エステ、介護、ブライダルなど続々アジア進出
このあたりが有力候補かと思っていたら、9月になって、滝川クリステルさんが「お・も・て・な・し」とやって、これも大きなインパクトを与えました。あの手話のような手ぶりで一語一語きってしゃべる滝クリのマネをするのはあまりに無謀だと思うのですが。
「お・も・て・な・し」が流行語大賞になるかどうかは分かりませんが、ビジネスの世界では、「日本のおもてなしを世界へ」という動きが強まっています。
少し前、中国でエステのコンサルタントをしている日本人女性と話す機会がありました。キャビン・アテンダントの経験のある人で、中国で日本式エステサロンを開業する人や従業員に「日本式サービス」を教える仕事なのだそうです。中国には、驚くような富裕層が増えていて、日本円で年会費1000万円くらいの超高級エステも成り立っているのだそうです。ただし、中国式のやり方だけではダメで、日本式のきめ細かい心遣いやサービスがあって初めて「超高級」になるのだと言います。
エステだけではありません。最近は、日本の介護ビジネスがアジアにどんどん進出しています。タイなどでは、住んでいる日本人高齢者を主な対象にした介護ビジネスが始まっていますが、だんだん日本人だけでなく現地の人も日本式のきめ細かいサービスを求めるようになっているといいます。中国などでは、最初から豊かな中国人高齢層を対象にした老人ホームを建設する動きが強まっています。ニチイ学館、ワタミなど介護ビジネス大手はいずれも、中国を含むアジアを市場に見据えています。
ブライダル業界もアジアに進出しています。大手のワタベウェディングは、上海、香港、台湾に直営店を設け、日本のノウハウを生かして現地のカップル向けのビジネスを拡大しています。
こうした「おもてなし産業」は、少し前まで国内産業でした。しかし、エステやブライダルは人口減の日本の市場にこだわっていては、先細りは見えています。介護だって、今は高齢者の数は増えていますが、東京オリンピックの開かれる2020年ごろにはピークアウトすると見られています。ならば、豊かになっていて、高齢化していて、まだまだ結婚する人の多いアジアに、少しでも早く出て行こうというのは自然なことだと思います。加えて、日本の「おもてなし」が、国際競争力を持つということを経営者たちは十分知っているのです。
おもてなしの心は、茶道や華道の中にあります。いずれも原点は客人を喜ばせたり、和ませたりする心です。日本人にしみこんだ文化といっていいでしょう。
「おもてなし産業」は日本の強みとして、これからの日本を支える柱の一つになるかもしれません。なってもらいたいと思います。ただ、最近少し気になるのは、飲食店やコンビニエンスストアのアルバイト学生が食べ物をおもちゃにした写真を投稿する悪ふざけが絶えないことです。「おもてなし」の仕事の自覚はゼロです。日本の強みはいつまで続くことやら、と思うのは心配しすぎでしょうか。