(写真・ビッグモーターの店舗=東京都内/写真はすべて朝日新聞社)
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(写真・ビッグモーターの店舗=東京都内/写真はすべて朝日新聞社)
昨年11月に投資の検討をはじめる
にっちもさっちもいかなくなっていたBMに救いの手をさしのべたのが、「5大商社」の一角である伊藤忠商事でした。昨年11月に子会社のエネルギー商社である「伊藤忠エネクス」、企業再生ファンドの「ジェイ・ウィル・パートナーズ」とともにBMのデューデリジェンス(投資先の価値やリスクの調査)をすると公表。一連の不祥事の根底にある企業風土をつくったBMの創業家が関わらないことを条件に検討を重ね、今年3月に事業買収を決めました。
伊藤忠は「シナジー効果がある」と判断
伊藤忠商事がすでに自動車関連の事業で実績をあげていることも、買収が決まった要因のひとつです。高級車のディーラー「ヤナセ」やイギリス最大手のタイヤ小売りの「クイックフィット」を傘下にもち、子会社の伊藤忠エネクスはガソリンスタンドやレンタカー事業も手がけています。伊藤忠の岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)は今年1月、報道陣の取材に「(BMは)中古車市場でナンバーワン。BMが入ることで、事業の強化につながり、シナジー(相乗効果)がある」と語っています。ウィーカーズの社長には伊藤忠で執行役員をつとめ、クイックフィットの立て直しにもかかわった田中慎二郎氏が就任しました。
(写真・会見を終え、ポーズを取る新会社ウィーカーズの田中慎二郎社長(中央)ら=2024年5月1日)
「マーケットイン」の発想にも合致
BM買収は、伊藤忠が重視している「『川下』起点」という発想とも親和性があります。
企業のつながりをあらわすために、「川上」「川下」という表現を総合商社などではよく使います。ものやサービスが消費者の手元に届くまでの流れを川にたとえ、原材料の生産や商品の製造を行うメーカーを「川上」、それを受け取る小売店などを「川下」と表現します。商社はこの川上と川下をつなぐ役割を果たしていますが、そのなかでも伊藤忠商事はコンビニ大手ファミリーマートを運営するなどより消費者寄り、「川下」に近い事業を多く手がけて強みとしてきました。消費者との接点のなかから市場の動きをとらえ、そこからビジネスを展開していく「マーケットイン」の発想を、伊藤忠商事は重視しています。新会社設立の会見に出席した伊藤忠の執行役員はウィーカーズ設立のメリットについて「我々は『川下』起点という考え方を持っており、『マーケットイン』の発想を持っていろんなところに広げていく」と説明しています。
企業風土を変えられるか注目
「ワンストップサービス」については、伊藤忠は子会社である伊藤忠エネクスのほか、 子会社が運営する保険代理店「ほけんの窓口」などと連携することで補う考えです。グループの社員50人以上を新会社に送り込み、再建を支援するといいます。
しかし、企業風土は一朝一夕では変わらないでしょう。新会社には「改革貫徹本部」が設置され、社員教育を強化し、不正の温床になった利益至上主義の人事評価を見直すとしています。田中新社長は「新会社においてはコンプライアンスに関してはうやむやにせずに厳正に対処し、(コンプライアンス違反は)撲滅 していきたい。組織風土の改革に終わりはない」と意気込みを語っています。「不祥事はやめましょう」と言うだけでは、人も会社も変わりません。これからどういう手を打っていくのか、注目したいところです。
(写真・ウィーカーズの田中慎二郎新社長=2024年5月1日)
投資先とのあつれきどう乗り越えるか
伊藤忠商事などの総合商社や金融会社などは、さまざまな事業分野でこういった投資を行い、場合によってはお金だけでなく社員も送り込んでビジネスを広げています。伊藤忠の場合、たとえばファミリーマートについては1998年に経営再建中の西友グループから株を買い取って実質的な経営権を握り、2020年には株式公開買い付け(TOB)で9割超の株を取得。現在の細見研介社長は伊藤忠商事の執行役員から転じています。BMは伊藤忠のデューデリジェンス開始を公表した昨年11月のプレスリリースで、自動車関連事業について伊藤忠は「ハンズオン経営の実績も有し」と評しています。ハンズオンとは、投資先の経営に直接、深く関わることを意味します。
当然、摩擦やあつれきは起こります。投資先の社員のモチベーションをどう高めるか、どうやって改革をすすめていくか、送り込まれる社員は日夜悩むことでしょう。経営知識や仕事への理解だけでなく、広い意味での人間力が問われる現場になるかもしれません。興味のある人はぜひ、商社や金融会社が行った企業の再生事案などを調べてみてください。
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