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エネルギー

新規参入で電力市場は戦国時代
再生可能エネルギーの拡大にらむ


 電力、ガス、石油に大きく分かれる。2011年の東日本大震災・東京電力福島第一原発事故をきっかけに始まった「電力システム改革」や、地球温暖化防止に向けた「脱炭素化」の世界的な潮流が、エネルギー業界の構造に変革をもたらしている。
 

注目データ


再生可能エネルギーの電源構成目標(2030年度)
22~24%


国のエネルギー基本計画が掲げる。策定の17年度当時(16%)より比率は上がったものの、国際的には見劣りする水準だ。同計画は21年に見直し予定。

 

企業動向

●発送電分離で改革総仕上げ

 電力業界では発電、送配電、小売りの主要3部門を大手が一貫して担ってきたところ、2020年4月、送配電事業を別会社にする「発送電分離」が実施された。先行実施の東京電力ホールディングスに加え、新たに中部電力、関西電力などの大手電力と電源開発の計9社が分社化。原発事故をきっかけとした電力システム改革は、「電力広域的運営推進機関」の設立、電力小売りの全面自由化と段階的に進められ、発送電分離で総仕上げとなった形だ。
 一連の改革によって、電力市場への新規参入が活発化。ガスや石油元売りなど「新電力」は現在約650社に上り、シェアは20年1月時点で約16%(販売電力量ベース)になった。東京ガスはガスとのセット契約で値引きするプランで新電力トップに。電力契約は200万件を突破し、東京電と激しい顧客争奪戦を繰り広げている。首都圏には石油元売り大手ENEOS、通信大手KDDIなども参入し、エネルギー業界全体の再編につながるという見方もある。

●洋上風力が本格始動

 地球温暖化の原因となる二酸化炭素を多く出す旧式の石炭火力発電所について、国は2030年度までに発電量を9割減らす方針を発表した。原発の多くが動いていない日本では、石炭火力の発電量が全体の32%を占め、液化天然ガス(LNG)に次いで多い。JERAや関西電はLNGが火力の主力だが、石炭依存度が高い北海道電力、中国電力などでは今後の供給力が課題となりそうだ。
 化石燃料に依存しない脱炭素化の流れから、日本でも太陽光や風力など再生可能エネルギーへの機運がますます高まっている。政府は洋上風力発電事業を拡大化させる方針だ。適地の一つの秋田県沖では、大手電力、商社、地元建設会社が企業連合を組んで事業者の座をめぐる争奪戦が始まっている。

 

トピックス

★ガス業界に新規参入の波

 ガス業界は東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手3社が全国販売量の約7割を占める。2017年4月に都市ガスの小売りが自由化され、東京電力などの電力系や日本瓦斯などのLPガス系企業が都市ガスの家庭向け販売に参入。22年には製造・小売りと導管事業が分離される予定で、ますます新規参入が進みそうだ。

★石油元売りは総合エネルギー企業へ

 中東などから原油を調達し、精製、販売する石油元売り会社。出光興産と昭和シェル石油が経営統合し、出光興産(出光昭和シェル)が2019年に誕生。業界はENEOSホールディングスとの2強体制に再編された。国内需要が減り、再生可能エネルギーや電力小売りなどの総合エネルギー企業へ転換を図る。