2025年08月20日

転勤ある会社はNG? でもメリットもある? 転勤について考えよう【就活イチ押しニュース】

テーマ:就活

 勤務先は転勤がないほうがいい――そう考える就活生が増えています。学生の意識変化を受け、8月4日の朝日新聞デジタル版では就活生向けに「転勤なし」をアピールする企業が増えてきている現場を紹介しています。一方で、転勤は社員にとってメリットになることもあります。これから就活先を考えていくにあたり、ぜひ転勤についてしっかり考えてみましょう。(編集部・福井洋平)
(写真・幕張メッセで行われた合同企業説明会では、東京勤務や転勤なしをアピールする企業もあった=2025年3月1日/写真、図版はすべて朝日新聞社)

転勤ない会社「志望度上がる」は8割近くに

 人材情報会社の学情が今年7月に公表した2027年卒学生対象の調査によると、転勤のない企業は志望度が「上がる」と答えた学生が56.1%、「どちらかといえば上がる」と答えた学生が23.5%であわせて79.6%と8割近くにのぼりました。2026年卒学生に対する同様の調査では「上がる」が51.6%、「どちらかといえば上がる」が26.5%であわせて78.1%でしたので、わずかですが割合は上がっています。学生からは「恋人、家族、友達から離れたくない」「同じ環境で着実に成長していきたい」「引っ越しは面倒だし、東京は便利だから離れたくない」「いろいろな地域へ移動するのは心身ともにストレスが溜まりそう」「人生設計を立てやすい」といった声があがっています。また、勤務地や転勤の有無を「最優先で重視する」と答えた学生は26.3%、「最優先ではないが重視する」は60.6%となっています。

 8月4日の朝日新聞デジタル版の記事「就活生に嫌われる『転勤が多い会社』 若い世代は転勤よりも転職?」では、この春に会社の合同説明会で「転勤なし」をアピールする姿がひときわ目立っていた、と報告しています。マイナビの調査では、行きたくない会社の特徴で「転勤が多い会社」と回答したのは31%で「ノルマがきつそうな会社」(38%)に次いで2番目に多くなっています。

転勤よりも都心部で転職したい

 転勤がここまでいやがられる理由について、この記事では学生の「共働き志向の強さ」をあげています。やはりマイナビの調査で、結婚後の仕事について「共働きが望ましい」と回答した学生は全体で72%に達したそうです。女性のキャリアを考えても、世帯年収を安定させるという観点からも、共働きを選択する学生が増えているのはごく自然なことでしょう。子どもが生まれると、転勤があるとどちらかが労働と子育て両方を担当する「ワンオペ育児」に陥ってしまいます。

 転勤は手当がついたり、昇格・昇給や出世につながったりするという見方もありますが、記事に登場するエン・ジャパンの担当者は最近の20~30代は「転勤によって出世や昇給したい、転勤手当で所得を増やしたいとあまり思わず、転勤そのものを敬遠する傾向がある」と語っています。いまやリモートワークも当たり前の時代になり、昇格や昇給程度では転勤のデメリットはカバーできないと考えているということです。この担当者は「コロナ禍で大学の授業をオンラインで受けた世代は、わざわざ転勤しなくてもリモート勤務でいいじゃないか、となる。転勤で昇給するより都心部で転職した方がいいと考える人が増えた」とも語っています。
(写真・大手町や丸の内のオフィスビル群)

「対人関係をリセットできた」30代が24%

 エン・ジャパンが8月4日に公表した調査で、転勤をしたことがある人に転勤してよかったことを訪ねたところ、「知らない土地・環境を知る機会になった」が56%、「仕事の人的ネットワークが広がった」が42%、「業務範囲が広がった」が39%、「自身の能力が向上した」が35%でした。ただ、いずれの項目についても20代は解答者の割合が低く、一方でメリットは「特にない」という回答は全体12%に対し、20代が25%と突出して高くなっています。若い人が特に転勤のメリットを感じづらいということが数字からも読み取れます。

 一方、転勤のメリットで「対人関係をリセットできた」と回答した人は、全体14%に対して30代が24%と高くなっています。会社の仕事は好きだけど職場の雰囲気があわない、会社は好きだが職種が合っていないかもしれない…… 30代は、こんな悩みに直面することも多い年代です。そんなときに転職をしなくても、転勤や異動によって対人関係をリセットすることで自分によりフィットした職場や環境に移れる可能性も高くなるわけです。転勤にはこういうメリットもある、ということも頭の片隅においておきたいところです。

転勤不可68%も「問題なく運用」

 転勤制度は残しつつ、社員がのぞまない転勤をなくそうという動きも出てきています。7月30日の朝日新聞デジタル版「『望まない転勤』見直す企業続々 転勤不可68%でも『問題なし』」では、外資系金融大手のAIG損害保険が転勤の有無や勤務地をすべて社員の選択制にする「ワーク・アット・ホームベース」という取り組みが紹介されています。「転勤可」「転勤不可」はいつでも変更でき、約7000人の社員のうち68%が「転勤不可」を選んでいますが、リモートの活用やエリアごとの現地採用を進めるなどした結果、「現在は問題なく運用されており、勤務地を理由とした望まない離職もほぼゼロになっている」(同社役員)そうです。

 このほかにも記事では、ニトリホールディングス三井物産が転勤の可否などを選べる制度を導入したことや、東京海上日動火災保険が来春から人事制度を大きく変え、同意のない転居を伴う転勤の廃止に踏み切ることなどを紹介しています。こういった大企業の取り組みを参考に、自分の志望する会社の転勤に対する考え方についてもぜひ調べてみてください。
(写真・通勤客で埋め尽くされる品川駅の自由通路)

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