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2023年08月24日

成長鈍化で再々編が動き出すか、ドラッグストア業界【業界研究ニュース】

流通

 ドラッグストア業界は、大手が中小を買収したり大手同士が経営統合したりする再編が進んできました。2021年にマツモトキヨシホールディングス(HD)とココカラファインが経営統合してマツキヨココカラ&カンパニーが誕生して以来、再編はいったん落ち着いた状況になっています。ところが、ここにきて香港の「物言う株主」が業界2位のツルハホールディングス(HD)の企業体質を強く批判する動きが出るなど、業界に再び波風が立ち始めています。

ドラッグストアはその名の通り薬局からスタートし、売るものを化粧品、日用品、食品、酒類にまで広げ、成長してきました。しかし、訪日外国人の爆買いがなくなったこと、薬剤師が不足していること、スーパーなどの他業態との競争が激しくなっていることなどによって、最近は成長が鈍っています。そうなると、規模の利益を目指して再々編が動き出すのではないかという見方が出るようになっています。ドラッグストア業界の動きに目が離せなくなっています。

(写真・ツルハホールディングスが展開するツルハドラッグの店舗=札幌市東区)

スーパー、コンビニより少なく、百貨店より多い

 日本チェーンドラッグストア協会の「2022年度版 日本のドラッグストア実態調査」によると、日本には2万2084店のドラッグストア(前年比359店増)があります。また経済産業省「商業動態統計」によれば総売上高は7兆7087億円です。小売り業態の中でもっとも売上高の大きいのはスーパーマーケットで2022年は15兆1533億円、次いでコンビニエンスストアで2022年の売上高は12兆1996億円になります。ドラッグストアはスーパーやコンビニより売り上げが少ないのですが、百貨店の2022年度の売上高は5兆5070億円で、それよりは多くなっています(いずれも数字は「商業動態統計」から)。

イオングループのウエルシアがトップ

 ドラッグストアでもっとも売上高が大きいのは、イオングループに入っているウエルシアHD。次いで、北海道に本社を置き、イオンと業務資本提携をしているツルハHDです。3位は店舗数の多いマツキヨココカラ&カンパニー、4位は福岡市に本社があり、九州を中心に展開するコスモス薬品、5位はディスカウント店も多数抱えているサンドラッグ、6位愛知県に本社があり、中部、関西、関東で展開するスギHD です。次いで7位に横浜市が本社で神奈川県を中心に展開するクリエイトSDHD 、8位に石川県に本社があり、北陸や東北に強いクスリのアオキ HDです(2023年8月現在の最新通期決算から)。

医薬品で稼ぎ、食品や日用品で安値攻勢

 一時期は好調に伸びていたドラッグストア業界ですが、現在は岐路に立っているとも言われています。原因のひとつは、コロナ禍でかつて薬や化粧品や日用品を爆買いしていた訪日外国人の需要が激減したことです。ただ、2023年になって訪日外国人の数は回復しているため、需要も回復傾向にあります。もうひとつは、競争の激化です。もともとドラッグストアは、もうけが出やすい医薬品や化粧品で稼ぎ、それをもとに食品や日用品を安売りして、総合スーパーやコンビニなどの客を奪うことに成功してきました。しかし、ドラッグストアの出店競争が続き、ドラッグストア同士の客の奪い合いが激しくなっています。加えて、薬剤師不足もあります。医薬品を売るためには薬剤師が常駐している必要がありますが、薬剤師の資格を持っていても薬剤師として働いている人は一部で、慢性的な薬剤師不足になっています。このことが新規出店にブレーキがかかる要因になっています。

(写真・2015年、ドラッグストアで買い物をする中国人観光客ら=大阪市中央区)

コンビニのように3、4社に集約される

 「物言う株主」としてツルハHDの大株主となっている香港の投資ファンドは「創業家支配による不適切な企業統治体制が続いている」と批判しています。これは、創業家出身者が会長、社長を含め4人も経営陣にいることを指しています。ドラッグストアは小さな薬局から成長してきた会社がほとんどで、創業家支配はめずらしくありません。この投資ファンドはクスリのアオキHDの株式も保有しています。今後投資家からは、古い体質からの脱却や規模の利益の追求を迫られる可能性があります。投資ファンドの責任者は「業界はコンビニのように3,4社に集約される」とみています。アメリカのドラッグストア市場は2社がほぼ押さえている状況で、日本も集約されるのは必然という見方です。

(クスリのアオキの店舗=長野市)

まだまだ変化が起こりそうな業界

 ドラッグストアは医薬品販売を中心にしながらも、取扱商品をどんどん広げてきました。そのため、スーパーやコンビニとの垣根が低くなっています。すでにイオンの傘下に入っているドラッグストアがあるように、今後はスーパーやコンビニとの連携も考えられます。また、アメリカではアマゾン・ドット・コムが処方薬の宅配にまで乗り出していることを考えると、ドラッグストアもデジタル化への対応が課題になってきそうです。まだまだ変化が起こりそうな業界ですので、小売業に関心のある人は、ドラッグストア業界にも関心を持ってみてはどうでしょうか。

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