2025年7月25日、沖縄県北部に新しいテーマパーク「ジャングリア沖縄」が開業します。大自然を舞台にして、肉食恐竜からオフロード車で逃げる「ダイナソーサファリ」や気球で絶景を満喫する「ホライゾンバルーン」など、約20のアトラクションがあります。2023年には東京都練馬区に「ハリー・ポッター」がテーマの「ワーナーブラザーススタジオツアー東京 メイキング・オブ・ハリー・ポッター」が開業しました。
新しいテーマパークが次々に開業していますが、2強といわれる東京ディズニーリゾート(TDR)とユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は訪日外国人客の増加という追い風を受けて好調です。両社はさらなる集客を求めてエリアの再開発計画を進めています。TDRを運営するオリエンタルランドは、学情の2026年卒大学生の就職人気企業ランキングで前年の8位から4位に順位を上げています。人気が上がっているテーマパーク業界ですが、業界の競争は熾烈になっています。
(写真・ジャングリア沖縄の入り口で来園者を迎えるシンボル「ジャングリア ツリー」=2025年6月6日、沖縄県今帰仁村/写真、図版はすべて朝日新聞社)
TDRとUSJが日本の2強
経済産業省の特定サービス産業動態調査によると、遊園地・テーマパークの2024年の売上高は8926億円で、前年より4.8%増えました。コロナ禍前の2019年に比べると2割以上増えています。売上増の要因は、訪日外国人客の増加や入場料の値上げなどとみられます。入場者数でみると、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーをあわせたTDRが2756万人(2024年度)ともっとも多くなっています。USJは入場者数を公表していませんが、アメリカテーマエンターテインメント協会の発表によると、USJの入場者数は1600万人(2023年)で同じ年の東京ディズニーランドの1510万人、東京ディズニーシーの1240万人を上回り、世界3位となっています。TDRとUSJが日本のテーマパークの2強といえます。それに次ぐのが長崎県佐世保市にあるハウステンボスです。今は香港の投資会社が所有しており、2028年をめどに300万人の入場者数を目標に掲げています。
(写真・USJの地球儀=2023年6月13日、大阪市此花区)
ジャングリア沖縄はアジアも取り込む
今年の業界の注目はジャングリア沖縄の開業です。USJの立て直しに手腕を発揮した森岡毅氏が独立して立ち上げたマーケティング会社「刀(かたな)」などが2018年に構想を発表し、実現にこぎつけました。出資者にはオリオンビールや、百貨店などを手がけるリウボウホールディングスなど、沖縄の会社が名を連ねています。沖縄では過去最大級の民間事業です。本土の日本人客はもちろんですが、沖縄に近いアジアの観光客の取り込みも狙っていて、地元の期待は膨らんでいます。
オリエンタルランドはクルーズ事業を第3の柱に
TDRを運営するオリエンタルランドの新しい事業も注目されています。ウォルト・ディズニー社からライセンスを受けて2028年に就航する予定のクルーズ船事業です。乗客定員約4千人のクルーズ船を新たに建造し、ディズニーキャラクターが出演するミュージカルなどを楽しめる2~4泊の船旅を運航するというものです。船の運航は土地の制約がないため、成功すればどんどん事業を広げることができます。オリエンタルランドでは、パークとホテルに次ぐ第3の柱として成長させたいと考えています。
(写真・東京ディズニーランド=2023年4月10日、千葉県浦安市)
人件費上昇で入場料を値上げ
テーマパーク業界でも人手不足は深刻です。もともと案内や誘導などに多くの人手が必要な業態ですが、若年人口の減少で、パートやアルバイトなどが集まりにくくなっています。オリエンタルランドでは、パートやアルバイトの時給を2025年4月から70円増の1320~1670円にしました。2022年以降毎年70~100円の間で時給を上げていますが、それでも人手不足感があります。社員の賃金も2025年4月から平均約6%上げています。こうした人件費の上昇をまかなう必要もあり、多くのテーマパークは入場料の値上げをしています。ハウステンボスは2月から入場するパスポートの価格を100~1000円幅で値上げしました。USJは5月から1日入場券の最高価格を1000円引き上げて1万1900円にしました。TDRは7900~10900円までの6段階の変動価格制をとっていますが、見直しを検討しています。
人を楽しませることを懸命に考えられる人
テーマパーク業界は少子高齢化が進む日本では将来性が危ぶまれるところもありました。しかし、訪日外国人客の急増や絶え間ないリニューアルにより今のところ心配は杞憂になっています。さらにその波に乗ろうと、新しいテーマパークの開業が国内で続いています。海外でも中国・上海でレゴランドが開業し、ハリー・ポッターをテーマにした施設も2027年に開業予定。ディズニー社はアラブ首長国連邦(UAE)に新しいテーマパークを開くと発表しました。日本のテーマパーク業界は、こうした海外のテーマパークとの競争も激しくなっていくと想定されます。仕事が楽しそうだというイメージだけからテーマパーク業界を志望するのではなく、どうすれば人を楽しませることができるのかを一生懸命考えられる人が求められているのです。
(写真・上海レゴランド。中国風の警察署も=2025年6月20日)
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