中国の新車市場が縮んでいます。2019年の新車販売台数は前年比8.2%減で、28年ぶりに前年割れとなった2018年の2.8%減をさらに下回りました。落ち込みの大きいのは中国メーカーの自動車です。中国全体の景気が減退しているところに、政府が旗を振っていた電気自動車(EV)が補助金削減や発火事故の影響で不振になったことや中古車市場が成長していることが影響しました。日本メーカーはガソリン車が中心のため電気自動車の不振の影響は小さく、故障しにくく下取り価格が高い印象があるため中古車市場を意識したユーザーに支持されています。中国は新しい技術を取り入れることに積極的で、中国市場は「新時代の自動車」の実験場になりそうです。新車市場が縮小していても、日本メーカーにとって中国市場は変わらず重要だと言えます。
(写真は、広州モーターショーで展示された中国ブランド「紅旗」のスポーツ用多目的車〈SUV〉=2019年11月22日、広州市)
低成長に入った中国市場
中国の新車市場は2017年まで伸び続けました。2000年に208万台だったのが2017年には14倍の2887万台になりました。2010年にはアメリカを抜いて台数で世界最大の市場となり、今はアメリカに900万台近い大差をつけています。こうして驚異の成長を遂げた市場ですが、ここにきて2年連続の前年割れです。まだ欧米や日本に比べれば人口あたりの保有台数は少ないため、市場が飽和したとはいえませんが、低成長に入ったのは間違いなさそうです。
発火事故でEVばなれが進む
不振の主な原因は景気の減退ですが、中国特有の事情もあります。ひとつは世界の先頭を切ってEVを普及させようとした戦略のつまずきです。中国政府はエンジン車を規制してEVに補助金を出しています。このため、補助金目当てのメーカーが乱立し、低品質車の発火事故などが相次いでいます。こうしたことからユーザーのEVばなれが目立つようになってきました。中国メーカーはEVの販売と開発にかじを切っていたので、大きな打撃を受けているわけです。
中古車シフトも進む
もうひとつは新車から中古車へのシフトが進んでいることです。景気が悪くなっているため、ユーザーの財布のひもが固くなって中古車に目が向くようになっています。また、中国が得意なITを活用した販売方法が信頼を得ていることもあります。ネットで仲介する業者は、査定の流れを客がパソコンやスマホの画面上で見られるようにしています。買いたい車についても高精細なCGで見ることができます。取引が簡便で透明になったことで中古車市場にユーザーが向かっている面もあります。
トヨタとホンダが伸びる
日本メーカーは縮小する市場で健闘しています。2019年の中国での自動車販売はトヨタ自動車が9.0%増で日系メーカーの首位に立ちました。ホンダも8.5%増で過去最高になりました。一方、前年首位だった日産自動車は1.1%減で3位に落ち、マツダは16.4%と大きく減らしました。人口が減っている日本国内は伸びが期待できず、中国市場の重要さが増しています。
(写真は、広州モーターショーで発表されたレクサス初の電気自動車UX300e=2019年11月22日、広州市)
中国は新しい自動車の実験場
中国ではEVなどの新エネルギー車(NEV)を普及させる政策を進めています。ただ、新しい目標を当初は「2030年までにNEVの割合を40%にする」としていたようですが、とりあえず「2025年までに25%とする」という低めの目標になるようです。EVの開発スピードがそれほど速くない日本メーカーにとっては、ペースが鈍ることは歓迎されそうです。ただ、基本的に中国は新しい技術の開発や受け入れに積極的です。自動車が全く新しい乗り物になろうとしている時代だけに、中国市場はその実験場としての意味もあります。中国市場に強い日本メーカーは新しい時代にも強いメーカーになると思います。
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