不動産
コロナ禍で一転苦境に
大型物流施設や海外展開に活路
土地を仕入れてビル、マンション、商業施設などを建設し、それを販売、賃貸する不動産業界。主にオフィスビル賃貸やマンション分譲などを収益源としており、近年は東京五輪をにらんだ都心の再開発プロジェクトが業界全体を活気づかせた。
注目データ
マンション発売戸数(2019年)
7万660戸
前期比12%減で1976年以来の低水準に。一方で平均価格は4787万円と過去最高に。高止まりで買い手の動きが鈍くなった。(不動産経済研究所)
企業動向
●不動産大手は収益源の多様化
不動産大手はこのところ、東京五輪がらみの都心の再開発やオフィス需要の高まりなどから活況を見せていた。三井不動産、三菱地所、住友不動産の大手3社は2020年3月期連結決算の純利益がいずれも過去最高を更新した。
状況はコロナ禍で一転した。商業施設やホテルの収入やマンション販売への影響は大きく、21年3月期は、三井不動産が前期比34.8%減の1200億円、三菱地所が同25.9%減の1100億円、住友不動産が同7.8%減の1300億円と、そろって減益予想となった。不動産仲介大手の三鬼商事によると、都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスビルの平均空室率は20年6月時点で1.97%で、賃料上昇の目安となる5%を割り込む水準が続いているものの、コロナの影響で空室面積は前月より2万6千坪増えた。
不動産大手は収益源を多様化している。三井不動産は物流事業を急拡大し、「ロジスティクスパーク」と呼ばれる大型物流施設を国内外に次々と建設している。三菱地所は海外事業を広げ、フィリピンで地元ディベロッパーと手を組み、マンションやオフィスの開発計画を進めている。
●首都圏マンション発売、過去最少に
マンション販売は住友不動産、プレサンスコーポレーション、野村不動産、三菱地所レジデンス、三井不動産レジデンシャルが上位5位。
首都圏マンションの市場動向を調べている不動産経済研究所のまとめでは、2020年上半期(1~6月)の新規供給戸数は7497戸にとどまり、前期比44.2%減。上半期としては初めて1万戸を下回って過去最少となった。コロナ禍により、モデルルームの来場制限や営業自粛が響き、物件が絞り込まれた。年間を通しても2万戸ほどと見込まれる。一方、1戸あたりの平均価格は6668万円で上半期の過去最高を更新した。
トピックス
★晴海マンション、入居を1年延期
東京五輪・パラリンピックの1年延期を受けて、選手村を改修して分譲される東京・晴海のマンションの入居時期が、当初予定の2023年3月から1年程度遅れる見通しとなった。「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」の名称で開発され、4145戸のうち1千戸弱が既に販売されている。
★サブリースに法規制
賃貸物件を業者がオーナーから借り上げ、入居者にまた貸しする「サブリース契約」を規制する法律が2020年6月に成立した。約束された賃料が支払われないなどのトラブルが多発していた。
2024/11/21 更新
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