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2023年04月19日

国際

「グローバルサウス」ってなんだ? G7広島サミットでも焦点【時事まとめ】

日米欧にも中ロにもくみしない新興国・途上国

 「グローバルサウス」という言葉を国際ニュースでよく目にするようになりました。アジア、アフリカ、中南米などの新興国発展途上国の総称で、主に北半球の先進国に対し、南半球の国が多いことからこう呼ばれます。日米欧の西側と、ロシア・中国の対立が深まる中で、そのどちらにもくみせずバランスを重視する国々です。政治体制も経済の発展度合いも様々で特定のグループをつくっているわけではありませんが、百数十カ国あるグローバルサウスは国際情勢を左右する存在として注目されているのです。5月に開かれる主要7カ国(G7)広島サミットでも、グローバルサウスとの連携は最重要テーマのひとつです。今の国際情勢を読み解くのに欠かせないグローバルサウスの「基本のき」を、やさしく解説します。(編集長・木之本敬介)

(写真・G7外相会合でインド太平洋情勢について議論をする外相ら=4月17日、長野県軽井沢町、外務省提供)

世界は「西側90国、中間60国、中ロ側40国」に分断

 広島サミットに向け、4月18日まで長野県軽井沢町で開かれたG7外相会合の共同声明では、世界のいかなる場所においても力や威圧による一方的な現状変更に反対すると表明。主権や領土の尊重という原則が全ての国にとって「利益」になると強調しました。グローバルサウスを念頭に「全ての意思あるパートナーと共に取り組む用意がある」とも呼びかけました。「共に取り組む」姿勢を強調するのは「西側の価値観を押しつければ、グローバルサウスは後ずさりする」(外務省幹部)との認識があるからです。この幹部は、世界の国々の数がおおむね「西側90、中間60、中ロ側40という状況」に分かれてしまっていると指摘しました。この「中間」との連携を強めて西側に引き寄せるかが重要だというわけです。岸田文雄首相が大型連休中にエジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークのアフリカ4カ国を訪問するのも、サミットを前にグローバルサウスとの連携強化が目的です。

 グローバルサウスには民主主義の国も専制主義の国もあり政治体制は多様ですが、その指導者たちにとって最も大事なのは自分の国の政治的な安定です。ロシアによるウクライナ侵攻は主権国家への侵略ですから支持する国はほとんどなく、2022年10月の国連総会では、ロシアによるウクライナ4州併合への非難決議が143カ国の賛成で採択されました(棄権35カ国、無投票10カ国)。一方で軍事面や経済面でロシアや中国との関係が深い国が多くあります。ロシアに対する経済制裁に参加している国が少数なのは、このためです。

経済成長し存在感増す

 グローバルサウスに明確な定義はありません。世界の経済格差などの「南北問題」の「南」にあたり、東西冷戦時代に双方と距離を置いた国々を指した「第三世界」とも重なります。冷戦時代と異なるのは、多くの国が経済成長して、存在感が圧倒的に大きくなっていること。ウクライナ戦争が始まってから盛んに使われるようになりました。

 かつてG7のGDP(国内総生産)の合計は7割近くを占め、その影響力は絶大でした。しかし、21世紀に入ると、BRICS=ブリックス(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国の頭文字)と呼ばれる新興国が急成長し、G7だけで何かを決めても世界経済を動かせなくなり、2008年のリーマン・ショックを機に先進国と新興国によるG20首脳会議が開かれるようになりました。世界に占める割合では、G7は人口で1割、GDPで4割強に落ちましたが、G20は人口で7割弱、GDPでは8割を占めます。

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カギ握るのは「代弁者」自称するインド

 グローバルサウスの中でカギを握るとみられているのがインドです。「新興国・途上国の代弁者」を自称するモディ首相は今年1月、「グローバルサウスの声サミット」をオンラインで開き125カ国が参加しました。モディ氏は、戦争や地政学的な対立、食料・燃料価格の高騰などを挙げて、「世界は危機のさなかにある」と演説し、途上国の状況や意見を協力して発信していく重要性を訴えました。

 もちろん日本もインドを重視しています。岸田氏は3月にインドを訪問し、日本の外交方針「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP=Free and Open Indo-Pacific)実現に向けた新たな計画を発表。ロシアや中国を念頭に「平和の原則と繁栄のルール」など四つの柱を掲げました。モディ氏との首脳会談でも「力による一方的な現状変更は、アジアを含む世界中のいかなる場所でも許してはならない」と述べ、「法の支配」に基づく国際秩序の維持・強化で一致しました。ただ、インドは旧ソ連時代からロシアと良好な関係にあり、今でも主要兵器の半分近くをロシアに頼っています。ロシア非難の国連決議は棄権。制裁には加わらず、ウクライナ戦争後、ロシア産石油の輸入を10倍に増やすなど、したたかな国です。

 ロシア、中国も参加するG20は、今年は9月にインドで開かれます。モディ氏は3月の岸田氏との会談後の共同記者発表で「G20議長国として重要な柱の一つは、グローバルサウスの優先事項について声をあげることだ」と話しました。岸田氏はモディ氏を広島サミットに招待します。G7でもG20でも、インドを中心とするグローバルサウスが「陰の主役」となりそうです。今後のニュースに注目してください。

(写真・2022年9月27日、東京・元赤坂の迎賓館で握手する岸田首相〈右〉とインドのモディ首相=代表撮影)

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