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2022年03月30日

経済

「悪い円安」が進む? 今さら聞けない!円安のキホンのキ【時事まとめ】

6年7カ月ぶり「1ドル=125円台」

 円安が急激に進み、日本の経済への悪影響が心配されています。3月28日には6年7カ月ぶりに「1ドル=125円台」に急落しました。円安になると輸出企業は利益が大きくなりますが、輸入品が高くなるため食品やエネルギーの値上げが相次ぎ、私たちの生活を直撃しています。日本は長年、原料を輸入して自動車などの製品を輸出してもうける企業が多かったため、円安は日本の経済にとって良いこととされてきましたが、グローバル化で工場の海外進出が進み、円安効果は昔ほどではありません。今回は、賃金が上がらないまま物価が上がる「悪い円安」との指摘も出ています。鈴木俊一財務相は「悪い円安にならぬよう政府として注視したい」と語りました。そもそも、円安ってどういうことだか説明できますか。今の円安にはいろんな要因が絡んでいますが、基本的なところを押さえて、自分の志望企業にどんな影響があるのか、語れるようにしておきましょう。(編集長・木之本敬介)

(写真は、大規模な金融緩和の維持を決めた金融政策決定会合後、記者会見する日銀の黒田東彦総裁=3月18日、代表撮影)

3月になって急落

 まずは「1ドル=○○円」などで表す円相場についておさらいです。海外旅行に行ったことのある人は、空港やホテルの両替所で円を現地の通貨に両替したことがあると思います。企業も、貿易などで海外と取引するには海外の通貨が必要です。このため、世界の通貨を売り買いする外国為替市場があり、主に電話やインターネットで取引されています。ロンドン、ニューヨーク、東京が3大市場と呼ばれます。為替相場は二つの通貨の力関係で決まり、世界中で取引が行われているため刻々と変化します。円を他の通貨と交換するときの比率を「円相場」といい、国際間でもっとも広く使われている米国の「ドル」との「対ドル円相場」が代表的です。何かの理由で円を買いたい人が多ければ「円高」に、売りたい人が多ければ「円安」になります。

 たとえば「1ドル=110円」から「1ドル=120円」に変わったとします。1ドルを手に入れるのにより多くの円を出さなければならなくなったので「円安」ですね。円の価値が下がったことになります。逆に「1ドル=100円」になれば「円高」です。グラフを見ると、この数年は1ドル105~115円前後で推移してきましたが、今年3月になって急落したことが分かります。なお、戦後最高の円高は2011年10月の1ドル=75円台でした。

揺らぐ「輸出立国」

 次に日本の企業への影響です。乗用車1台を米国に輸出して1万ドルで売るケースを考えます。「1ドル=100円」なら売り上げは100万円ですね。円安になって「1ドル=120円」になれば売り上げは120万円に増え、円高で「1ドル=80円」になると80万円に減ってしまいます。輸出で稼ぐ企業は、円安になるともうけが増えて円高になると減るわけです。トヨタ自動車の場合、1円円安になると本業のもうけを示す営業利益が年400億円増えるそうです。

 輸入企業はどうでしょう。「1ドル=100円」のときに米国産ワインを輸入して1本1万円で売っていた業者は、「1ドル=120円」の円安になると1万2000円に値上げしないと同じくらいの利益を得られません。値上げすれば売り上げが落ち、据え置いてももうけが減るので、業績は悪化します。輸入ビジネスの企業は円高になると利益が増え、円安になると減る仕組みです。

 日本は長く、原料を輸入して工業製品を輸出して稼ぐ「輸出立国」だったため、円高になると景気が悪くなり、円安になると良くなる傾向がありました。しかし近年は、海外に進出して現地で生産する会社が増えたため、円安になっても以前ほど輸出が伸びなくなってきました。実際、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支はロシアのウクライナ侵攻前の今年1月時点でも2兆円超の赤字で、過去2番目の大きさでした。原油など資源価格の高騰が主な要因で、赤字は6カ月連続です。これに追い打ちをかけるのが今回の「円安」です。

米国の利上げで円安に

 円相場は、日本や世界の経済状況だけでなく、国際政治など様々な要因で変動します。円は世界の通貨の中で比較的「安全資産」と評価され、これまでは世界情勢が不安定になったり、経済が悪くなったりすると円高になる傾向がありました。ところが今回はウクライナ侵攻で世界が揺らぐ中で一気に円安になりました。

 最大の要因は、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が、コロナ危機を受け2020年3月に始めた「ゼロ金利政策」を終えて金利を上げると決めたことです。コロナが落ち着いてきて景気が急に良くなる一方、コロナ禍でモノや人の流れが滞って部品の供給不足や人手不足が続き、米国は約40年ぶりの物価高になっています。さらにウクライナ侵攻によるエネルギーや食料の値上がりも加わりました。このインフレを抑え込むため、FRBは金融緩和から引き締めへと政策を転換。0.25%幅の利上げを決め、来年にかけてさらに利上げする見通しです。

動かぬ「物価の番人」

 これに対し日本銀行は「ゼロ金利」を変えない方針のため、運用益が高いドルを買って円を売る動きが加速し、円安ドル高が一気に進みました。日本でも、企業間で取引されるモノの価格は記録的な伸びで、消費者が手にする食品や日用品の値段も上がり始めています。物価が上がると、「物価の番人」と呼ばれる中央銀行は、金利を上げて世の中に出回るお金を減らす「金融引き締め」をするのが常道です。しかし、日銀は欧米とは逆に、世の中に出回るお金を増やす現在の大規模な金融緩和を続けることを決めました。

 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は3月18日の記者会見で「円安が経済にプラスに作用しているという構図に変わりはない」と語り、物価上昇の質が欧米と違うことを理由にあげました。今の物価上昇は「原油や食料品など輸入価格の影響による一時的なもの」との見方を示し、賃金の上昇とセットで物価も上がっている米国とは状況が大きく異なると説明。むしろ「持続的で安定的な物価上昇をめざして、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当だ」と強調しました。

 日本では、約9年も大規模緩和を続けているのに賃上げは進まず、今の物価高を放置すれば消費が落ち込んで景気がさらに悪くなる可能性があります。「景気が悪くて賃金が上がらないのに物価だけが上がるというスタグフレーションと言える状態に陥る可能性が高い」(第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミスト)との指摘も出ています。日本だけが緩和を続ければ、米国との金利差が広がって円安がもっと進み、さらに物価が上がる悪循環に陥るおそれもありますが、日銀は利上げしたくてもできないジレンマを抱えているわけです。

 「悪い円安」による「悪い物価高」が起きないか、注視してください。円安は、輸出中心の会社か、輸入中心の会社かによって全く異なる影響を受けます。志望企業の影響を調べてみましょう。

(写真は、日銀本店=、東京都中央区)

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