東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドは、4月1日からディズニーランド、ディズニーシーの入場料を値上げすると、発表しました。「1デーパスポート」は大人を700円値上げして8200円に、中高生を400円値上げして6900円にします。4歳以上の幼児・小学生は4900円で据え置きます。同社の担当者は「より満足度の高い施設にするため」と値上げの理由を説明しています。また、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)も1月に一部値上げをしました。このように値上げできるのは、値上げしても入場者数は減らないと思えるほど業績がいいためです。入場者数の増加は訪日外国人客が増えていることが大きな要因です。ただ、ここにきて気がかりなことが起こりました。新型肺炎の流行です。中国人の入場を規制している国内のテーマパークはありませんが、中国人の訪日客数が当分激減するのは間違いありません。韓国人は昨年来、徴用工問題によって激減しています。また、日本人客も人混みを避けようと足が遠のく可能性があります。新型肺炎が収束するのに時間がかかると、テーマパークの好調にも陰りが出ることが心配されます。
(写真は、東京ディズニーランド=2018年4月10日、千葉県浦安市)
年々大きくなる市場
日本生産性本部がまとめている2019年版レジャー白書によると、遊園地・レジャーランド(テーマパーク含む)の市場規模は2011年を当面の底にして、その後は年々大きくなっています。2018年には8510億円で、前年より7.3%伸びました。2019年はまだまとまっていませんが、増加傾向は続いているようです。
TDRとUSJが圧倒的な2強
入場者数の最も多いテーマパークは、東京ディズニーリゾートです。ディズニーランドとディズニーシーをあわせて2018年度は3255万人が入場し、過去最高になりました。1983年に東京ディズニーランドが開業したときには1000万人でしたので、3倍以上になりました。次いで入場者が多いとみられるUSJは、運営会社が米メディア大手コムキャストの完全子会社になった2017年以降、入場者数を公表していません。2016年度には1460万人が入場していましたので、その後の混雑ぶりを考慮すれば、今は年間2000万人に近づいていると推測されます。2位は間違いないでしょう。3位は長崎県のハウステンボスです。最新の年間入場者数は254万人(2018年10月~2019年9月)で2位とは大差の3位です。名古屋にあるレゴランドも注目されているテーマパークですが、英国にある親会社の方針で入場者数を公表していません。ただ、3位内に入ってはいないようです。
(写真は、ハウステンボス=2019年10月24日、長崎県佐世保市ハウステンボス町)
2強は大規模投資を進める
テーマパーク業界の2強といえる東京ディズニーリゾートとUSJは設備投資も盛んです。ディズニーランドには今年、映画「美女と野獣」をテーマにしたエリアが開業します。また、ディズニーシーは2022年度に向けて2500億円をかけて拡張されます。また、2021年度には、ディズニーランド内に映画「トイ・ストーリー」をテーマにしたホテルも新設されます。USJも大規模投資をしています。今年、「SUPER NINTENDO WORLD」という新しいエリアをオープンします。ヨッシーの背中に乗ってゲームの世界に入り込めるアトラクションや、マリオカートを再現したアトラクションも登場します。
(写真は、USJの新エリア「SUPER NINTENDO WORLD」のイメージ図=USJ提供)
新型肺炎ショックで問われる魅力と体力
テーマパーク業界の課題は二つあります。ひとつは、2強以外のパークは集客に苦労しているところが多いということです。3位のハウステンボスも一時の勢いはなくなっています。北九州市のスペースワールドのように、設備投資が続かず古びてきて、閉園となるところもあります。2強の隆盛に食われないためには、特色があって投資を続けられることが必要で、そうでないところは厳しくなっています。もうひとつは、伸びを支えている訪日外国人に減少の兆しが見えることです。韓国人客が減ったため昨年の訪日客数はほぼ横ばいでしたが、今の新型肺炎の問題はより深刻です。「新型肺炎ショック」といってもいいと思います。これから東京オリンピック・パラリンピックが開かれる夏にかけて急増が見込まれる時期だったのですが、逆に激減となりかねません。こうした時期をどう乗り越えていくか、テーマパークの魅力と体力が問われています。
(写真は、営業最終日のスペースワールド=2017年12月31日、北九州市八幡東区)
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