
6月22日に
東京都議会選挙の投開票が行われ、
自民党が議席を大きく減らして第一党の座を
都民ファーストの会に明け渡しました。自民党以外にも、勢いを落とした既存政党と、逆に勢力を伸ばした新しい政党の対比がはっきりと出る結果になりました。
今週の「週間ニュースまとめ」でも触れていますが、今年の都議選は7月20日に投開票がある
参議院選挙の前哨戦ともなっています。
アメリカの状況を見てもわかるように、選挙は国の行く末を大きく変えていきます。もちろん、就職活動や入社後のビジネスにも影響があるでしょう。東京都在住の方はもちろん、それ以外の方も今回の都議選の結果をチェックし、参院選に向けて関心を高めてほしいと思います。(編集部・福井洋平)
(写真・当選確実の知らせを受け、万歳する都民ファーストの会の荒木千陽氏(都民ファーストの会元代表)=2025年6月22日/写真、図版は朝日新聞社)
自民党が第一党を都民ファに明け渡す

1400万人と日本人口の10分の1近くをかかえ、127の議席で争う東京都議選は、いち地方議会の選挙にとどまらない影響力を持っています。さらに、いまは衆院で与党の自民党、
公明党が議席の過半数を取れていない「少数与党」政権です。このため夏の参院選で与党の自民党、公明党が敗れたら衆議院、参議院ともに与党が過半数割れすることになり、政権の枠組みが変わる可能性が高まります。こうした状況から今回の都議選はいつにもまして注目度が高い選挙でした。投票率も47.59%と、前回から5ポイント以上伸びています。
その都議選で、第一党だった自民党は告示前の30(裏金問題で非公認となった議員を含む)から大きく議席数を減らして21議席にとどまり、第一党の座を都民ファーストの会(都民ファ)にあけわたしました。
小池百合子都知事が特別顧問をつとめる都民ファは小池知事が積極的に街頭演説にまわり、告示前の26(無所属で立候補した会派所属の1人含む)から31議席に勢力を伸ばしています。一方、自民党と同じく国政与党の公明党は東京都では自民党とともに小池知事を支持する立場で、小池知事も公明党候補者の応援演説にまわったりしましたが、22人立候補して当選は19人、3人が落選する結果となりました。公明党は伝統的に都議選に非常に力を入れており、1993年の都議選以降は8回連続で立候補者が全員当選しています。今回候補者が落選したのは1989年都議選以来、実に36年ぶりのこととなります。
一方、小池都知事と対決姿勢をとることが多い野党をみると、
立憲民主党は告示前の13から17に議席数を伸ばしましたが、
共産党は19から14に減少しました。
(写真・自民党本部の開票センターで、状況を見守る井上信治都連会長=2025年6月22日)
国民民主党、参政党が議席を獲得

今回目立ったのは、告示前は議席のなかった政党の台頭です。
まず、昨年の衆院選でも躍進した
国民民主党は今回、ゼロだった議席を9まで伸ばしました。国民民主党の玉木雄一郎代表は小池知事と関係が近く、一部の選挙区では都民ファと候補者を調整し、最終的に18人の候補者をたて、半分が当選するという結果になりました。ただ、条例を提出できる11議席には届かず、昨年の衆議院議員選挙で7→28人と議席数を4倍に伸ばしたときの勢いからすると少し期待外れの感もあります。都議選の前に、参院選に擁立する予定だった元衆院議員の公認を取りやめる混乱があり、その影響で逆風が吹いたことも否定できません。
もうひとつ議席を新たに獲得したのが、参政党です。2020年に結成され、現在は国会議員が4人在籍。また最近の各地の地方議会選挙で参政党の公認候補がトップ当選するなど支持を広げており、都議選には4人を擁立。うち3人が当選し、世田谷区では定数8で2位当選、練馬区でも定数7で3位当選と、支持の広がりを感じさせる結果となりました。
(写真・当選確実となり、笑顔で花束を受け取る国民民主党の山口花氏(左)=2025年6月23日)
「外国人」が選挙のキーワードになりつつある

参政党は選挙戦では個人都民税の50%減税や、火葬場や地下鉄といった社会インフラの公営化などを主張。開票後、神谷宗幣代表は「党代表選挙や憲法草案の発表などの活動を重ね、ネット上で認知を高めることができた」「キャッチコピーの『日本人ファースト』が有権者の胸に刺さっているのではないか」と勝因を分析しました。
JX通信社代表取締役の米重克洋氏は朝日新聞デジタル版の「コメントプラス」で、参政党の支持者層に「かつては安倍政権を支持していた若い世代が流入している」と分析しています。また、6月のJX通信社の調査で、都議選で有権者が重視する争点として「外国人・
インバウンド対応」を挙げた人が17%に上ったデータを取り上げ、「『外国人』が選挙のキーワードになりつつある点も注視すべきだ」と語っています。「外国人・インバウンド」を争点として取り上げた層は、ほかの層にくらべて参政党の支持傾向がかなり強かったそうです。
ちなみに参政党が公表している「憲法草案」を見ると、第一条に「日本は、天皇のしらす(原文注:国民の実情を広く知って日本を治める意味の古語)君民一体の国家である」、第四条には「国は、
主権を有し、独立して自ら決定する権限を有する」とあり、
日本国憲法の原則である
国民主権から大きく転換した思想でつくられていることがわかります。
今回の都議選では、前回の都知事選で小池氏に次ぐ2位の得票数だった元広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が代表をつとめる「再生の道」も42人が立候補しましたが、こちらは1人も当選できませんでした。石丸氏はいまの都政は
二元代表制が機能していないとする一方、「都議が127人選ばれるなら、(政策は)127通りあるべき」として、党としての政策は掲げませんでした。結果的には、このスタンスは受け入れられなかったということです。なお、
れいわ新選組や
日本維新の会も、議席を獲得することができませんでした。
(写真・参政党の神谷宗幣代表(中央)と当選確実となった都議選の候補者たち=2025年6月23日)
自民支持層の自民投票率が大きく下がる

朝日新聞の
出口調査によると、自民支持層は投票者全体の21%で、そのうち自民候補に投票したのは53%と半数強にとどまっています。前回は70%、前々回は67%ですから、自民党を支持しているにもかかわらず他の政党に入れた人が多かったことが今回の自民惨敗の一因といえそうです。自民支持層の投票先で自民党の次に多かったのは都民ファで15%、次いで公明党が6%、立憲と「再生の道」が3%でした。
7月の参院選に都民ファーストは出てこないわけで、「自民党離れ」した自民支持層がどの政党に流れていくかは現時点では読めません。今回逆風のなかでも9議席を獲得した国民民主党、4人中3人を当選させた参政党が、その受け皿として機能する可能性も否定はできません。参院選でもし自民、公明の与党が過半数を割ると政権の枠組みは流動的になり、国民民主党などの少数政党が与党入りして政策を実現する可能性もぐっと高まります。国の方向性を左右する可能性が高い今回の参院選に、ぜひ注目してみてください。
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