化学・素材・繊維
日本の基幹産業を支える
環境問題や循環型経済に対応急ぐ
化学製品とは樹脂やゴム、合成繊維など。石油や天然ガスから合成や重合を繰り返して製品にする過程で、メーカー群は川上から川下まで分業体制を取り、日本の基幹産業を支えている。繊維産業は衣料用から産業用に軸足を移す。
注目データ
化学繊維の国内生産量(2019年)
81万7884トン
前年比7.0%減で続落した。うちセルロース繊維は10.3%減の16.5万㌧、合成繊維は6.2%減の65.3万㌧。(経済産業省・財務省)
企業動向
●苦戦続く化学メーカー
石油化学業界の指標となる基礎化学品エチレンのプラント稼働率が、2020年3月に88.7%となり、好不況の目安となる90%をおよそ6年ぶりに割り込んだ。コロナ禍によって自動車部品や電子機器などが減産され、原料となる誘導品のポリプロピレンや樹脂の販売が落ち込んだ。化学大手は苦戦している。景気悪化で中国向けなどの需要が減り、石化製品の価格が下落したところへコロナが追い打ちをかけた。
業界首位の三菱ケミカルホールディングスは20年4~9月期の連結純利益ゼロの予想を立てた。住友化学の20年3月期の連結決算は純利益が前期比74%減、旭化成は同30%減。業界は10月以降の需要回復に期待をかけている。
●炭素繊維、需要回復なるか
日本化学繊維協会によると、世界の化学繊維生産は中国が8割以上の圧倒的シェア。日本勢は1%にとどまるが、航空機や自動車向けの炭素繊維複合材の分野で優位に立ってきた。2019年の国内需要は消費増税後の内需の落ち込みや住宅着工や自動車生産が前年割れとなり、衣料用、家庭・インテリア用、産業資材用などが総じて落ち込んでいる。コロナが直撃し、東レは長期供給契約を結ぶ米ボーイングの減産の影響が避けられず、21年3月期の連結業績で純利益が5割以上減る見通しを立てた。帝人も自動車や航空機分野での炭素繊維需要が落ち込む。年内中に国内外の経済は回復基調になると見込むが、コロナの収束時期によって不透明感が残る。
近年、環境問題や循環型経済への関心が世界的に高まる。欧州では2010年代からプラスチック対策を強化しており、今後数年以内に繊維産業への規制も強まると予想され、業界では注目している。
トピックス
★エフピコが最高益更新
食品トレー最大手のエフピコは、2020年3月期連結決算で営業利益が過去最高の155億円(前期比11%増)になった。売上高も過去最高の1863億円だった。コロナ下で巣ごもり消費が活発化し、内食・中食への移行が見られ、飲食店のテイクアウトやデリバリーの需要が一層拡大した。一方でイベント用の需要は減り、新しいマーケットとして宅配ポータルサイト大手や給食大手との協業を図る。
★昭和電工が日立化成を子会社化
化学大手の昭和電工は、日立製作所の主要子会社の日立化成を買収し、子会社化した。日立化成は2020年10月に「昭和電工マテリアルズ」に社名変更し、将来的に2社は合併する方向だ。両社の年間売上高は単純合算で約1兆4500億円となり、化学メーカー では住友化学や旭化成に次ぐ規模になる。
2024/11/23 更新
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