SDGsに貢献する仕事

日本郵船株式会社

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日本郵船〈後編〉地味な仕事も多いが、責任感と使命感ある職場【SDGsに貢献する仕事】

2025年08月06日

 SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする「SDGsに貢献する仕事」の第25回、海運業界最大手の日本郵船の後編です。世界で初めて、商用利用を前提としたアンモニア燃料船のタグボート「魁」を生み出した日本郵船。さらに大型のアンモニア燃料船開発をすすめ、SDGs時代における新たな海運業の姿をつくりだそうとしています。四方を海に囲まれた日本では、安定した海運業の働きが欠かせません。社内でさまざまな仕事にかかわってきた社員2人に、日本郵船で働くやりがいについてもうかがいました。(編集長・福井洋平)
【お話をうかがった方のプロフィル】
次世代燃料ビジネスグループ アンモニア燃料船開発チーム 高野貴帆(たかの・きほ)さん
2013年慶応義塾大学理工学部卒、同年日本郵船入社。タンカーグループ、貨物航空事業グループ、自動車船事業統轄グループ、バルクエネルギー事業統轄グループを経て現職。
次世代燃料ビジネスグループ アンモニア燃料船開発チーム 雨宮大朗(あめみや・ひろあき)さん
20年東北大学法学部卒、同年日本郵船入社。燃料炭グループ(現・燃料炭ソリューショングループ)を経て現職。

(前篇はこちらから

正解がない中、手探りですすめていく仕事

■アンモニア燃料船開発の苦労
 ──アンモニア燃料船開発という現在のミッションに関わられて、一番大変だったことは何ですか?
 高野貴帆さん やはり、アンモニア燃料船の建造そのものです。本当に世界初のものをつくって、それを運航して、お客様に満足していただけるサービスとして営利目的でやっていくのは、大変なんだなと感じています。船の根幹機器であるエンジンをゼロから開発し、その他誰も経験したことがない課題を社内外と協力して1つずつ解決していくことが大変でした。が

 ──経験したことがないことを続けていくために、どういったことに気をつけていきたいですか。
 高野 船会社として忘れてはいけないことは、現場には乗組員がいて、お客様がいて成り立っている商売だということです。それを常に意識して、現場目線で仕事をしていくことが大事だと考えています。なので直接船に行って乗組員の方の話を聞いたり、出張して対面し、メーカーさんが苦労されていることを聞いたりしないといけません。メールや電話でやり取りする場合と、実際に会ったときに聞くお話というのは、内容が違ったり、出てくる情報量が違ったりします。
(アンモニア燃料船のタグボート「魁」=日本郵船提供)
 ──雨宮さんはどんなところに気をつけていますか。
 雨宮大朗さん この部署の仕事は、日本郵船の中でも珍しい仕事です。ゼロエミッションに貢献するため、アンモニア燃料船をつくるには、どんな方針で進めていくのか、自分たちでやっていかないといけません。正解がない中で、自分たちが一歩、一歩手探りで進んでいくイメージです。今までの仕事では正解を見つけよう、正解じゃなかったらどうしよう、と思っていましたが、開発は失敗ありきだという違いもあります。竣工まで着実に足元の仕事をしつつ、そういうマインドセットでやっていこうと思っています。

 ──安定運航を目指しつつ、失敗してもそれを受け入れるという。
 雨宮 そうですね。安全運航は大前提ですが、開発においては一番のものをつくろうと意識し、さらにそこからどんどん改良を重ねていくものだと思っています。

■モチベーション保持術
 ──モチベーションを保つ秘訣は。
 高野 世界、日本、会社でGHGエミッションゼロという大きな目標を掲げているので、そこに直接貢献できる仕事に携われるのは自分の中でかなり大きいですね。社内の雰囲気がよく、大変な仕事をしていても「このメンバーとなら頑張れる」と思います。

 雨宮 日本郵船としてゼロエミッションへの貢献にダイレクトに関われるのは、非常にやりがいを感じます。我々の判断が日本郵船の今後に影響しうると考え、常に責任感強く仕事をしなくてはと思います。今の部署は本当に総合力が求められるので、そういう意味では非常に鍛えられます。

オペレーターや配船業務を経験

■高野さんの社歴
 ──現部署に来られるまでの、高野さんの社歴を教えてください。
 高野 2013年入社で、2016年10月までタンカーグループにいました。ここでは原油タンカーの運航をサポートするオペレーターや、油社様向けの国内営業をメインに担当していました。船のオペレーターは、船の運航や入港に関して行う各種手続きを代行する仕事です。「天気が悪くて予定通り運航できていない」という連絡が船から来ると、「予定が遅くなります」とお客様に伝えるのもオペレーターの仕事です。まさに運輸機関としての仕事で、基本的に多くの新入社員が経験する部署です。

 ――そのあとは貨物航空事業グループに異動されています。
 高野 2016年10月から2020年4月までいました。弊社は船会社ですが、最近まで貨物の航空機を保有・運航している会社を所有しており、本社側でその会社の収支管理や経営方針策定等の統轄業務をしていました。
 その後は2021年夏ごろまで、自動車事業統轄グループで配船業務をしていました。配船業務というのはたとえば、世界中を百隻ぐらい運航している自動車船に関して、この船はこちらの航路、この船はこちらの航路に配船するという業務です。その部署で第一子の産休・育休に入り、そのあと復帰したのがバルクエネルギー事業統轄グループです。鉄鉱石や石炭、穀物、木材チップなど梱包されずに運ばれる固形の貨物はドライバルクと呼ばれ、それら貨物を運ぶ船を「ドライバルク船」といいます。バルクエネルギー事業統轄グループはドライバルク船の運航、営業に関わる営業部署や営業会社を統轄している部署です。その後、第二子の産休・育休を取って、2025年4月からこちらの部署に来ました。

 ──今が5部署目ということですね。「統轄」というのはどういったお仕事なのでしょうか。
 高野 社内向けの仕事で、各営業部署が利益を達成しようと行動する中で、本部として今後の見通しや事業拡大、新規事業であればどういった分野に取り組んでいくのかを考える部署です。本部内の経営企画をイメージしていただければと思います。

 ──今のこのアンモニア燃料船開発チームは希望されたのですか。
 高野 長らく営業から離れていたので、「できれば外と接するような部署がいい」「できれば新しいことに取り組んでいる部署に行きたい」と伝えていました。

 ――結構みなさん、高野さんのように異動はされていくのですか。
 そうですね、弊社は3~4年に一度異動があります。

運ぶものによりオペレーションも異なる

■雨宮さんの社歴
 ──雨宮さんのこれまでの社歴も教えてください。
 雨宮 2020年入社で、今年で6年目です。この部署は2023年10月からです。入社後は燃料炭ソリューショングループに配属され、国内の電力会社向けに、海外から発電用の石炭を輸送するといった部署にいました。主に豪州やカナダ、インドネシアの港から石炭を積み出すのですが、そこから日本に帰ってくる船のオペレーションをしていました。先ほど高野が説明したような手続き的なことと、担当船をどう安全に、かつ効率的に航行させるか、船長と日々コミュニケーションを取りながら最適な運航に努めていました。

 ――運行している船のスケジュール調整と停泊する手続きというと、24時間の仕事ですね。時差もあれば、言葉の壁もあるわけですよね。
 雨宮 そうですね。私が運航していた船ではフィリピンやインド国籍の船長、乗組員の方が多かったので基本的に英語でやり取りしておりました。

 ──原油や燃料タンクなど、運ぶものによってオペレーションの質が違ってくるのですか。
 雨宮 そうですね。運ぶものが変われば、船のサイズや形状も全く異なります。例えば、鉄鉱石などを運ぶ船は「ケープサイズバルカー」という大きなサイズ、石炭は主に「パナマックスバルカー」という中型船型、もう少し小さい「ハンディサイズ」と運ぶ貨物によってサイズが変わります。また、自動車輸送船やコンテナ、タンカーなど、それぞれ輸送するのに最適なサイズ・形状をしております。そして当然、貨物によって取り扱いなど、オペレーション面でも大きく違いがでてくるわけです。

人として大切にしてもらえた会社

■高野さんの就活
 ──高野さんは就活のときはどういう業界を見ていましたか。
 高野 業界としては金融と商社をメインで見ていました。

 ──大学時代はどういったことをされていましたか。
 高野 大学時代は理工学部で機械工学を専攻し、車椅子の設計図を書くなどしていました。幼少期にアメリカなど海外に住んでいた経験があるので、小さい頃から漠然と海外に向いている企業で働けたらいいなと思っていました。それで商社を考えていたのですが、就活が始まって海運業界の存在を知りました。弊社はB to Cの企業ではないので、学生だと知る機会が少なく、理系だったこともあって就職活動をする人自体が少なかったんですね。そのため本当にぎりぎりで存在を知り、「あ、これは!」と思って、受けました。

 ──入社試験や面接で覚えていることはありますか。
 高野 「うちの会社に入ったら、次の日からどう働きますか?」「何をしてくれますか?」といった質問ではなくて、「この会社でずっと働いていきたいと思ったのはなぜですか?」「どういう人と一緒に働きたいと思いますか?」といった人の内面を問うような質問がすごく多かった記憶があります。「人として大事にしてもらえた」という印象でした。志望度は、一番高かったですね。

■大変だった仕事
 ──入社されていろんなお仕事をされてきましたが、一番大変だったのは。
 高野 一番大変だったのは、新卒時のタンカーグループのときでした。学生から社会人になる切り替えができていない中で、お客様と1日目から相対しなければいけませんでした。そのときにお客様に「分からないんですけど~」と学生気分で話してしまい、当時の上司に本当にすごい叱咤激励をいただきました。
 ただ、上司はすごく怖いんですけど、何かあったら絶対に受け止めてくれました。新入社員であっても、この会社の看板を背負い、他の会社と相対するんだったら、そんな適当な態度じゃダメなんだ、と甘やかさずに言ってくれたんだと思います。今となっては、至極真っ当な意見だと思います。

趣味、特技を深掘りする面接

■雨宮さんの就活
 ──雨宮さんは2020年入社、コロナ前の就活ですね。
 雨宮 ちょうどコロナ前に就活をして、withコロナ下で入社して、仕事をした最初の代だったと思います。

 ──就活の時はどういう業界をみていましたか?
 雨宮 就活のときは海運と空運、総合商社、海外展開をしているグローバルメーカーをみていました。大学時代は国際政治や国際関係を学んでいましたが、小学校1年生ぐらいから大学4年生までサッカーをしていて、勉強よりもほぼサッカー漬けの学生生活でした。

 ──なぜ、海運を目指されたのですか。
 雨宮 海外で活躍して、人に希望を与えるようなサッカー選手になりたかったんです。ただ、現実的にプロのサッカー選手は厳しいとなったとき、グローバルに人々にインパクトを与える、支えるといった仕事がいいなと。そうなると海運、空運、商社、グローバル展開のメーカーになったという経緯です。

 ──海運は最初から視野にあったのですか。
 雨宮 いえ、大学3年生の3月に大学内での企業説明会で初めて知りました。でも、海運は世界の物流を支えていて、日本に関しては99%ぐらいの物流を支えているんですね。「あ、これだ」と思って、海運を受けようと思いました。

 ──他の海運会社も受けられましたか?
 雨宮 大手2社を受けておりました。日本郵船の面接では私の場合は志望動機を全く聞かれませんでした。ガチガチに準備をしていたのに、若干手応えなしに終わる、という感じで。趣味や特技について面接官が気になったところを聞くというフランクな印象でした。

 ──面接では、どういうお話をされたのですか。
 雨宮 印象に残っている質問は「おすすめの国旗はどこですか?」です。趣味、特技のところに「世界の国旗を全部知っています」と書いたので、それを聞かれました。ちなみにおすすめはパラグアイだと答えました。世界で唯一、表と裏でデザインが違うんですよ。

 ──入社の決め手は何でしたか。
 雨宮 やはり人にインパクトを与えたり、支えたり、グローバルというところで、自分にとって一番分かりやすかったからです。かつリーディングカンパニーとしての責任感を持ち、社会課題に取り組んでいる印象を受けました。当時はアンモニアのプロジェクトはまだスタートしていなかったですがLNGへの取り組みはあり、そこも意識して「チャレンジングにいろんなことをやりたい」とエントリーシートに書いた記憶があります。

上司ともフラットにやりとり、責任感と使命感ある職場

■日本郵船のやりがい
 ──日本郵船で働くやりがいを教えてください。
 高野 1つの会社にいながら本当にいろんな経験ができるというのは、大きなやりがいです。いろんな部署を経験でき、日本だけでなく海外でも勤務できます。会社全体として掲げているゴールが、会社だけのゴールではなく世界に向けての環境問題だったり、海上汚染の問題だったり、そこにみんなで取り組んでいくんだと打ち出しています。そこに関われているというのも、大きなやりがいです。

 ──働きやすさは感じますか。
 高野 働きやすさはすごく感じます。私は性格的に上司に対しても思ったことを言いたくなるのですが、そういったことに怒らず、心を広く聞いてくれる人が多いですね。年次が若い、若くないは関係ありません。

 ──雨宮さんのやりがいは何ですか。
 雨宮 私がいた前の部署は燃料炭を国内の発電所向けに輸送するという、今の世の中の潮流的に逆行する部分もある業務分野でした。ですが当時の上司は「我々が運ばないと、今光っている電球のうちのいくつかが消えてしまう」と言っていて、世の中を支えているという実感のもと、全員が使命感を持って仕事をしていたと思います。今の部署では、ゼロエミッション達成のためにも、我々が先陣を切って、引っ張っていくんだと、そういう責任感、使命感を持っているのが、自分にとっても大きなやりがいに繋がっていますね。実際には毎日、地味な仕事も多いのですが、その積み重ねがどこにつながるのかを全員が意識しながら取り組んでいるという環境は、すごくいいなと思います。

 ──そういった環境が、働きやすさにもつながっているのですね。
 雨宮 そうですね。今、高野が言った通りで、本当に上司とも年次関係なく、フラットに議論できます。弊社は、役職で人を呼びません。例えば、社長のことも「曽我社長」と呼ばず、基本的には「さん」付けで呼びます。そういうところにも非常にフランクな社風が表れていますし、仕事がやりやすい環境なのかなと思います。

(インタビュー写真・山本友来)

SDGsでメッセージ!

 日本郵船は既存のインフラを支えることを前提に、アンモニア燃料船開発など日本と世界に貢献するような事業もしています。私は今6年目ですが、私以外のもっと若い年次の社員が多く活躍をしています。ぜひ、弊社に興味を持っていただけたら、大変ありがたく思います。まずは学生時代を満喫して、就活も悔いのないように頑張ってください。(雨宮さん)

 就活生のみなさん、今は今後の人生の大きな岐路に立っていると思います。まずは就活をする際に、自分軸で自分が何をしたいかを強く考えて就活をしていただけたら、きっといい結果につながるのではないかと思います。弊社にも興味を持って、入社していただいたら大変嬉しく思いますので、よろしくお願いいたします。
I look forward to working with you in the future!(高野さん)

日本郵船株式会社

【海運】

 日本郵船は1885年の創業以来、日本の輸出入の99%以上を担う海上輸送を中心に、「Bringing Value to Life」を企業理念に掲げ、主にモノ運びを通じて人々の暮らしや生活を支えています。  約900隻の船舶を世界中で運航し、脱炭素などの地球規模の課題にも積極的に挑戦しています。海上・陸上輸送を手掛ける多くのグループ会社と共に、総合物流企業として未来に必要な価値を創造し、社会に貢献し続けることを目指しています。