今年の選考は6月解禁という形になっていますが、すでに「社員面談」や「セミナー」や「対談会」といった名目で実質的な選考が始まっています。都内国立大4年生の男子学生くんはすでに1社一部上場企業の内定を獲得しましたが、本命である金融業界の選考が本格化するのを前に緊張感が高まってきているといいます。
「どうしても金融業界に行きたいので、ESも完璧に仕上げたいとおもっていまして……。でも、志望動機がうまく書けないんです」
彼もまた、志望動機がうまく書けず悩んでいるようです。金融業界は人気で志望する学生も多く、「お金を通して社会に貢献したい」程度のよくある志望動機では頭ひとつ抜け出すことはできなさそう。「会社によっては7割くらいESとテストで落とすところもあるらしいので、目をひく志望動機を書きたいんですが……」
志望動機についてはこの欄で「志望企業、どうやって選べばいいの?そんな時には社名でニュースを検索!」(2016年3月3日)、「あえて『行きたくない業界』を探そう!」(2016年3月10日)など何度か取り上げてきました。面接が進むにつれて大切になってくるのは繰り返しになりますが、志望動機です。なぜ自分はこの会社に行きたいのか、ほかの会社ではなぜダメなのか、整理してしっかりしゃべれる学生は間違いなく頭ひとつ抜け出すことができます。
で、この学生さん、すでに志望動機に関するアドバイスをほかの社会人の人から受けてきていました。それがこちらです。
「会社の”褒めてほしいところ”をベタ褒めしよう!」
人間だれしも、自分の中で誇りに思っていたり、自慢したいポイントがいくつかはあるものです。会社も同じ、いや、人間以上にそういう気持ちが強い組織です。面接官は基本的に、会社を体現する存在。褒めていい気持ちにさせるのはコミュニケーションの鉄則でもあります。
ただ、意味なく褒めるのは逆効果です。あまり顔に自信のない人に「よ、ジョニー・デップも真っ青のイケメンだね!」と褒めたりすると、たぶん嫌われますよね。会社も同じで、あまりピントのずれたポイントを褒めても「この人はうちの会社のことを知らないな……」という印象を与えるだけで、逆効果です。逆に会社的にアピールしたいけどあまり世間に広まっていないポイントをビシッと褒めると「わかってるじゃないか!」となって、効果的です。「会社に媚びを売るのか!」と思われるかもしれませんが、褒めるポイントもないような会社にはそもそも行かないほうがいいですよ。
会社の褒めポイントはどう探せばいいか。最初のカギはやはり、ニュースです。直近の会社の動きの中には、その会社がこれから伸ばしたいこと、新たに取り組みたいことが含まれています。ためしに金融最大手の三菱東京UFJ銀行に関する朝日新聞のニュースを検索してみますと、3月29日に「成田空港 ロボットがお出迎え 訪日客をおもてなし」という記事が載っています。成田の第一ターミナル内支店に人型の接客ロボットが登場し、日本語、英語、中国語を駆使して為替レートや空港内設備を教えてくれるというもの。「面白い試みだ!」でも「人件費を削減するいいアイデア!」でもなんでもいいですが、こういうニュースをうまく拾い上げて褒めることができると、会社は喜ぶはずです(怒るということはないでしょう)。
もうひとつは「今日の朝刊」でも先日とりあげましたが、企業トップのインタビューやコメントを探して読むことです。三菱東京UFJ銀行では4月から新しい頭取になりましたが、4月5日の朝日新聞で単独インタビューに応じており、いまのマイナス金利政策について語っています。こちらは直接の「褒め」ポイントには結びつきませんが、業界紙や経済系週刊誌などによく載っているロングインタビューを読み込んだりすると、トップがやりたいこと、やろうとしていることがはっきり見えてきます(企業ホームページの言葉だといろいろなことを一気に言おうとするので、ポイントがわかりづらいケースがあります)。「頭取がよくおっしゃっている○○という動きにすごく魅力を感じました!」といったことが言えれば、これもまた会社は喜ぶことでしょう。
前出の男子学生くんもさっそく、志望する金融機関のニュースチェックをはじめるそうです。志望動機をしっかり固めて、本格化する就職活動を乗り切りましょう。