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2020年10月09日

医療用か大衆薬か、新薬か後発薬か…製薬会社研究のポイント【業界研究ニュース】

医薬品・医療機器・医療機関

 健康は人間の大きな関心事です。健康で長生きできるのであれば、お金を惜しまない人は多いでしょう。そんな人々の思いは世界共通です。画期的な新薬ができれば、世界中の人がほしがります。だから医療用医薬品の市場は世界です。また新薬の開発には巨額の研究開発費が必要になります。そのためには、企業の規模を大きくする必要があり、世界規模での企業の買収系列化が進んでいます。こうした国際的に展開する製薬会社が注目を集める一方で、日本には薬局やコンビニエンスストアなどで売る一般用医薬品(大衆薬)に力を入れる製薬会社や特許切れの薬を安く提供するジェネリック(後発医薬品)専門の製薬会社もあります。同じ製薬会社でもジャンルの違いで社風や社員に求められる能力などが違ってきます。医薬品業界はこれからも成長する業界であるのは間違いありません。志望する就活生も少なくないと思いますが、目指す企業が国内メーカーなのか外資系メーカーなのか、医療用医薬品のメーカーなのか大衆薬のメーカーなのか、新薬を開発しているメーカーなのかジェネリックのメーカーなのかといったことをきちんと把握して、社風や仕事の内容を研究しておく必要があります。

(写真は、ドラッグストアの売り場=大阪府堺市のキリン堂北花田店、2017年撮影)

製薬会社にはいろんなジャンルがある

 日本で活動している製薬会社には国内メーカーと外資系メーカーがあります。国内メーカーにも病院向けの医療用医薬品を主につくっているメーカーとドラッグストアやコンビニなどで売られる一般用医薬品を主につくっているメーカーに分かれます。医療用医薬品でも先発医薬品(新薬)をつくっているメーカーと後発医薬品(ジェネリック)をつくっているメーカーに分かれます。業界団体は日本製薬工業協会と日本ジェネリック製薬協会があり、前者には72社が後者には40社が加盟しています。外資系メーカーはおもに先発の医療用医薬品をつくって売っています。

(写真は、塩野義製薬の創薬研究=同社提供)

武田がダントツの1位

 国内メーカーで売上高が最も大きいのは武田薬品工業です。2019年度の売上高は約3兆3000億円で、2位以下を大きく引き離しています。武田は昨年、アイルランドの製薬大手シャイアーを日本企業として過去最高の約6兆円で買収したため、売上高が一段と膨らんでいます。2位以下は、大塚ホールディングスアステラス製薬第一三共エーザイと続いています。ただ、国内の医療用医薬品の売上高に限ってみると、ファイザー中外製薬ロシュ傘下)、アストラゼネカなどの外資系も強く、メーカーの国籍はあまり関係なくなっています。

(写真は、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長=2019年1月7日、東京都中央区)

画期的な新薬を出せれば安泰

 製薬会社で特徴的なのは、研究開発費が大きいことです。新薬を開発しているメーカーでは売上高の20%前後を研究開発費に充てるのが一般的です。これほど研究開発にお金をかけるのは、画期的な新薬を開発できれば長期間会社が安泰となるほどの利益があげられるからです。世界での売上高が年間10億ドル(約1000億円)を超えるような大型医薬品を業界ではブロックバスターと呼んでいます。世界では関節リウマチの薬であるヒュミラは2019年に世界で約2兆8000億円も売り上げています。日本でも、がんの薬である米メルク社のキイトルーダや小野薬品工業オプジーボなどいくつもの薬が年間1000億円前後の売り上げとなっています。世界の製薬会社は次のブロックバスターを生もうと懸命になっているのです。つまり、新薬を開発している製薬会社には一発あてられるかどうかというギャンブル的な性格があります。

特許切れればジェネリックの出番

 ただ、新薬の特許は20年間で、延長が認められても5年までです。特許を取ってから実際に独占的な販売にこぎ着けるまで時間がかかるので、実際に独占のうまみを味わえるのは10~15年といわれます。特許が切れれば、ジェネリック医薬品の出番です。同じ原料と製法で同じ効能がある薬をつくります。もちろん安く売りますので、本家の薬の売れ行きは落ちます。今は、医療費抑制のために政府がジェネリックの使用を推奨しているため、病院でのジェネリックの使用量が増えています。ジェネリックメーカーとしては、日医工沢井製薬が売上高トップを争っています。ただ、製薬会社全体のランキングでは両社の売上高は10位には入りません。ジェネリックメーカーは新薬のメーカーに比べると規模の小さい会社が多いといえます。

安定している大衆薬分野

 大衆薬は医療用薬に比べて市場規模は小さいのですが、新薬のようなギャンブル性が少ないため安定して利益が見込める分野です。最近ではアメリカの投資ファンドが武田薬品工業の大衆薬事業の買収を決めるなど、大衆薬分野も注目されています。医療費抑制のため、できるだけ医者にかからずに大衆薬で治そうとする人が今後は増えるという見方もあります。大衆薬メーカーでは、大正製薬ロート製薬第一三共小林製薬などが売り上げ上位の企業です。いずれもテレビCMでおなじみの会社ですね。

十分な研究が必要

 医薬品メーカーは景気にあまり左右されないという特徴もあります。それだけ必要性の高いものだといえます。これから国内の高齢化は一段と進みます。がんや認知症などの分野で画期的な新薬が期待されています。世界でも医薬品のニーズは高まっていくはずです。成長する業界であることは間違いありません。ただ、仕事の内容は研究と営業ではまるで違います。また、社風も外資系と国内メーカーでは違います。志望企業について十分な研究が必要な業界だと思います。

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