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(写真はPIXTA)
「出稼ぎ」WH利用者が増加
WHの利用者はコロナ禍を経て近年増加しています。日本ワーキング・ホリデー協会の推計では、年間約2万5千人の日本人がWHビザで外国に渡っているそうです。日本からの渡航者が最も多いのはオーストラリアで約1万5千人、次いでカナダ、ニュージーランド、イギリスなどが人気があります。オーストラリアは日本との時差がほとんどないこと、ビザの発給枠に制限がないこと、渡航者が多くて情報が集めやすいことなどが人気の理由です。外国で働くにはビザがいりますが、簡単には手に入りません。そのため、外国で働きながら語学を学んだり観光したりできるWHは以前から人気の制度でした。しかしコロナ禍を境にして、WHの目的が「出稼ぎ」に変わってきたといいます。とくに円安が加速している昨今、海外留学の費用は高騰し、留学の代わりにWHを選択する人も増えています。
しかし日本ワーキング・ホリデー協会によれば、2023年を境に現地で「仕事が見つからない」という相談が増えてきているそうです。朝日新聞デジタルで7月、オーストラリアでの取材をもとに連載された「ワーホリのリアル」という記事では、WHでオーストラリアに渡ったものの仕事探しに苦労する様子が取り上げられています。
(写真・WHで一番人気の国、オーストラリア最大の都市シドニー中心部/朝日新聞社)
履歴書80枚配って職探し
たとえば、シドニーに渡った26歳の女性は、30件以上の仕事に応募しましたが返信がなく、ようやく採用されたのは市内のキャバクラだったといいます。時給は30豪ドル(約3千円)で、「学業と両立ができて、効率よくお金を稼げる」といいます。ブリズベンで働く27歳の男性は、市内のレストランに1週間かけて履歴書80枚を配り歩き、ネット上の求人サイトでも50件以上に応募。「心が折れそうになった」といいますが、最終的に飛び込みで訪問した新規開店予定のレストランに採用されました。彼は「こちらで出会った人で、仕事探しに苦労していない人は見たことがない。これから日本から来る人は覚悟を持ってきた方がいい」と語っています。
(写真・オーストラリア最大の都市シドニーで、イベントのためオペラハウスがライトアップされていた=2024年5月)
日本人とつるんでいるだけではダメ
オーストラリアは世界的に時給が高く、7月からの最低賃金は24.10豪ドル(約2500円)。東京の最低時給の倍以上です。約50カ国・地域と協定を結んでWHビザを発給しており、世界各地から若者たちがやってきています。そのため仕事の奪い合いが起きており、ホームレス向けの食料無料配布を利用するWH滞在者も増えてきているそうです。オーストラリアは物価も高く、生活するのも楽ではないのです。
苦労することも多いWHですが、円安で海外留学費用が高騰しているいま、仕事さえ見つかれば現地通貨を稼ぐことができるWHの人気は衰えそうにありません。朝日新聞の連載では、「事前の情報収集が大事」「リスクとメリットをきちんと見極めてから来たほうがいい」というWH経験者の声を紹介しています。現在シドニーに住む30歳の女性は、渡航後の家や仕事探し、ビザにまつわる情報などについて、「日本人とつるんでいるだけでは限られた情報しか得られないけれど、色んな国の友達を作れば、得られる情報も増える」といいます。
WHを切り抜けた経験は就活でも生きる
みなさんの中にもWHを経験してきたり、今後WHで海外渡航を考えていたりする方もいるでしょう。しかし、「WHは就職活動には不利」という説もあります。ワーキングホリデー、すなわち「ホリデー」なので、目的意識がなくただ海外で遊んできただけじゃないかという印象を持つ人がいるためです。
しかし現在、WHといっても職探しも現地での生活も決して楽ではなく、かつてのようにWH=ただの遊びという状況ではなくなってきています。そういったなかで頭と足を使ってWHを切り抜けた経験は、就職活動でも十分にアピール材料となると思います。WHを利用して積極的に経験を積もうとする心意気はきっと社会でも歓迎されます。また、海外での生活を通して、語学力を身につけられることも大きな魅力です。海外で経験を積むことが難しくなっているいま、これからのライフプランを考える上で、ぜひ関心をもってほしい制度です。
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