIネオモバイル証券は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のTポイントと提携した。スマホ操作でできる取引に応じてポイントがたまるほか、国内株式購入にもポイントが使えるサービスを19年4月に始め、11カ月余りで30万口座を突破した。
 大和証券グループも、スマホ取引を中心とする新会社CONNECT(コネクト)を本社100%出資で設立し、20年7月にサービスを開始した。

 

トピックス

百貨店や喫茶店で金融情報に触れる

 大手百貨店の高島屋は2020年6月、投資信託など金融商品の販売取り次ぎを日本橋高島屋S.C.本館で始めた。SBI証券やほがらか信託と提携し、投資信託や信託サービスを扱う。7月には大和証券が、東京・吉祥寺にコメダ珈琲店とのコラボ店舗をオープンした。店内でくつろぎながら金融情報に触れてもらう狙いだ。

上級資格「CFP」の取得を奨励 

 ファイナンシャルプランナー(FP)の上級資格「CFP」が業界全体で評価されている。金融や不動産の運用をはじめ、保険や税金、相続・事業継承などに精通しないと取得できず、合格率は7%ほどだ。欧米やアジア、オセアニアなど国際的にも通用し、日本FP協会によると、証券会社の約6割がこの資格の取得を奨励している。