
■モデルルームの敷居を下げる
──入社されてから基本的にマンション、住宅を手がけてこられましたが、そのころSDGsは会社として必要だと思っていましたか。
黒田 私としてはSDGsという言葉は出さなくても、人に愛されるための重要な指標だと考えて仕事をしてきました。地域のつながりという要素が結果、人から応援され、ビジネスにつながったり、選ばれるきっかけになったりします。会社のイメージも含め、信頼を獲得できる要素になると思いますので、そこはお金がかかるけど、やろうかと思い切る瞬間が必要と考えています。
──それを明確に思われるようになったのは、南大井の物件がきっかけですか。
黒田 そうですね。南大井の物件は特に地元の方からご好評いただいたのを覚えています。地域のつながりを創出するコミュニティ施設をモデルルームに取り入れ、「とにかく無料で誰でも使えます」「PTAの集まりにも利用してください」といった形でアピールしたのですが、そういった地域の方に愛される取り組みをすることがブランド力の向上につながるんだ、すごく評価をいただけるんだと実感しました。利益をすぐに求めたくなりますが、目先の利益だけではなく、持続的に愛されるブランドになるためには、SDGsと言われるような社会的に意義のある活動にも目を向けた方が良いと思ったきっかけです。
──本当に、地域のみなさんが集まって来られたのですか。
黒田 はい。「あそこのモデルルームの下は使えるらしいよ」「コーヒー飲めるらしいよ」と噂になり、通常の来場者数とは比べものにならないぐらいの方が来ました。平日でも賑わっていたモデルルームは珍しいですね。
──正直、モデルルームは気軽に入りづらいですよね。
黒田 私は自分が販売をしていたがゆえに、一般的にモデルルームの敷居が高く感じられている点が課題と考えていました。もっとふらっと見に来てもらってもいいんだけどな、と。このように地域の憩いの場を創出し、地域に寄与する取り組みをしている質の高いブランドということをうまく発信できた案件だったと思います。
目先の利益だけでなく長期的に愛されるプロジェクトをつくろう、という姿勢は、会社としてもかなり強く打ち出しています。大手町の森の事例も含めて、短期的または直接的に利益は生まないかもしれないけど、中長期的に価値を高める可能性のあるプロジェクトは会社としてもプッシュしてくれます。自分は社会性と収益性をボトムアップで、上司に対して提案していくという状況です。