新入社員として意気揚々と会社に配属されたが、最初に言われた仕事は会議の資料作り。来る日も来る日も、コピーを延々取って角をそろえてホッチキス止めの繰り返し。もっと海外営業や商品企画の仕事がしたいのに。ああ、会社辞めてやろうかしら!……という考え方、皆さんは正しいと思いますか?
インターネット生命保険大手・ライフネット生命の岩瀬大輔社長がインターンシップの学生に自分のもらった名刺をエクセルに打ち込む仕事を頼んだところ、2週間で「辞めたい」と逃げられたというエピソードをある動画サイトで披露し、話題となりました(動画の公開自体は2014年)。この動画を取り上げたウェブメディアのnetgeekは、「やる気のある学生という労働力を確保したのに、そのリソースをまったく有効活用できなかった」と岩瀬社長を批判しています。
このこと自体の賛否はさておき、もし皆さんが同じような状況でこういった雑用を振られたらどう考えたらいいか。当欄としては、「積極的に雑用をしたほうが内定に近づく!」と声を大にして主張したいと思います。理由は4つあります。
①細かな雑用が、大きな仕事に結びつく!
当該の動画で岩瀬社長も言っているのですが、細かな雑用の積み重ねは重要な仕事につながるものです。岩瀬社長は、国内の生保会社の業績を自分でエクセルに手入力しているそうです。人にやってもらえば楽かもしれませんが、自分でパチパチ打ち込むことで数字の感覚が身につき、細かな気づきを得られるというのです。名刺入力に関しても、社長の交換する名刺のデータを頭に入れていくだけでもかなりの業界研究の足がかりになると岩瀬社長は指摘しています。会議資料作成だって、資料をながめることでいま進んでいる仕事全体の中身が把握できたりといろいろ仕事の足がかりになるでしょう。
何よりも、そういった細かな作業をミスなくやりきれること自体が、大きな仕事を実現するために欠かせないスキルです。「この大きな商談、若手の誰かにまかせてみよう」と上司が考えた時、「あいつは面白いけど、顧客の名前を間違えたり資料に誤字脱字が入ったりして、取引先を怒らせるかもしれない……」という社員にはなかなか頼みづらいものです。
②細かな雑用は、視野を広げる!
職場のコピー機がトナー切れになった、備品のボールペンがなくなった、お茶葉が切れた……職場では日々、そんな事態に伴う雑用が発生しています。見て見ぬふりをすることもできるでしょうが、積極的にそういった雑用を買ってでてみましょう。会社のあの人はよくお茶を飲んでいる、ボールペンの減りが一番激しい季節はいついつだ、どうやら隣の職場では今こんなプロジェクトが進んでいるらしい……雑用をこなすことで、日常の仕事に打ち込んでいるだけでは見えてこない風景が少し見えてくるはずです。視野が広がれば、おのずと仕事の幅も広がります。
③細かな雑用も「成長」の足がかりにできる!
これは以前「業界トピックス」でも触れたのですが、ミドリムシ事業で急成長中の「ユーグレナ」創業者の出雲充(みつる)社長は銀行の新入社員当時、店のATMにいかに効率的に札束を詰めるか、どのタイミングで札束を補充すれば札切れが起こらないか、客の流れや曜日による傾向をチェックしていつも考えていたそうです。会議資料作成も、どうやればスピーディーに資料をきれいに作れるか、いろいろ試行錯誤していけばだんだん面白くなってくるはずです。「考えて、実行する」というプロセスは、雑用でこそ鍛えられるものかもしれません。
④細かな雑用ができる人を、企業は求めている!
というのは、別に「細かくて器用な人が欲しい」という意味ではありません。
採用担当者がよく言う「欲しい学生」のタイプにあるのが、「やりたいことではなく、やらなければいけないことをやれる学生」です。やりたいことをやるのは当たり前、会社ではチームで仕事をすることもあり、「やらなければいけないことをやる」ことのほうが多い。就活イヤァオ!の15回目では、それを企業にアピールするためにまず大学の勉強を頑張ろう、という話をしました。
雑用も、まさにこのアピールにぴったりです。サークルでもアルバイトでも、自分で「やらなければいけないこと」をたくさん見つけて積極的に手を動かしたというエピソードを語れる人は、内定にぐっと近づくはずです。
私の前の職場である週刊誌でアルバイトをしていた男子学生が最近、大手出版社に内定しました。週刊誌のアルバイトというと有名人にインタビューしたり事件現場で取材したり、というのを想像されるかもしれませんが、彼がやっていたのは企業や会社にアンケートを送り、それを回収し、内容をエクセルに打ち込む――という地味かつ面倒くさいもの。それでも、どういう電話をすれば企業に失礼にならないか、アンケートの打ち込みを間違えないためにはどういうチェック体勢をしけばいいか、複数人数で打ち込むときにどう作業を割り振ればいいか、どうすれば引き継ぎがうまくいくかなど、彼なりにいろいろと工夫して取り組んでいました。
「面接のときにも、そのアルバイトの話をアピールして内定をいただくことができました」(男子学生)
皆さんも参考にしてくださいね!