ホームセンター大手のDCMホールディングス(本社・東京)が、同業の島忠(さいたま市)を買収するため株式の公開買い付け(TOB)を実施しています。そのさなかに、家具大手のニトリホールディングス(HD)が島忠の買収を目指したTOBを実施する動きを見せています。島忠をDCMとニトリが奪い合う格好になりそうです。ホームセンター業界は、コロナ禍で売り上げが伸びています。巣ごもり生活を強いられた人が住宅を直したり庭をいじったりするために資材や工具などを買っているのです。ただ、長期的に見ると、ホームセンター業界は飽和状態にあります。業界全体の売り上げは2003年あたりから伸びておらず、1店舗あたりの売り上げは減っている状態です。最近ではネット通販も競合相手となっており、競争が一段と厳しくなっています。コロナ禍で業績好調な今こそ大きくなっておきたいという経営者の思いもあり、再編の動きが活発になりそうです。
売上高横ばい、店舗は増え続けて4800店
日本DIY・ホームセンター協会によると、日本で初めて本格的なホームセンターが誕生したのは、1972年のことです。大きな道路沿いに広い駐車場をもったホームセンターは、急速に増えていきました。物質的に満たされてきたことから、心と時間の余裕が生まれ、自分でつくる新しい生活文化が生まれたためです。しかし、21世紀に入ってその伸びはほぼ止まりました。ホームセンター業界全体の売上高は、2003年ごろから4兆円弱で横ばいとなっています。一方で店舗数は増えつづけ、2019年度末で約4800店になっています。
(写真は、島忠が展開しているホームセンター「島忠ホームズ」=2020年10月21日、さいたま市南区)
トップのカインズと2位のDCMは僅差
2019年度の売上高トップは、「カインズホーム」を展開するカインズで約4400億円。「ホーマック」や「カーマ」などを展開するDCMは僅差で2位となっています。3位以下はコーナン商事、コメリ、ナフコ、LIXILビバ、島忠、アレンザHD、ジョイフル本田、ケーヨーと続いています。DCMは島忠を買収すれば、2位を大きく引き離すトップになります。
(写真は、売上高トップのカインズの店舗=2019年12月、栃木県栃木市)
再編で地域的な強弱を補完
ホームセンター業界の各社は地域的な強弱があります。DCMは中部、四国、北海道を中心にシェアが高く、島忠は首都圏を中心に店舗展開しています。一緒になれば、互いの空白地を補い合えることになります。こうした地域的な補完関係は、ほかの各社でも考えられ、再編を促す刺激になるものとみられます。
(写真は、ホームセンター業界再編に割って入ったニトリの店舗=2014年、大分県別府市)
ホームセンターの再編はこれから
小売業界は再編が続いています。ホームセンター業界以外でも、百貨店業界やスーパーマーケット業界はいち早く再編を終えています。コンビニエンスストア業界は大手3社にかなり集約され、再編は一段落しています。ドラッグストア業界はまだ再編の渦中にあり、業界の順位がひんぱんに変動しています。ホームセンター業界の再編はこれから本格化するとみられます。日本の人口が減り始めた中、減る消費を奪い合うためには、再編して大きくなるしかないという判断です。ホームセンター業界に関心のある人は、業界地図はまだまだ塗り替わりそうだと思っていてください。
(DCMホールディングスによる島忠の完全子会社化を発表した記者会見後、ポーズをとるDCMホールディングスの石黒靖規社長〈右〉と島忠の岡野恭明社長=2020年10月2日、東京都内)
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