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2018年04月25日

武田薬品が最大の買収へ 複雑な業界の構造知ろう!

医薬品・医療機器・医療機関

 武田薬品工業がアイルランドの製薬大手シャイアーを買収する動きを見せています。実現すると、過去の日本企業の買収としては最大の7兆円近い買い物になると見られています。製薬業界は世界的な大型再編が進んでいます。世界の市場の伸びが鈍いにもかかわらず新薬の開発費用は増える一方で、規模を大きくして開発費用や新薬候補を獲得しようとしています。ただ、製薬業界にはこうした世界で勝負するグローバル企業がある一方、後発医薬品(ジェネリック)や薬局で売られる一般用医薬品中心の規模の大きくない企業もたくさんあり、これらの企業は国内向けに得意分野で独自の戦いを進めています。ひと口に製薬会社といっても、目指す方向性や社風に大きな違いがあります。とてもやりがいのある業界ですが、複雑なところのある業界ですので、しっかり研究することが大事だと思います。

(写真は、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長)

再編によって年々減る

 製薬業界は大きく分けて、病院で処方される薬を作っている医療用医薬品会社と薬局などで売られている薬を作っている一般用医薬品会社があります。医療用医薬品にも二つあって、新薬を作る先発医薬品会社と特許が切れた医薬品を作る後発医薬品(ジェネリック)会社があります。規模の大きな製薬メーカーは先発医薬品を中心に作っているメーカーがほとんどです。日本の製薬会社は20年前には1000社以上ありましたが、再編によって年々減って今は300社余りになっています。武田薬品工業、アステラス製薬、大塚ホールディングス、第一三共、エーザイが売り上げの上位5社で、この5社で業界全体の40%程度のシェアを持っています。製薬業界の社員数は約17万人で、そのうち研究開発に従事している社員が3万人と他業界と比べて多いところが特徴です。

(写真は、最新鋭の設備を導入した後発薬の沢井製薬の工場)

国内市場は頭打ち

 製薬業界の国内市場は約10兆円です。高齢化社会に伴って規模は大きくなってきましたが、そろそろ天井に来ています。政府は医療費の増大を止めようと、薬価を引き下げています。また、値段の安いジェネリック医薬品を使うよう医療機関などに要請しています。こうしたことから、販売量は増えていても総額は頭打ちになっています。規模の大きい製薬会社が海外進出を急いだり、海外企業の大型買収を進めたりしているのはそのためです。最近の日本メーカーによる企業の合併・買収は年間100件前後に増えています。世界全体の市場規模は約120兆円と大きく、毎年少しずつ伸びています。ただ、日本メーカーの世界での存在感は大きくなく、日本で最も売上高の大きい武田薬品工業が世界でやっと17位にいます。

ハイリスク・ハイリターン

 新薬を作る製薬企業はハイリスク・ハイリターン型の業態です。画期的な新薬を開発すると年間1000億円規模の売り上げとなることもあり、特許が切れるまでの20年間、経営は安泰と言われます。そのかわり開発には10年以上かかるのが一般的で、開発費用は数百億円に上ることも珍しくありません。ただこれだけの歳月とお金をかけてもうまくいかないこともあるわけで、ギャンブル的な側面があるというわけです。

(写真は、基礎研究に取り組むアステラス製薬の研究員=同社提供)

外資系メーカーも50社近く

 国内の製薬業界には、業界のグローバル化を反映して外資系メーカーもたくさんあります。国内で300余ある製薬会社のうち50社近くが外資系です。武田のような日本資本の会社でも今の社長はフランス人で、外資系メーカーの社風に近くなっているといわれます。英語がよく使われたり、人間関係がドライであったり、働きに応じて報酬に大きな差があったりする欧米型の会社が少なくないことも知っておきましょう。

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