2021年10月15日

衆院選「キホンのキ」 1人2票の使い方、対決構図・争点は?【イチ押しニュース】

テーマ:政治

 衆議院が14日解散され、総選挙が事実上スタートしました。19日に正式に公示され、投開票日は今月末の31日という戦後最短の選挙戦です。衆院総選挙は、選ばれた議員が選挙後の国会で首相を決めるので「政権選択選挙」といわれます。今回は、安倍、菅、岸田政権の4年間の評価を踏まえたうえで、明日の日本の運営を、引き続き自民党・公明党による連立与党に任せるのか、立憲民主党を中心とする今の野党に委ねるのか、私たちの投票で決める選挙です。コロナ対策、経済政策、外交・安全保障、社会の多様性のあり方、政治の透明性など、争点はたくさんあります。衆院選の投票は今回が初めての人が多いと思います。これから投票日まで、新聞、テレビ、ネットニュースで、各党や候補者の主張や政策が連日報じられます。自分なりのテーマを見つけて、投票先をじっくり考えましょう。31日より前に投票する「期日前投票」も気軽に利用できますよ。衆院選のややこしい仕組みや、主なテーマなど「キホンのキ」を分かりやすく整理します。(編集長・木之本敬介)

(写真は、衆議院が解散され、恒例の万歳する議員たち=2021年10月14日)

小選挙区+比例区、落ちたのに当選?

 まずは、政治や選挙の基本から。

【総選挙】日本の国会は衆議院(定数465)と参議院(定数245)の二院制です。衆院議員の任期は4年間ですが、任期途中での解散か任期満了で全議員がクビになってすべての議席を選び直すため、「総選挙」と呼ばれます。一方、参院議員の任期は6年間で3年ごとに半分ずつ改選するので「通常選挙」といいます。

【公示】一般の人に広く知らせるために発表することです。国など公の機関が行うものに、選挙に関する公示,地価公示などがあります。選挙期日については、天皇が発する衆院総選挙と参院通常選挙だけ「公示」と呼び、選挙管理委員会が行う補欠選挙地方選挙では「告示」が使われます。

【小選挙区比例代表並立制】全国289の小選挙区ごとに最多得票を得た候補者1人が当選する「小選挙区制」と、全国を11ブロックに分けて政党に投票する「比例代表制」(定数計176)を組み合わせ、同時に選挙する制度。大政党に有利で政権交代が起きやすい小選挙区制と、中小政党も議席を確保しやすい比例代表制を組み合わせた仕組みです。有権者は小選挙区では候補者名を、比例区では政党名を、別の投票用紙に書いて2票を投じます。比例区では、政党があらかじめ順位をつけた候補者名簿を提出し、得票数の多い順にドント式と呼ばれる方式で政党に議席が配分され、名簿順に当選者が決まります。制度を導入したときには小選挙区300、比例区200の計500と切りのよい数字だったのですが、その後、1票の格差是正などにともない議員定数を減らしたため半端な数字になっています。

【重複立候補と復活当選】政党公認の候補者は小選挙区と比例区に重複して立候補できます。重複候補は小選挙区で勝てば当選ですが、こちらで落選しても比例区の名簿順位が政党に配分された当選圏にあれば「復活当選」します。比例区名簿では、重複候補者を同じ順位に並べることができます。同順位の場合、小選挙区での当選者に対する得票率(惜敗率惜敗率)が高い人、つまり惜しかった人から当選となります。小選挙区で落選した候補者が復活当選するという分かりにくい仕組みのため批判も多くあります。投票するときには「小選挙区は候補者名、比例区は政党名を書く」ことさえ知っていれば、戸惑うことはありません。

久々の「政権選択選挙」

 4年前の衆院選では、「安倍1強」と呼ばれた安倍政権下で、直前に野党第1党だった民進党が分裂してバラバラに。「政権選択」といっても選びようがない大混乱の中での選挙でした。今回、自民党は菅義偉前首相の突然の辞任でドタバタしたものの、総裁選が盛り上がり、選ばれた岸田文雄首相が短期決戦に打って出た形です。一方、野党第1党の立憲民主党は全国289の小選挙区のうち214で公認候補を擁立します。野党第1党が200以上の小選挙区で擁立するのは、2012年衆院選の自民党(当時は野党)以来9年ぶりのことです。立憲民主党は、共産党、社民党、れいわ新選組と4党による共通政策に調印し、「野党共闘」で臨みます。この4党に国民民主党を加えた5党で、全小選挙区の3分の2以上で候補者が一本化されました。「自民党・公明党VS.立憲民主党を中心とする野党共闘」の構図ができ、久々に「政権選択選挙」といえる状況が整いました。

(写真は、共通政策に調印した〈左から〉社民党の福島瑞穂党首、共産党の志位和夫委員長、立憲民主党の枝野幸男代表、れいわ新選組の山本太郎代表=2021年9月8日、国会内)

主な争点は

 主な争点を、今日の朝日新聞の記事から整理します。

【コロナ対策】新型コロナウイルスの感染再拡大をどう防ぐかが大きな焦点です。自民党の公約では、国や自治体の権限を最大限活用し、病床や医療人材を確保。ワクチンの3回目接種を進め、年内の経口治療薬の普及もめざすとしています。人流抑制や医療確保のために行政の権限を強める法改正も検討します。野党側も医療提供体制の強化を重視。立憲民主党の公約では、病床確保に国が主体的に関与し、保健所の機能も増員などで強化するとし、希望者がすぐにPCR検査を受けられる体制の確立もめざします。

【経済政策】各党とも巨額の経済対策を掲げ、コロナ禍で打撃を受けた中小事業者や非正規労働者らへの現金給付策を打ち出しています。岸田首相は「大胆かつ総合的な経済対策」の策定を指示し、「非正規雇用、子育て世帯などへの給付金」などの支給を明言。公明党は「0歳から高校3年生までの子どもに一律10万円」を打ち出しました。野党側も「低所得者へ年額12万円」(立憲民主)、「一律10万円」(国民民主)、「中間層を含め1人10万円を基本に低所得者には手厚く」(共産)などと主張しています。安倍・菅政権の経済政策「アベノミクス」の是非も争点です。岸田首相は大規模な金融緩和などアベノミクスの基本路線は引き継ぎつつも、中間層への分配をより手厚くすることで消費を盛り上げ、次の成長につなげる「成長と分配の好循環」を訴えます。立憲民主党はアベノミクスを「失敗」と断定。ただ、中間層への分配を強める点は同じで、時限的な年収1000万円程度までの「所得税ゼロ」や消費税率の5%への引き下げを主張しています。いずれも当面は分配の原資を政府の借金である国債に頼る考えで、先進国で最悪水準の財政状況をどう立て直すかも問われます。

【外交・安保】自民党は公約で米国を始め、豪州、欧州、台湾など「普遍的価値を共有するパートナーとの連携強化」を訴えます。一方、「中国の急激な軍拡や力を背景とした一方的な現状変更」に対応するため、「防衛力を抜本的に強化する」と明記。これまで対国内総生産(GDP)の1%以内におおむね抑えられてきた防衛費について、「2%以上も念頭に増額を目指す」としています。立憲民主党は「対等で建設的な日米関係」と明記。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設について、「辺野古新基地建設を中止し、沖縄における基地のあり方を見直すための交渉を開始する」と訴えます。自民は辺野古移設を「着実に進める」としています。

【多様性】選択的夫婦別姓については、自民党内の反対論に押される形で、政府の第5次男女共同参画基本計画から「選択的夫婦別氏」の文言がなくなりました。自民の公約では、氏を変えることによる不利益について「国民の声や時代の変化を受け止める」としているものの、導入の是非に触れていません。立憲民主党は選択的夫婦別姓の早期実現を掲げ、与党・公明党も導入を「推進する」と公約にうたっています。

【改ざん・政治とカネ】公文書改ざんや政治とカネをめぐる問題などが、安倍、菅両政権を引き継いだ岸田政権でも「負の遺産」となっています。野党側は疑惑や疑念への対応に及び腰だと政権批判を展開しており、衆院選にも一定の影響を与える可能性があります。

◆「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

テーマ別

月別