2022年03月18日

ロシア制裁、日本企業の影響・対応まとめ 面接の「逆質問」にも【イチ押しニュース】

テーマ:経済

 ロシアによるウクライナ侵攻は、日本の経済、企業に大きな影響を与えています。対ロシア経済制裁で事業ができなくなるケースも多いのですが、あまりに非道な侵略に対して人道的な立場から「企業の社会的責任」としてビジネスを停止する企業が相次いでいます。直接ロシアと取引している企業だけではありません。航空機がロシア上空を飛べなくなったことから物流コストが上昇。ロシアが大輸出国である原油や天然ガスなどの資源、小麦などの穀物の値段も急騰しています。物価高は私たちの日々の生活を直撃しますが、就活では「ビジネス目線」が大切です。エネルギーや物流と無縁の企業はありませんから、影響はあらゆる業界・企業に及んでいます。今年の就活戦線では、コロナ禍を経て企業の採用意欲が上向き、学生優位の「売り手市場」になったともいわれていますが、先行きは不透明です。志望する企業の影響や対応を押さえておきましょう。関心のある人は、こうした最新の企業ニュースを面接の「逆質問」で取り上げて、思いを伝えてみてください。(編集長・木之本敬介)

(写真は、開店を前に研修を積む丸亀製麺モスクワ1号店のロシア人スタッフたち=2013年、モスクワ)

ユニクロ50店舗休業

 「脱ロシア」の動きは、マクドナルドの店舗閉鎖が話題になるなど欧米企業が先行しました。日本企業は当初、部品調達や物流の支障といった理由が多かったのですが、ロシア軍の攻撃が都市を標的にし始め、住居、病院、学校などで子どもを含む民間人の死傷者が増えるにつれ、姿勢が変化してきました。最近の朝日新聞の記事から、日本企業の対応をまとめます。

●「ユニクロ」のファーストリテイリング=ロシア国内の50店舗の営業、オンラインストアでの販売を停止すると発表。当初は「日常着の提供が使命」として営業を続ける姿勢だったが、批判が集まり「あらゆる戦争に強く反対する。人々の人権を侵害し、平穏な生活を脅かすいかなる攻撃をも非難する」との声明を公表した。
任天堂=「ニンテンドースイッチ」など全製品を当面、ロシアに出荷しない方針を発表。ダウンロード版ソフトなどが買えるロシア向けサイトも通貨ルーブルでの決済ができないことを理由に停止した。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント=ロシアへの「プレイステーション」シリーズなどの出荷停止を公表。ロシア向けオンラインストアの運営も止めた。
資生堂=化粧品などの出荷や現地での広告宣伝、事業投資停止を決定。現地従業員の雇用と報酬を一定期間保証することも決めた。
●「丸亀製麺」のトリドールホールディングス=モスクワ市内の全7店舗を休業。
セイコーエプソン=ロシアとベラルーシへのプリンターやプロジェクターの輸出の原則停止を公表。

 日米欧の企業のこうした動きに対し、ロシアのプーチン大統領は撤退する企業には「断固とした対応をする」と述べ、工場や資産をロシアのものにすると脅しています。

ANAは南回り、JALは北回りで迂回

 日本からロシアへは自動車部品やパルプなどが、ロシアから日本へはプラスチック製品や木材などがコンテナ船で運ばれてきましたが、制裁の影響でロシアに向かえなくなりました。極東ウラジオストクからポーランドなどに欧州向けの自動車部品コンテナを運ぶシベリア鉄道の貨物輸送もほとんどがキャンセル。混乱はロシアをまたいだ日欧間の航空貨物にも広がっています。

トヨタ自動車日産自動車サンクトペテルブルクの工場の稼働を停止。日本や欧州からロシアへの完成車輸出も全面ストップ。
マツダ=自動車部品のロシアへの新規輸出を停止。
日本郵船川崎汽船商船三井共同出資するコンテナ船事業会社=現地発着の貨物の引き受けを停止。
全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)=ロシア領空経由で日本と欧州を結ぶ貨物便を取りやめ。ANAは南回りの中央アジア上空を、JALは北回りのアラスカ上空をそれぞれ迂回(うかい)しているが、距離が長くなる分、輸送効率は下がる。

サーモン、パン、麺、パスタも

 物流の停滞は食品流通・小売業、外食産業を直撃しています。回転ずしなどで人気のノルウェー産の生サーモンは8割ほどがロシア領空を飛ぶ貨物便で運ばれてきましたが輸入が難しくなりました。イオンなど大手スーパー各社は新たな調達先や代替品などを探っています。他の水産物では、ロシア産の割合が輸入の61.8%を占めるカニ、同じく9.5%のサケ・マス類などで影響が出ています(数字は2020年版水産白書)。

 より広い業界に影響するのが小麦価格の急騰です。世界の輸出量の約3割をロシアとウクライナが占めるからです。日本への食用小麦の輸入はないのですが、国際的な価格上昇を受けて政府は輸入小麦を製粉業者などに売る価格を4月から引き上げ、過去2番目の高値に。輸入の大半を占める米国産やカナダ産の不作などでもともと値上がりしていたうえ、輸入品が高くなる円安も重なりました。小麦粉やパン、カップ麺やパスタなど幅広い食品に響きます。

(写真は、ノルウェー産生サーモンの欠品に備えた買い物客へのお知らせ=3月4日、東京都練馬区の鮮魚店)

天然ガス、原油

 大手総合商社による事業を継続するか撤退するか定まっていないのが、北海道の北側で行っている日ロ共同事業「サハリン2」です。日本へのLNG(液化天然ガス)の輸出拠点で、三井物産が12.5%、三菱商事が10%出資しています。サハリン2で生産するLNGの約6割は日本向けとされ、東京電力中部電力が出資する火力発電会社JERAのほか、東京ガス大阪ガスなどが調達。広島ガスでは調達量の約5割を占めます。供給が止まれば電気代やガス代のさらなる値上がりにつながりかねません。英国の石油大手シェル(旧ロイヤル・ダッチ・シェル)は撤退を決めましたが、日本企業が権益を手放しても中国がその分を引き受けるだけ、との指摘も。三井物産幹部は「エネルギー安全保障をどう考えるか政府と協議する」と言い、岸田文雄首相は「エネルギー安定供給上、我が国にとって重要だ」と当面続ける意向をにじませています。

(写真は、サハリン2プロジェクトのLNG輸出基地=サハリンエナジー社提供)

企業のウクライナ支援寄付も続々

 避難民らの支援に動く企業も多くあります。
●ファーストリテイリング=国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)への1000万ドル(約11.5億円)寄付を発表。「ヒートテック」の毛布や下着、店頭で回収した防寒着など約20万点も避難先へ届ける。
●南部オデッサに拠点を持つ楽天=寄付金を募り飲料水の確保などの活動に寄付。3月4日夕までに5.5億円超を集め、三木谷浩史会長兼社長も個人で10億円を寄付。
●ソニーグループ=UNHCRなどに計200万ドル(約2.3億円)、資生堂は計100万ユーロ(約1.3億円)、富士通も100万ドル(約1.15億円)の寄付を表明。
●衣料品通販サイト「ゾゾタウン」のZOZO=ウクライナ支援Tシャツを製作・販売し、売り上げの全てをNPO(非営利組織)に寄付する。3月4日夜までに約9万枚が売れ、寄付は1億8000万円超に。
●トヨタ=ウクライナ向けにUNHCRを通じ最大250万ユーロ(約3.2億円)を寄付すると発表。ポーランドなどの周辺国で仮住まいの提供や通訳支援といった活動を従業員に推奨するため年間40時間のボランティアを有給で認める。
●日産=ウクライナの子どもらに支援物資を届けたり、侵攻の影響を受ける従業員を支援したりするために250万ユーロを拠出。

(写真は、戦禍のウクライナから逃れポーランドとの国境を歩いて渡ってきた人たち=2022年2月27日、ポーランド南東部メディカ)

「逆質問」で

 こうした企業ニュースを、面接の最後によく聞かれる「逆質問」で取り上げてはみるのもアリです。各企業の影響や対応を調べて、共感したら質問してみるのです。きっとあなたの思いが伝わりますよ。

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