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ロシアによるウクライナ侵略から、8月24日で半年が過ぎました。ロシア軍が当初攻め込んだウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊など北部では復興が進んでいますが、ロシアが広い地域を実効支配した東部・南部では欧米の武器支援を受けたウクライナ軍が反撃して、膠着(こうちゃく)状態が続いています。戦争終結の見通しは立たず、さらに長期化するとみられています。ウクライナ戦争でロシア経済は日米欧による経済制裁や外資系企業の撤退で打撃を受ける一方、エネルギーや食料価格の急騰で各国経済は物価高(インフレ)などで大混乱しています。1990年前後の東西冷戦終結以降広がってきたグローバル化の時代から、再び分断の時代に突入し、世界経済は歴史的な低成長に陥るのではないかと心配されています。コロナ禍の最悪の状態から脱しつつある日本経済も先行きは不透明で、企業も対応に追われています。ウクライナ戦争は、みなさんの就活にも大きな影響を及ぼすのです。最近の朝日新聞の記事から、現状と見通しをまとめます。(編集長・木之本敬介)
そもそものウクライナとロシアの関係についてはこちらを読んでみてください。
●今さら聞けない! 「ウクライナ危機」って?ロシアが侵攻?なぜ?【時事まとめ22/2/18】
(写真は、ロシア軍の戦車などが並ぶキーウ中心部のフレシャーチク通りで、午前9時の祈りの時間に合わせて黙禱をする女性=2022年8月24日)
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(写真は、ロシア軍の戦車などが並ぶキーウ中心部のフレシャーチク通りで、午前9時の祈りの時間に合わせて黙禱をする女性=2022年8月24日)
少なくとも5614人の民間人が犠牲に
国連によると、ウクライナではこの半年で、少なくとも5614人の民間人が殺され、249の医療施設、350の教育施設が壊されたり軍事目的で使われたりし、恣意(しい)的な身柄の拘束や強制失踪は327件に上り、国内避難民は660万人、他国に逃げた市民は670万人、人道支援が必要な市民は1770万人になりました。民間人死者のうち360人余りは子どもです。これには東部など激戦地は含まれておらず、実際の犠牲ははるかに多いとみられています。両国兵士の死者は合わせて数万人とみられますが、実態は見えません。今回の戦争は、国連憲章で特別の責任を負う安全保障理事会(安保理)常任理事国であるロシアが、核戦力を誇示しつつ、領土拡張を狙った明らかな侵略戦争であり、第2次世界大戦の国際秩序を根底から揺るがしています。しかし、ロシアのプーチン大統領は8月16日の国際会議でも「国連憲章に完全に従って決めた。ロシアの安全を保障し(ウクライナ東部)ドンバスの住民を守る」と演説し、侵攻の正当性を改めて主張。今もウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」などと批判しています。占領地では、住民の選別や処刑、強制連行、ロシア国籍の付与、ロシア式教育の導入など、強制的な「ロシア化」が伝えられています。
残虐な消耗戦が続く…
今回の戦争で国連は無力です。安保理は国連憲章で「国際の平和と安全の維持に主要な責任を負う」と定められています。ウクライナをめぐる公式会合は、ロシアが10万人以上の軍隊を国境に集結させていた1月末から8月24日までに28回も開かれましたが、法的拘束力のある決議は一度も出せていません。常任理事国のロシアが拒否権を持つからです。3月のロシアを非難する国連総会決議には、国連加盟193カ国中、141カ国が賛成しましたが、その勢いは衰えています。24日の会合後に日本など54カ国がロシアに対し、ウクライナ領土から軍隊を即時に、完全に、無条件に撤退させるよう求めるロシア非難の声明を出しましたが、名を連ねたのは米英豪や欧州連合(EU)の国々で、ラテンアメリカ・カリブ海諸国は2カ国、アフリカはゼロでした。3月末にウクライナが中立化を受け入れる構想が浮上し、進展したかに見えた停戦協議も再開の見通しが全く立っていません。国際政治学者の藤原帰一氏によると、攻め込んだロシアにとっては開戦時より支配地域を広げられなければ侵攻の失敗であり、侵攻を決断したプーチン政権の正当性が問われます。ウクライナは少なくとも2月24日の侵攻開始時点までロシア軍を押し戻すことができなければ防衛の失敗です。日米欧などのウクライナ支援国は、ロシアに対する経済制裁でロシアの戦闘能力が弱まり、ロシア国内での厭戦(えんせん)感情が高まることを期待していますが、その兆候はありません。中国やインドなどロシアからエネルギーを購入する国によって制裁の実効性は弱まっています。藤原氏は「突き放して言えば、この戦争に勝てないとプーチン政権が判断するまで、残虐な消耗戦が続くことになるのだろう」と指摘しています。
ウクライナ戦争での国連の対応についてはこちらを読んでみてください。
●国連は無力か!? ウクライナ侵攻で考える「安保理」「拒否権」…【時事まとめ22/4/13】
(写真は、国連安保理の会合にオンラインで出席し発言するウクライナのゼレンスキー大統領=2022年8月24日、米ニューヨークの国連本部)
歴史的にもまれな低成長へ?
経済はどうでしょう。ロシアは世界有数の原油や天然ガスの輸出国で、侵攻後、エネルギー市場は急騰しました。穀倉地帯であるウクライナからの輸出が滞り小麦の市場価格も高騰。物流も混乱しました。もともとコロナ禍からの経済回復で上昇基調だった世界の物価は、エネルギーや食品価格の高騰でさらに押し上げられ、米国やユーロ圏のインフレ率は9%前後を記録しています。国際通貨基金(IMF)は最新の経済見通しで、2022年の世界の経済成長率予測を3.2%と、4月時より0.4ポイント引き下げました。2021年の成長率6.1%から減速する形で、米英独仏や日本などが軒並み引き下げられました。IMF調査局のペチヤ・コエバ・ブルックス副局長は、ロシアが欧州向けのガス供給を完全停止する事態になれば、来年の世界成長率が2%まで落ち込む可能性があると指摘しました。「1970年以降、世界の成長率がそれほど低くなるのは、70年代に1度、80年代に2度、そしてリーマン・ショック後の2009年と新型コロナ禍の2020年の5回だけだった。歴史的にみてもまれな低成長に陥りかねないところに私たちはいるのだ」と語っています。
日本企業への影響は?
日本経済への影響も深刻です。日本の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は7月、前年同月より2.4%上がりました。消費増税の影響を除くと2008年8月以来の高さです。欧米ほどではありませんが、急激に進んだ円安も輸入品の値段を押し上げています。欧米ではインフレを抑えるため中央銀行が金利を引き上げていますが、日本銀行は低く抑え込んでいます。円を売って金利が高いドルを買う動きが広がり、円相場は7月に一時、約24年ぶりとなる1ドル=139円台をつけました。秋以降も食料品などの値上げが続きそうです。円安は輸出企業の海外でのもうけを膨らませる一方、中小企業など内需産業にとっては輸入品の原材料の仕入れコストが増し収益を圧迫します。主な食品メーカー105社を対象に帝国データバンクが7月末にまとめた調査によると、今年中に値上げした、またはこれから値上げするものが計1万8532品目に上ります。3月に一部商品を値上げした日本マクドナルドホールディングスの日色保社長は、8月10日の決算会見でさらなる値上げの可能性を示唆しました。「地政学的な問題、大幅なインフレ、急激な円安の進行などコスト上昇要因が当初の想定を上回る速度と規模で進んでいる」と指摘。今後は「経営環境はより厳しくなる可能性が高い」と言っています。
ウクライナ戦争の影響をまったく受けていない企業はありません。就活に臨むみなさんは、自分の志望する業界・企業への影響について日々のニュースで知り、業績を調べてみましょう。就活を通じて、この戦争を「自分事」として考えることも大切だと思います。
円安の基本についてはこちらを読んでみてください。
●「悪い円安」が進む? 今さら聞けない!円安のキホンのキ【時事まとめ22/3/30】
対ロ制裁の日本企業への影響についてはこちらを読んでみてください。
●ロシア制裁、日本企業の影響・対応まとめ 面接の「逆質問」にも【イチ押しニュース22/3/18】
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