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2022年03月16日

メディア

ロシア国営TVで「NO WAR」訴え…暗黒社会から考える「言論の自由」【時事まとめ】

ロシア国営テレビで「戦争反対」

 ロシア国営テレビでニュースの生放送中にテレビ局の女性職員が「NO WAR(戦争反対)。プロパガンダを信じないで。ここではあなたにウソをついている」と書いた紙を掲げました。7秒ほどで別の映像に切り替わりましたが、厳しい言論統制下、しかも政府直轄の国営テレビでの勇気ある行動に世界から支援の声が広がっています。職員は警察に拘束され、無許可の集会を呼びかけたとして3万ルーブル(約3万3000円)の罰金の支払いを命じられました。ウクライナ侵攻後、ロシアのテレビ局は攻撃の様子は伝えず、北大西洋条約機構(NATO)がロシアへの圧力を強め、ウクライナ軍が同国東部の親ロシア派支配地域を攻撃している、といったニュースばかり流してきました。この職員はテレビに出る直前、インスタグラムにビデオを投稿し「ウクライナで起きていることは犯罪だ。この戦争の責任は(大統領の)プーチン氏にある」「クレムリン(大統領府)のプロパガンダに携わってきたことが恥ずかしい」「このばかげたことを止められるのは、私たちの力だけだ。集会に参加して」と呼びかけていました。何が起きているかを知ることすらできない「暗黒社会」に風穴を開けようとした行動を機に、「言論の自由」の意味と、SNS時代の新しい可能性を考えてみましょう。(編集長・木之本敬介)

(写真は、ロシア国営テレビで「戦争反対」を訴えたマリーナ・オフシャニコワさん〈右〉。関係者のSNSアカウントに投稿された。モスクワの裁判所の中だという=SNS「テレグラム」から)

記者に最長15年の禁錮刑

 プーチン大統領は就任した2000年以降、言論に対する締め付けを強めてきました。政権がテレビ局の経営を事実上支配し、放送から政権批判を一掃。リベラルなネットメディアは「外国の代理人」に指定されて閉鎖や存続の危機に陥り、政権に批判的な記者の殺害が相次ぎました。SNSで政権を批判したり、反政権デモへの参加を呼びかけたりした市民や活動家らは刑事訴追の対象になります。ウクライナ侵攻後はさらに圧力を強め、報道機関に「攻撃」「侵攻」などの表現の削除を命じ、独立系メディアは放送中止に追い込まれました。3月4日には、ロシア軍の活動について「フェイク(虚偽)」情報を報じた記者らに最長15年の禁錮刑を科す法律を施行。偽情報かどうかを判断するのは政府ですから、都合の悪い報道を封殺できます。国内メディアは政府の発表以外、報じることが難しくなり、朝日新聞を含む多くの外国メディアがロシアからの報道を中断しています。

 フェイスブックやインスタグラム、ツイッターといったSNSの通信は制限され、反戦集会やデモも厳しく弾圧。これまでに約1万5000人が拘束されました。

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米国でも…民主主義は意外にもろい

 報道機関や民主派市民に対する弾圧はロシアだけのことではありません。中国では2020年に施行された香港国家安全維持法で政府に批判的なメディアは一掃され、市民も政府批判ができない社会になりました。2021年に国軍がクーデターを起こしたミャンマーでは、軍に批判的なメディアや記者への弾圧が続いています。他にも強権的な体制の国の多くでは、言論や報道の自由はありません。フェイクニュースを規制する国も増えています。デマを防ぐ目的に乗じて、政権が都合の悪い事実を隠そうとする例もあとを絶ちません。

 「民主主義のリーダー」を自認する米国でも、トランプ前大統領は自らに批判的な報道をフェイクと断じて「国民の敵」と攻撃。2018年には、多くの新聞が報道の自由を訴える社説を一斉に掲げました。呼びかけたボストン・グローブ紙は「記者は敵ではない」と題し、「自由な報道機関を国営メディアに置き換えるのが、あらゆる腐敗した政権がまず着手することだ」「米国の偉大さは、権力者に真実を突きつける自由な報道機関に支えられている」などと訴えました。民主主義は、リーダー次第で意外にもろい面もあるのです。日本でも、第2次世界大戦のときには朝日新聞を含む各報道機関が政府の圧力に屈し、大本営発表を流し続けた苦い過去があります。自由な言論・報道は民主主義の根幹であり、権力チェックが不可欠です。プーチン大統領の言動を見ても、権力は暴走し始めたらなかなか止められないことが分かります。だから民主主義には、常に権力をチェックする独立した報道が不可欠なのです。

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(写真は、報道機関への圧力を強めるトランプ大統領〈当時〉に対し報道の自由を訴えるデモ=2017年2月、米ニューヨーク)

SNSに希望も

 SNSの普及で誰もが情報の発信者になれる時代になり、世の中の情報量は爆発的に増えました。ウクライナはゼレンスキー大統領は日々、SNSを通じて国民と世界に向けてメッセージを発信しているほか、「ロシアの非を訴えるロシア兵捕虜」とする動画の投稿も続けています。ロシアではツイッターなどが遮断されたものの、通信を暗号化して外国のサーバー経由で接続する「VPN」アプリのダウンロードが前年の10倍に増えたそうです。若者を中心に海外の情報に接している人も多くいます。みなさんさんが発信したりシェアしたりした情報がロシアの人たちに届くかもしれません。ただし、SNSの情報は正しいとは限らず、安易にシェアするとプロパガンダに加担してしまう可能性もあります。自分が信頼しているメディアの情報かどうか、発信元を確認することが大切です。

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(写真は、SNSでメッセージを発信しているウクライナのゼレンスキー大統領=2022年3月8日、同氏がSNSに投稿したビデオメッセージから)

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