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2020年09月25日

自動車業界は大転換時代突入 変化楽しめる人は挑戦を【業界研究ニュース】

自動車・輸送用機器

 アメリカ・カリフォルニア州のニューサム知事は9月23日、2035年までに州内で販売される全ての新車の乗用車と小型トラックについて、排ガスを出さないクルマとするよう命じる知事令に署名しました。つまり、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)でなければ売ることができなくなります。カリフォルニア州は人口約4000万人と全米で最も多く、公共交通機関が発達していないため、自動車が人々の足になっています。しかも、ここでは日本車の人気が高く、シェアは46%にも上ります。ガソリン車の販売を禁止するのはカリフォルニア州がアメリカで初めてですが、中国や欧州でもガソリン車から電気自動車や燃料電池車に誘導する政策はあり、電動化の流れは加速しています。日本メーカーも電気自動車や燃料電池車に力を入れ始めていますが、海外メーカーに比べてやや出遅れている感があります。自動車業界がいよいよ大転換期に入ってきたのは間違いなく、大メーカーとはいえ安穏としていられない時代になっています。

(写真は、トヨタのレクサス初のEV、UX300e)

テスラがトヨタを時価総額で超す

 アメリカの電気自動車メーカーのテスラ社の株式時価総額が7月1日、トヨタ自動車を超えて業界一になりました。株式時価総額は投資家たちがみている企業の価値を示します。つまり、テスラは現時点でトヨタより価値が高いとみているわけです。2019年に売ったテスラの台数はトヨタの30分の1に過ぎません。それでも将来性を加味すると、トヨタより価値があるというわけです。そして、時価総額の差はどんどん開いています。

トヨタがテスラに抜かれた「時価総額」を知ろう【時事まとめ】も読んでください

テスラは難点を次々に克服

 電気自動車は排気ガスを出さないので環境にいいのですが、難点が三つあります。ひとつは1回の充電で走ることのできる距離(航続距離)がガソリン車より短いこと。二つ目は充電に時間がかかること。もうひとつは値段が高いことです。しかし、テスラは9月22日、今の電気自動車より航続距離を54%伸ばし、電池容量あたりのコストを56%削減した新車の試験生産に入ったことを発表しました。3年後には2万5000ドル(約263万円)で売るという考えを示しました。電気自動車の難点を次々に克服していく姿は、日本メーカーの先を行っていると言わざるを得ません。

(写真は、自社開発したEV用電池の新技術を発表する米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者〈CEO〉=9月22日、同社がネット中継した映像から)

三菱は生産終了、日産は新車発売へ

 日本メーカーも電動化に取り組んでいます。早くから力を入れていたのが三菱自動車日産自動車ですが、最近対照的な動きがありました。三菱自動車は2009年に発売し、「世界初の量産電気自動車」といわれた「アイミーブ」の生産を2020年度内に終了します。販売台数が累計で2万数千台と少なかったことと電気自動車は同じグループの日産が開発を主導することになっているためです。日産自動車は2010年に「リーフ」を発売し、今夏で生産台数が累計50万台を突破しました。すでに2代目が出ていて、さらに航続距離を458キロに伸ばした上級モデルも発売しています。2021年にはスポーツ用多目的電気自動車の「アリア」を発売することにしています。

(写真は、日産の新型EV「アリア」)

トヨタもホンダも本気

トヨタとホンダはこれまで、ハイブリッド車や燃料電池車に力を入れていたため、電気自動車にはやや出遅れていますが、ここにきて本腰が入ってきました。トヨタはハイブリッド車や燃料電池車に電気自動車も加えた電動車の世界販売台数を550万台以上とする目標の達成時期を当初の2030年から5年ほど前倒しできそうだとしています。まず2人乗りの超小型電気自動車を近く発売する予定で、さらにスバルとはスポーツ用多目的車、スズキダイハツ工業とは小型車の共同開発をしています。ホンダは、アメリカのゼネラル・モーターズ(GM)と提携し、電気自動車の共同開発を進めています。また、初めての量産電気自動車となる「ホンダe」を10月30日から国内で売り出します。まだ航続距離は短く、値段は高めですが、ホンダが本気を出してきたことはうかがえます。

(写真は、ホンダのEV「ホンダe」)

ここから10年で「大転換」感じるか

 電動化や自動運転が進む「自動車業界の大転換」は10年くらい前から言われてきましたが、国内ではまだ変化をそれほど感じません。しかし、海外市場では変化がじわじわと進んでいます。ここからの10年で変化は「大転換」と感じさせるほど進むでしょう。2003年に創業したテスラが時価総額世界一の自動車メーカーになるのですから、大転換時代には何が起こるかわかりません。今ある自動車メーカーの中で下剋上が起こることもあり得ますし、まったく違う業界の企業やベンチャー企業が一躍有力なプレーヤーになるかもしれません。今、自動車メーカーに就職するということは、とても刺激的な時代に仕事に加わることになります。変化をおもしろいと感じられる人には向いていると思います。

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