自民党総裁選は実質的に総理大臣を選ぶ選挙です。有力候補と目されている小泉氏の発言は今後の日本を考えるうえでも無視できません。果たして解雇規制の緩和は実現されるのでしょうか。現状の議論を確認し、自分たちの将来を考える材料にしてみてください。(編集部・福井洋平)
(写真・総裁選をPRする大きな垂れ幕が掲げられた自民党本部=2024年9月2日/朝日新聞社)
解雇が特に問題になるのは、労働者側に落ち度がないケースでしょう。使用者側が不況や、経営状態が悪くなったことを理由に行う解雇のことを「整理解雇」といいます。労働者側に落ち度がないわけですから、次の4つの要件に照らし合わせて本当に整理解雇をしていいのかどうか、厳しく判定されることになっています。
・人員削減の必要性
人員削減が、不況や経営不振といった企業経営のうえでの必要から実施されるものであること
・解雇回避の努力
配置を転換したり、希望退職者をつのったりするなど、他の方法で解雇を回避するように努力したこと
・人選の合理性
整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、運用も公正であること
・解雇手続きの妥当性
労働組合または労働者に、解雇の必要性などについて納得を得るために説明を行うこと
「希望退職」とは、企業が期間をかぎって労働者の自主的な退職を募集することで、多くの場合は退職を促進するために退職金を割り増しするなど、企業が負担を背負って行います。上記の四つの要件をみたさなければ、整理解雇は認められません。
4つの要件があるとはいえ、整理解雇は禁止されているわけではありません。リスキリングや再就職支援の義務づけが大企業にとって厳しい要件とは現段階では言えず、労働組合などが懸念するように、企業が気に入らない従業員を自由にクビ切りすることができるようになる可能性は否定できません。
解雇規制緩和は、みなさんや私たちの働き方を大きく変える可能性のある政策です。明日の首相になるかもしれない小泉氏や河野氏は、私たちが納得できるような言葉をこれから発信していけるでしょうか。大きな反発が予想される政策だけに、決まった原稿を読んだり反論をブロックしたりせず、反対する人たちと真っ正面から向き合って説得する姿勢を候補者のみなさんに望みたいと思います。
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2025/02/07 更新
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