2023年05月12日

「G7広島サミット」の焦点は? 関心あるテーマ見つけ考え深めて【イチ押しニュース】

テーマ:国際

 G7サミット(主要7カ国首脳会議)が19~21日、広島で開かれます。自由や民主主義、人権といった基本的価値を共有する7カ国の首脳が議論する重要会議で、日本での開催は2016年の伊勢志摩サミット以来で7回目。ロシアのウクライナ侵略への対応が最大のテーマですが、軍事力を強化して覇権を強める中国への対応、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国との連携強化、エネルギー・食料安全保障、気候変動、ジェンダー平等人工知能(AI)への対応など、議題は目白押しです。被爆地・広島が舞台だけに、岸田文雄首相がライフワークに掲げる「核兵器のない世界」へ向けてどんなメッセージを発信できるのかも注目です。開催を前に、そもそもサミットって何なのかをおさらいし、今回の焦点をわかりやすく解説します。(編集長・木之本敬介)

(写真・各国首脳の訪問が予想される平和記念公園で警戒する警察官=2023年5月10日、広島市中区)

そもそもサミットって?

 G7は「Group of Seven」の略で、フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7カ国(議長国順)と欧州連合(EU)で構成されます。サミットの元の意味は「山の頂上」で、「G7サミット」とは、7カ国のトップが集まる「首脳会合」のことです。毎年開かれ、メンバー以外の国や国際機関が招待されることもあります。成果は「共同声明」などの文書にまとめられ、国際社会にアピールします。議長国は1年交代で務め、自国でサミット(首脳会議)のほか、外務や財務、教育、交通など分野ごとに閣僚が集まる関係閣僚会合を開き、議論をリードします。今回は日本の順番です。

 初のサミットは1975年にフランス・パリ郊外のランブイエ城で開かれました。参加国はフランス、米国、英国、西ドイツ(当時)、日本、イタリアの6カ国。1973年の第1次石油危機での世界経済の混乱を受け、協調して対応するために話し合いました。第2回からカナダ、第3回からはEUの前身である欧州共同体(EC)が加わりました。当初は経済問題が中心でしたが、1979年の旧ソ連によるアフガニスタン侵攻を機に政治問題も話し合われるようになりました。冷戦終結後は ロシアも参加するようになり、1998年からは「G8サミット」と呼ばれるようになりました。しかし、2014年にロシアがウクライナ領のクリミア半島を一方的に併合してからはG7に戻りました。

「グローバルサウス」との連携重視

 サミットの議題は、そのときどきの国際情勢によって決まります。1970年代はエネルギー問題、80年代は東西対立、90年代はグローバル化、2000年代に入ると世界経済や気候変動、地域情勢などが議論されてきました。

 今回の最大のテーマは、ウクライナ戦争や中国の覇権主義的な動きへの対応です。4月に長野県軽井沢町で開かれたG7外相会合では、対ロシア経済制裁とウクライナ支援の継続や「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」の維持・強化で一致。ただ、世界にはウクライナ戦争を機に食料・エネルギー危機に見舞われている新興国・途上国が多く、この価値観を広く共有できるかが大きな課題です。「グローバルサウス」との連携を重視する岸田首相が連休中にアフリカ4カ国を訪問したのもそのためです。

「グローバルサウス」ってなんだ? G7広島サミットでも焦点【時事まとめ】はこちら

核保有国首脳ら原爆資料館で何語る?

 核軍縮・不拡散も重要テーマです。ロシアのプーチン大統領はウクライナ戦争で核兵器使用をちらつかせ、隣国ベラルーシへの核配備計画を表明しました。中国や北朝鮮も核戦力を増強する中、地元・広島を開催地に選んだ岸田首相のリーダーシップが問われます。G7首脳らは、原爆の悲惨さを伝える広島平和記念資料館(原爆資料館)を訪問する予定です。修学旅行などで訪れたことがある人も多いと思います。現職の米大統領として2016年に初めて広島を訪れたバラク・オバマ氏は「私たちは戦争の苦しみを経験した。共に、平和を広め核兵器のない世界を追求する勇気を持とう」と資料館の芳名録(ほうめいろく)に記しました。米英仏の核兵器保有国を含む首脳たちがどんな言葉を残すのかにも注目してください。

 G7サミットでは途上国首脳や国際機関トップを招いての拡大会合も開かれます。今回は、核保有国のインドのほか、インドネシア、オーストラリア、韓国、クック諸島コモロ、ブラジル、ベトナムの8カ国が参加し、エネルギー・食料安全保障などについて協議します。さらに、ウクライナのゼレンスキー大統領もオンラインで参加するとみられています。

G7でLGBTQ差別禁止規定ないのは日本だけ

 テーマの一つに挙げられる「ジェンダー平等」については、日本国内の対応が焦点です。日本はG7で唯一、同性カップルに国として法的な権利を与えず、LGBTQに関する差別禁止規定や法律がないためです。昨年、ドイツで開かれたサミットでは、共同声明で性的マイノリティーの人権問題や当事者の権利擁護を盛り込みましたが、日本ではその後、法整備、当事者支援とも具体化していません。せめて、理解を広めるための「LGBT理解増進法案」を広島サミットまでに成立させられるかが注目されてきました。

 法案に反対論が根強い自民党は、反発する保守派議員らに配慮して文言を修正した案を調整していて、党執行部はサミット前に国会に提出する意向です。しかし、超党派でまとめた法案を自民の都合で修正し、与党案として進めることには野党から反発の声もあり、サミット前の成立は微妙な情勢。いずれにせよ、議長国・日本のLGBTQでの遅れぶりが世界にあらわになるサミットになりそうです。

 G7サミットは、多様な国際問題について考えるチャンスです。これからたくさんの関連ニュースがみなさんの目に触れるはずです。関心のあるテーマについてどんな議論が行われ、共同声明などにどう盛り込まれるのか、自分なりの見方でニュースに接して考えを深めてください。

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