
2011年、東日本大震災の津波で重大な事故を起こした
東京電力福島第一原子力発電所。その
廃炉の時期が、どんどん遠のいています。廃炉までの最大の難関とされる、
原子炉から溶け落ちた
核燃料(燃料デブリ)を取り出し始める時期が後ろにずれているためです。取り出し準備に想定より長い12~15年かかる見通しになり、国や東電が目指す2051年までの廃炉完了は極めて難しくなってきました。
これまでに試験的に取り出したデブリは0.9グラムですが、デブリの総量は推計880トンあります。高い放射線量のデブリを安全に効率よく取り出す技術はまだ確立されておらず、取り出したデブリを処分する方法も決まっていません。廃炉完了までの道のりは途方もなく遠いように感じます。国や東電はこうした後ろ向きのやっかいきわまりない仕事に、人や資金を投入し続けなければなりません。一方で、地球温暖化対策や増加が予測される電力需要に対応するため、政府は原発の新増設にかじをきっています。原発の必要性とリスクとの関係をどう考えるかについては、人によって意見が分かれるところです。みなさんも考えてみてください。(ジャーナリスト・一色清)
(写真・廃炉作業が進む福島第一原発の3号機=2025年1月24日、福島県大熊町/朝日新聞社)
★【経済】燃料デブリ本格取り出し、2037年度以降にずれ込み 福島第一原発(7/29.Tue)
東京電力福島第一原発3号機の溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の本格的な取り出しについて、東電は7月29日、2030年代の初めとしていた開始時期が2037年度以降にずれこむと発表した。工法を検討した結果、準備に想定より長い12~15年程度かかる見通しになったためだ。国や東電がめざす2051年までの廃炉完了は、困難さが増している。
東京電力ホールディングス(HD)は7月31日、福島第一原発の廃炉にかかる費用として、2025年4~6月期決算で新たに9030億円の特別損失を計上したと発表した。溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の本格取り出しに向けた準備作業の大枠が固まったため。廃炉全体の支出は予定も含めると5兆円に迫り、想定の8兆円を超える可能性が高まっている。(7/31.Thu)
★【社会】北海道から沖縄まで、22都道府県で津波観測(7/30.Wed)
7月30日午前8時25分ごろ、ロシアのカムチャツカ半島付近を震源とする地震が発生した。気象庁によると、地震の規模を示すマグニチュード(M)は8.7と推定され、同庁は北海道から和歌山県にかけた太平洋沿岸部に津波警報、沖縄までの地域に注意報を発表。北海道から沖縄県の22都道府県で最大1メートル30センチの津波を観測した。総務省消防庁によると、7月30日午後5時までに21都道県の少なくとも201万1038人に避難指示が出された。
★【社会】川重の裏金問題で海幕トップら93人処分 「組織の構造的な問題」(7/30.Wed)
防衛省から潜水艦修理を受注した川崎重工業が捻出した裏金をもとに、海上自衛隊の潜水艦乗組員らが物品の不適切な供与を受けていたとして、防衛省は7月30日、海自トップの斎藤聡・海上幕僚長を含む93人を処分した。昨年7月から実施していた特別防衛監察の最終報告も公表し、裏金による海自隊員への利益供与を一部認定したが、全体像は解明されなかった。特別防衛監察の最終報告によると、川重と下請け3社の間で繰り返された架空取引により、2023年度までの6年間で総額約17億円の裏金が防衛省の潜水艦修理費から捻出されていた。
★【教育】小6と中3の学力スコア低下、識者「深刻な結果」 国の経年変化分析(7/31.Thu)
子どもの学力の変化をみる国の「経年変化分析調査」(2024年度)の結果が7月31日、公表された。前回(2021年度)より全教科で成績が下がった。文部科学省は「継続的な分析が必要」と慎重だが、下げ幅が大きく、識者や省内に「深刻な結果」との認識も広がる。2013年度から原則3年ごとに実施する。毎年の全国学力調査と違ってほぼ同じ問題(非公表)を出し、2016年度以降の3回分が比較可能という。今回の結果(500を基準とするスコアで表示)は、平均スコアが、小6=国語489.9(前回比15.9ポイント減)、算数486.3(同20.9ポイント減)▽中3=国語499.0(同12.7ポイント減)、数学503.0(同8.0ポイント減)、英語478.2(同22.9ポイント減)。前回は、下がった教科はなかった。
★【国際】トランプ氏、労働統計局長を解雇 雇用統計に「過ち犯した」と不満(8/1.Fri)
トランプ米大統領は8月1日、米国の政策判断などの指標となる「雇用統計」を所管する労働省幹部を解雇した。この日公表された数値が雇用情勢の急減速を示したのに対し不満を爆発させ、統計が「操作されてはならない」とも主張。「トランプ関税」が米経済を傷つけているとの批判は根強く、トランプ氏は経済指標に過敏になっている。1日に同省が発表した7月分の雇用統計は、景気の重要指標とされる非農業部門の就業者数の伸びが前月比7万3千人増とされ、市場予想の11万人増を大きく下回った。
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