2020年11月13日

「バイデン大統領」で就活どうなる? カギはコロナ+温暖化+米中【イチ押しニュース】

テーマ:国際

 米国の大統領選挙はほぼ決着し、バイデン氏の当選が確実の情勢です。世界が混乱したトランプ大統領時代に代わり、「バイデン大統領」が誕生すると、世界の経済、日本の経済はどうなるのでしょうか。世界最多の感染者を出している新型コロナウイルスの広がりを抑えられるのか。地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」に米国が復帰する影響は? 米中対立の行方は? 世界一の経済大国の動向は、日本企業の業績を左右し、みなさんの就活にも直結します。一歩進んだ企業研究をしてみましょう。(編集長・木之本敬介)

(写真は、バイデン氏の勝利宣言に歓声をあげる支持者ら=2020年11月7日夜、米デラウェア州ウィルミントン)

アメリカファーストから国際協調へ

 大統領選挙は、トランプ大統領が敗北宣言をしないため確定はしていませんが、「バイデン大統領」誕生は動かないと言われています。まずは、バイデン氏の経済政策を見ていきましょう。

 トランプ政権は減税規制緩和で経済を活性化させる一方、「アメリカファースト(米国第一)」を掲げて他国との間では輸入品の関税を高くする保護主義的な政策をとったことから、日本にとって大事な自由貿易が後退し世界経済は混乱しました。バイデン政権になると、富裕層への増税法人税強化、社会保障の拡充で格差是正を図るなど、政府が財政支出を増やす「大きな政府」を目指すといわれます。企業の経済活動にマイナスに働く面もありそうですが、トランプ時代のような予測不能な事態は少なくなるとみられ、日本の経済界は歓迎しています。経団連の中西宏明会長は「バイデン氏は国際関係の協調を重視する従来の米国の考え方を踏襲した、話がきちんとできる大統領だ」と評価しています。

コロナ対策

 バイデン氏が第一に取り組むと言っているのが新型コロナ対策です。トランプ政権はマスクの効用や科学者の提言を軽視し、経済優先の政策を進めた結果、米国では連日、新たな感染者が10万人超、死者1000人超という世界最悪の事態が続いています。バイデン政権がコロナ封じ込めを強めると経済活動が一時的に停滞する可能性もありますが、より大きな追加経済対策を実施するとみられており、米国の景気が上向けば日本からの輸出拡大につながります。すでに、米国での自動車販売台数は、コロナ禍による買い控えの反動も加わって9月に前年同月を超えました。これを受けて、トヨタ自動車、ホンダ、スバルは業績予想を上方修正しました。

 バイデン氏は、トランプ氏が脱退を表明した世界保健機関(WHO)への復帰を明言しています。WHOへの最大の拠出国である米国の復帰で、コロナ対策での国際的な協力が進んで世界の感染対策が進むこと期待されます。

(写真は、WHOのテドロス・アダノム事務局長=2020年1月、スイス・ジュネーブ)

温暖化対策

 地球温暖化への取り組みにも世界が注目しています。トランプ氏は「地球温暖化はでっちあげ」と公言し、「パリ協定は米国にとって不公平」として離脱しました。バイデン氏は温暖化について「人類存続にかかわる脅威」と最重視する考えで、すぐにでも復帰するとしています。バイデン氏は「トランプ氏は気候変動を『でっち上げ』だと考えるが、私は『雇用』(のチャンス)だと考える」と語り、2兆ドル(210兆円)を投資して再生可能エネルギー拡大やインフラ脱炭素化を進め、2050年までに温室効果ガスの「実質排出ゼロ」を目指すと言っています。日本もつい最近、菅義偉首相が「2050年実質ゼロ」を表明したばかり。主要国の足並みがそろいます。

 脱炭素の世界的な流れが強まると、鉄鋼やセメントなどの素材業界、石油業界は今までと同じ業態を続けていけるか分かりません。発電業界は再生エネへの転換が課題です。自動車業界は電気自動車(EV)の開発をもっと急がないと国際競争に勝てません。自動車部品など関連産業も転換を迫られます。モーター大手、日本電産の永守重信会長は10日、日経フォーラム「世界経営者会議」での講演で、世界的な環境規制強化を背景にEVが普及し「2030年に自動車の価格は現在の5分の1程度になるだろう」と語りました。劇的な技術革新が起こり、これに対応できない企業は淘汰されるということです。

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米中関係、TPP

 バイデン氏当選確実の報を受け、日本の株式市場は急騰し、日経平均株価は29年ぶりの2万5000円台を記録しました。トランプ時代は「米中貿易戦争」による中国への経済制裁で、中国経済に打撃を与えてきました。バイデン氏は人権問題で中国に強硬姿勢をとる可能性はありますが、追加関税などには慎重とみられています。日本にとって中国は第1位の貿易相手国ですから、米中関係が改善すれば日本企業の対中輸出拡大が期待されています。

 トランプ政権が脱退して、日本など11カ国で発効した環太平洋経済連携協定(TPP)への復帰はどうでしょうか。バイデン副大統領時代のオバマ政権は推進していましたが、米国内での反対論も強いことから、バイデン氏は「再交渉」を条件にしています。復帰するにしても時間がかかりそうです。

(写真は、29年ぶりの日経平均株価の終値2万5000円台を映したボード=2020年11月11日、東京都中央区)

「バイデン大統領」で業界・企業研究を

 こうして見てくると、「バイデン大統領」になると各分野で国際協調が進み、トランプ時代よりも安定した世界経済の回復・成長が期待できそうです。コロナによる感染拡大を抑えられるかは依然大きなカギですが、みなさんの就活にはプラスの可能性が高いのではないでしょうか。ただ、温暖化対策への取り組みや、コロナ対策、デジタル化への対応など、業界・企業によって未来の明るさは大きく異なります。今日取り上げた「コロナ対策」「温暖化対策」「米中関係」などをキーワードに、業界・企業研究を深めてみることをオススメします。

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