一色清の世の中ウオッチ 略歴

2013年12月19日

トンデモ情報を見分ける力 (第27回)

「スフィンクスに雪」の写真は笑い話か

 先日の「エジプトで100年ぶりの雪」というニュースには、地球の気象異変はここまできたかと驚きましたが、テレビの朝のワイドショーを見ていて、「スフィンクスにも雪が積もっている写真がネットに出回っていましたが、その写真は栃木県日光にある東武ワールドスクウェアのミニチュア・スフィンクスに雪が積もっている過去の写真でした」というニュースにも驚きました。

 ネットに出回った写真は、エジプト発としていたため信じられたようで、ユーチューブにアップされたり、日本でもエジプト人のタレントさんがその写真をツイートして広がったり、一部のニュースサイトがエジプトの雪の写真として一時アップしたりする騒動になったようです。ただ、今のスフィンクスにはない修復工事用の足場があったことなどから「ニセ写真」と分かったという顚末(てんまつ)でした。
 最初に誰がネットにアップしたのかは分かりませんが、かつて栃木県に雪が積もった際に面白写真としてアップされたものを見つけ、いたずら心で流したのだろうと推測できます。信じて使ったメディアやリツイートした人は、あとでちょっと恥ずかしい思いをしたでしょうが、まあ笑い話ですむ話でした。

 ただ、ネットではこうした「ニセ写真」や「加工写真」がまじっていることがあります。先日、有料言論サイトのウエブロンザに、情報ネットワーク法学会の連続討議「ソーシャルメディア社会における情報流通と制度設計から」という記事がアップされていました。その中で「渋谷駅でのボヤ騒ぎ」というネット上でのちょっとした騒動が報告されていました。私は知らなかった騒動ですが、その記事によりますと、今年2月に渋谷駅でボヤ騒ぎがあったそうです。高架下でホームレスの段ボールハウスが燃えて、一時は大きく燃え上がりました。ガスコンロも置いていたため、爆発音もしました。たくさんの人がスマートフォンで撮ってツイッターに載せたわけですが、その過程で大規模な火事のように見える(加工された)写真が「渋谷駅大爆発」などといったタイトルをつけてネット上を幅広く流通してしまったのだそうです。

 でも実態は、段ボールハウスが燃えて、すぐに鎮火したというだけの騒ぎでした。ふつう、マスコミが取材するような事件事故ではありません。でも確定情報がマスメディアに出ないことでネットは「事故かテロか」と大混乱になったそうです。また、報道規制があるのではないかという臆測も流れました。このままなら、ネット情報を信じきる人の間でマスコミ不信や陰謀論が強まるところでしたが、結局、数時間たってテレビが小さなボヤとして報道して騒ぎは収まったそうです。

 写真を加工したり大げさなタイトルをつけたりして流すほうも流すほうですが、それを受けとるほうも、マスメディアが伝えていなかったり、電車が通常通り運行していたりすると、「この写真本当かな」とか「大爆発ってタイトルは大げさじゃないかな」と思って冷静になるようにしないといけません。
 ネットの情報は玉石混淆(ぎょくせきこんこう)です。間違った情報や偏りのある情報がたくさんあります。間違った情報を鵜呑みにして行動したり人に話したりするのは、失敗のもとです。大事な就活の面接で、ネット上の「トンデモ情報」を話してしまったなんてことがあると、悔やみきれません。

 ネットリテラシーという言葉があります。ネットに流れる情報を読み解く力のことです。最低限身につけておいた方がいいのは、情報の出どころを確認することです。信用できるメディアや信用できる人が発信元ならひとまず信じていいでしょうが、匿名だったり発信元がなかったりする情報は、すぐには信じないことです。別の媒体にあたって確認することをクロスチェックといいますが、クロスチェックをしてから信じる習慣をつけましょう。