2025年07月24日

参院選で自公敗れる、今後の展開は? ポイントをまとめます【イチ押しニュース】

テーマ:政治

 参議院選挙が7月20日に投開票され、与党の自民党公明党はあわせて47議席にとどまり、今回改選されなかった75議席をあわせても参議院全体での過半数(125議席)に届かないという「敗北」を喫しました。一方で、国民民主党参政党といった新しい政党が勢力を大きく伸ばし、チームみらい、日本保守党がはじめて参議院で議席を獲得しています。衆院、参院とも過半数を失った石破政権は今後どうなるのか。情勢は流動的ですが、これからの展開を考えるポイントをまとめます。(編集部・福井洋平)
(写真・自民党開票センターで取材に応じる石破茂首相=2025年7月20日/写真・図版はすべて朝日新聞社)

参院過半数割れで野党との協力が不可欠に

 まず、参議院選挙とはそもそも何なのか、基本的なことを確認しておきましょう。

 国の予算や法律を決める「国会」には、「参議院」と「衆議院」の2つの院があります。参議院の議員定数は248人で、任期は6年あり、3年ごとに半分が改選されます。都道府県ごとにわかれた「選挙区」(鳥取・島根、徳島・高知はそれぞれ2県合わせて一つの選挙区)と、全国単位でたたかう「比例区」があり、投票する際は1人がそれぞれ1票ずつ、計2票投じることになります。選挙区は候補者名で、比例区は政党の名前、もしくは候補者名で投票します。

 衆議院と参議院のうち、重視されているのは衆議院です。首相を最終的に決めるのは衆議院で、予算決めについても衆院の意見が優先されます。参議院は衆議院(4年)よりも任期が長く、衆議院にはある解散、つまり任期途中で全員が失職し選挙をするという仕組みもないため、腰をすえてじっくり政策を勉強し判断を下すという役割が期待されています。

 衆議院は与党が過半数を占め、参議院は野党が過半数を占める状態を「ねじれ国会」といいます。ねじれ国会の状態でも、法律を通したりする際に野党の協力が必要になり、政権運営は簡単ではなくなります。まして与党(自民党、公明党)は昨年の衆院選で過半数割れし、当初予算も野党である日本維新の会の協力をとりつけてなんとか成立にこぎつけた状態です。今回、参院でも過半数割れしたことで、政策をすすめるためにはさらに野党に協力を仰ぐことが不可欠になりました。石破首相は20日の段階で続投意向を表明していますが、自民党内からは反発もあり、今後どうなるかは未知数です。

野党連合は立憲民主党の求心力不足で不可能か

 今回の参院選では、国民民主党、参政党が大きく議席数を伸ばしました。また日本保守党、チームみらいといった新しい政党も議席を確保。いずれも「政党要件」を満たしており、日本はたくさんの党が競い合う多党時代に突入した感があります。野党は衆議院と参議院の両方で過半数をもっているので結集すれば首相を誕生させ与党になることもできますが、現状その見込みはたっていません。

 その大きな理由は、野党第一党である立憲民主党の求心力不足です。今回、立憲民主党の当選者は22人で改選数と変わりませんでした。比例区の得票は約740万票で前回(2022年)の約677万票から伸びてはいますが、投票率も伸びており、全体の票に対する得票率はほとんど変わりません。立憲民主党は、与党に対する逆風の受け皿にならなかったということです。

 一方、国民民主党は昨年の衆院選に続いて今回も支持を伸ばし、比例区の得票は約762万票で野党ではトップとなりました。そして特筆すべきが、参政党の伸びです。比例区得票は約743万票で、立憲民主党を上回って野党2位に浮上。今回は比例区に加え、東京、埼玉、神奈川、茨城、大阪、愛知、福岡の複数人が当選する選挙区でも当選し、合計14人が議員となりました。この結果、参政党は単独で、予算を伴わない法律案を提出することができるようになりました。今後の日本政治は、参政党の動きを無視して考えることはできなくなったわけです。
(写真・会見を終え席を立つ立憲民主党の野田佳彦代表=2025年7月21日)

「日本人ファースト」で勢力のばす

 参政党は2020年に結党されました。代表の神谷宗幣氏は大阪府吹田市議を経て、2012年の衆院選で自民党の公認を受け大阪13区から立候補したものの落選。その後はインターネット上で「学校やマスメディアでは聞けない情報」(神谷氏)を発信する場を次々立ち上げました。2022年の参院選で国政進出を果たしましたが、このときはコロナ禍への対応策として「マスク着用の自由化」「ワクチンを打たない自由」を訴えたりしています。6月の東京都議選で3議席を獲得し、参院選前には5人の国会議員と151人の地方議員が所属する大組織となっていました。

 今回の参院選では都議選に続いて「日本人ファースト」を掲げ、「日本人を豊かにする」「日本人を守り抜く」「日本人を育む」の三つの柱を打ち出しました。参院選の公約ページでは「これ以上、日本を壊すな!」「襲いかかるグローバリズムという波に立ち向かう」と記し、「行きすぎた外国人受け入れに反対」とも主張しています。外国人問題は選挙戦の中盤以降急激に焦点化し、参政党の支持率も上昇。他党も外国人政策に言及するようになりました。外国人政策については、今週の「時事まとめ」でも改めてとりあげます。
(写真・記者会見で質問に答える参政党の神谷宗幣代表(左)=2025年7月22日)

神谷代表の少子化対策発言に抗議活動も

 今回の選挙では、女性候補者が全候補者の522人中152人と、人数、割合とも2022年に次いで2番目に多くなりました。そして当選者は42人と過去最多となり、当選者に占める女性の割合も33.6%とはじめて3割を超えています。参政党も、当選者14人中7人とその半分が女性でした。

 一方、神谷代表は公示後の第一声で、「今まで間違えたんですよ。男女共同参画とか。もちろん女性の社会進出はいいことだ」とした上で、「高齢の女性は子どもは産めない」「子どもを産んだほうが安心して暮らせる社会状況を作らないといけないのに、働け働けとやりすぎちゃった」と発言しています。女性の社会進出が少子化につながっている、とも受け取れる発言です。参政党は自党のウェブサイトでも少子化対策に対する政策のひとつとして、「社会進出一辺倒ではなく、お母さんや専業主婦は女性に与えられた大切な選択肢であることの理解を推進する」と明記しています。子育ては男女両方がやるもので、女性にだけ「専業主婦は大切な選択肢」と理解してもらおうという姿勢は、果たしてどの程度女性に受け入れられる主張なのでしょうか。この発言に対しては、全国で多くの抗議活動が行われています。

どの野党と組むかで政策の方向は大きく変わる

 都議選直後の「就活ニュースペーパー」でも触れましたが、参政党が公表している「憲法草案」には第一条に「日本は、天皇のしらす(原文注:国民の実情を広く知って日本を治める意味の古語)君民一体の国家である」、第四条には「国は、主権を有し、独立して自ら決定する権限を有する」と記されており、「国民主権の否定では」などと批判を呼びました。女性に対する姿勢のみならず、参政党の主張の根底には個人の自由な活動をおさえようという発想があるようにも感じられます。国政でも大きな影響力を持つようになった参政党の今後の活動に注目が必要です。

 石破氏が続投する場合でも、新たな自民党総裁が誕生する場合でも、いまの国会の情勢では与党側が野党とより深い協力関係を模索する、場合によっては連立政権の枠組みも変えることが安定した政権運営には欠かせなくなります。その際、立憲民主党と組むのか、国民民主党と組むのか、日本維新の会、はたまた参政党と組むのかによって、日本の政策の方向性は大きく変わります。選択肢が増え様々な可能性が考えられるだけに、今後の自民党の動きからも目が離せません。
(写真・比例区の候補者が当選確実となり、花付けをする参政党の神谷宗幣代表=2025年7月21日)

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