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輸送用機器

自動車業界、100年に1度の大変革
日本勢もEV革命見据えた戦略


 人や物を運ぶための乗り物を製造する輸送用機器業界。中でも、国際的な競争力を持つ自動車メーカーは多数の関連会社を抱え、大きな雇用を生み出してきた。電気自動車(EV)や自動運転へのシフトが進み、「100年に1度の大変革」時代ともいわれる。

注目データ


国内新車販売台数(2019年)
519万5134台



 前年比1.5%減で、3年ぶりのマイナス。台風など自然災害で客足が鈍ったほか、消費増税の影響もブレーキになった。(日本自動車販売協会連合会など)


 

企業動向

●新車販売、コロナ禍から回復基調も
 2019年の世界販売台数は、独フォルクスワーゲンが前年比1.3%増の1097万4千台で4年連続の首位。2位のトヨタ自動車(ダイハツ工業と日野自動車を含む)は同1.4%増の1074万2千台で3年続けて過去最高を更新した。トヨタの中国の販売台数は162万台で、日本国内の販売台数(161万台)を初めて上回った。日産自動車・仏ルノー・三菱自動車の3社連合は合計で同5.6%減の1015万5千台で、3位に後退した。
 コロナが業界を直撃。トヨタは20年3月期に約2.4兆円の営業利益を確保したが、21年3月期は約8割減の5千億円になりそうだと公表している。日産は、カルロス・ゴーン前会長の拡大路線を整理し切れないままコロナ禍が追い打ちをかけ、20年3月期は6712億円の巨額赤字を計上。21年3月期も6700億円の赤字になりそうだという。日米の自動車大手8社の米国の4~6月の新車販売台数は計193万台で、前年同期比35%減と大幅に市場が縮んだ。トヨタ、ホンダ、スバル、マツダの4社でみると、4月に前年同月比52%減と比較できる数十年間で最大の落ち込みを記録。ただ、従来の想定よりは悪化幅は緩やかで、足元では回復傾向が強まっているようだ。
●EV革命 テスラの時価総額がトヨタ抜く
 米電気自動車(EV)最大手のテスラの時価総額が2020年7月1日に約2070億ドル(約22兆2400億円)に上り、トヨタを超えて自動車業界で世界一になった。19年の年間販売台数はトヨタの約30分の1だが、EVで先行していることが株価を急上昇させた。
 日系メーカーは電動車の販売を続々と予定。トヨタはスポーツ用多目的車「RAV4」でプラグインハイブリッド車(PHV)を発売。世界戦略車のPHVとしては、プリウス以来2車種目となる。日産は国内で2車種目の乗用EV「アリア」を、ホンダやマツダは初の量産EVを発売する。

 

トピックス

★CASEにIT企業参入
 ネットでつながる車や自動運転など「CASE(ケース)」と呼ばれる先端技術の開発が進む。米グーグルなどの巨大IT企業も巨額の開発費をつぎ込む。中国IT大手の百度が主導する自動運転開発連合「アポロ計画」にも世界100社以上が名を連ねる。トヨタは、自動運転や人工知能などの先端技術とサービスの開発を目的にした実証都市「ウーブン・シティ」を、静岡県裾野市の完成車工場跡地につくる計画がある。
 ホンダは、一定の条件下ならハンドルを握らず、目を前方からそらしてもシステムに運転を任せられる技術を搭載した車を発売する。自動運転「レベル3」の技術にあたり、市販されるのは国内メーカーで初めてとなる。