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2024年01月19日

主戦場を国内から海外にシフトさせるコンビニ業界【業界研究ニュース】

流通

 コンビニエンスストアが日本にできて、今年で50年になります(本格的なフランチャイズシステムによるコンビニ)。いつでも開いている店として、今やわたしたちの生活になくてはならない存在になっています。年明けに能登地方を襲った大地震ではコンビニも被害を受けましたが、再開したコンビニは被災者の生活を懸命に支えています。

 この50年でコンビニの国内売上高は食品スーパーに迫る11兆円余に増え、国内の店舗数も約6万店となり、全国どこへ行っても見かけることができます。機能も生活用品の販売だけでなく、荷物などの受け渡し、お金の引き出し、住民票といった公的書類の交付などに広がっています。目下の悩みは、人口減少により国内市場が飽和していることです。このため、コンビニ大手は主戦場を国内から海外に移す動きを鮮明にしており、中でもアジア・オセアニア地域での出店を急いでいます。
(写真・業界最大手であるセブン・イレブンの店舗。写真はすべて朝日新聞社)

国内店舗数は5万6千店で頭打ちに

 日本フランチャイズチェーン協会によると、2022年のコンビニの国内売上高は11兆1775億円でした。同時期の食品スーパーの売上高約11兆8千億円に迫る額になっています。同時期のドラッグストアの売上高約8兆7千億円や百貨店の売上高約5兆1千億円を大きく上回っています。ただ、コンビニの売上高はコロナ前の2019年度の売上高と同水準で、伸びは鈍っています。これは国内の店舗数が頭打ちになっているためです。2020年以降、約5万6千店舗前後で推移しています。日本全国で出店すべきところには出店し終えたことを示しています。今後は人口減少に伴い閉店するところが増える可能性があり、国内店舗数は頭打ちから減少傾向になるという見方もあります。

セブン、ファミマ、ローソンが大手3社

 日本フランチャイズチェーン協会に加盟する主要7社が日本のコンビニの大半を占めています。セブン‐イレブンファミリーマートローソンミニストップデイリーヤマザキセイコーマートポプラの7社です。業界トップは、セブン&アイホールディングス傘下のセブン‐イレブンです。50年前、東京・豊洲に日本初の本格的なフランチャイズシステムによるコンビニとして1号店をオープン。以降全国に出店を続け、2023年12月末時点で国内に2万1488店を抱え、チェーン全店の売上高は約5兆1千億円(2023年2月期)にのぼります。2位はファミリーマートで、2023年12月末時点で1万6370店を抱え、チェーン全店の売上高は約2兆9千億円(2023年2月期)です。3位はローソンで、2023年2月現在で1万4631店を抱え、チェーン全店の売上高は約2兆5千億円(2023年2月期)です。ここまでが大手3社で、ミニストップは国内に1856店(2023年12月末)、デイリーヤマザキは1349店(2022年12月末)、セイコーマートは1187店(2023年12月末)、ポプラは262店(2023年2月)あります。

(図は2023年10月末現在)

ファミマは伊藤忠、ローソンは三菱商事

 コンビニは、ここ10年ほど統合再編を進めてきました。ファミリーマートは伊藤忠商事が大株主で、サークルK、サンクス、am/pmを吸収し、店舗数を増やしてきました。ローソンの大株主は三菱商事で、三菱商事の連結子会社になっています。ミニストップは大手流通グループイオンの傘下の会社です。デイリーヤマザキは、山崎製パンの事業として展開しています。セイコーマートは、ほとんどが北海道内の店舗で、セコマグループのコンビニです。ポプラはローソンと業務提携しています。

経済が発展するアジアを主戦場に

 コンビニは海外展開を進めています。セブン‐イレブンは2023年9月末時点で日本以外に19の国と地域で、約6万店を展開しています。そのうち5万店近くがアジア・オセアニアで、この地域の出店をさらに進めることにしています。ファミリーマートは2023年12月現在、海外に7764店を展開。ローソンは2023年2月末時点で海外に6160店を展開しています。各社ともこれまではタイ、韓国、中国などへの出店が盛んでしたが、インドネシア、ベトナム、フィリピンなどの経済成長が著しく、東南アジアの多くの国がコンビニを利用するレベルの経済力をつけるようになっています。こうしたことから、これからは海外を主戦場とみて、海外への出店に一段と力を入れようとしています。

(写真・2022年9月、中国南部・広州で初めてオープンしたローソン)

無人コンビニが稼働中

 国内向けには、無人化や多角化、あるいは配送回数を減らすための取り組みなどに力を入れています。無人化はオフィスビル内の店舗などで実験的におこなわれてきていますが、広島県の道の駅では、顔認証カメラを活用して入店し、セルフレジで会計する無人コンビニができています。また、ローソンはAIを活用して値引きをおこなうシステムを2024年度中に全国展開する計画を持っていたり、ローソンでしか買えない無印良品を発売しようとしたりしています。さらに、トラック運転手の不足が心配される2024年問題に対処するため、おにぎりを冷凍して販売する実験を始めることにもしています。

(写真・広島県の道の駅「西条 のん太の酒蔵」のコンビニコーナーに設置された顔認証システム。人間の顔を識別し、自動でドアが開く=2023年11月1日)

被災者の命綱にもなる役割も

 コンビニは地域ごとに集中的に出店する方式でやってきているため、地域ごとになじみの深いコンビニが違うことがあります。大地震に襲われた能登地方に出店しているのはファミリーマートがほとんどで、ファミリーマートはある意味被災者の命綱になっています。コンビニには物資供給の最前線で踏ん張るという役割があります。コンビニを展開する会社を志望する人は、海外展開に力を入れていることとともに国内での役割の大切さも覚えておきましょう。

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