この時期就活を始めようとしている学生さんのお悩みで一番多いのは何でしょう? この連載の1回目でも書きましたが、煎じ詰めればそれは「そもそも何からはじめていいかわからない!」ということではないでしょうか。今年金融機関に内定した都内私立大4年生のパワー君も、就活でつらかったことの一番目にあげたのが「受験勉強と違って『これをやればいい』という道がみつからない」ことでした。この彼は浪人して日本史の偏差値を30近くあげ志望大学に合格したほどのがんばりやさんなのですが、
「受験勉強なら自分の努力が数字になってあらわれるし、自分の位置が全体の中でどのへんにいるかもわかる。でも就活はそういう指標がまったくないし、暗闇を歩いている気分でした」
ちなみに彼が最初にはじめたのは、市販本を買っての「自己分析」でした。面接でしゃべるネタを探すにはちょうどいいスタートかもしれません。「イヤァオ!」1回目で「志望動機は(まずは)考えるな!」と書いたとおり、就活は会社に自分を売り込む作業ですから、自分という商品をよく知ることが第一歩でしょう。
しかし3年生のみなさんにとって、今の時期は第一歩の前の「第0歩」状態です。確かに就活時期がまた前倒しになるとか早めの準備が必要とかいろいろなニュースが流れていますが、いきなり自己分析やら業界分析やらはじめてもはっきり言って来年以降息切れします。
今やったほうがイヤァオ!なこと、それはずばり「大学の勉強」です。専攻分野が就活に直結することの多い理系のみなさんはもちろん、文系のみなさんにも強くお薦めしたいことです。
人事担当者は学生のさまざまな資質を見ていますが、意外にも「大学での勉強体験」を重視している人が多いのです。就活ニュースペーパー内の連載「人事のホンネ」で、三菱UFJ信託銀行の採用担当者はこんなことを語っています。
<会社や仕事には「やらなければいけないこと」「やるべきこと」がある。嫌なことでも全力疾走でやらなければならないことがある。そういうことに人生の中できちんと向き合ってきたかどうかを確認します。
学生にとって「やるべきこと」は、まずは学業だと思います。成績がいい悪いではなく、学業にどう取り組んできたか。勉強が苦手な人もいるので、大学に入った目的や、苦手な学業にどう向き合ってどうクリアしてきたのかを(面接では)聞いていきます>
また、ある大手自動車メーカーの採用担当者は、
「学生時代に旅行したり遊んだりもしたが、きちんと勉強もしましたというアピールをしてきたESは印象に残りました。理系ですと多いですが、文系事務職だとあまりいませんので」
とも語っています。
大学生の多くは「勉強めんどくせー」と思っているでしょう。(え、私だけ?) しかしそのめんどくさい勉強をきっちりやりとげ、何らかの成果を出してきた学生は、多くの企業にとって魅力的な存在になります。なぜならビジネスの現場においてたいていの仕事は「めんどくせー」ことだからです。そういう気持ちをぐっと押し殺して課題と向き合い、資料を探し出し、ゼミの仲間と協力したり先生に教えを請うたりして論文などの結果にアウトプットする……。これらの作業すべてが、ビジネスの現場でそのまま求められる力です。その結果が日本中世史でも、「フランスの詩人・ボードレールの作品における修飾語の使い方の特色について」であっても何でも構わないのです。なにより、勉強で得た成果をアピールする学生は今それほど多くありませんから、面接官の印象にも残りやすい。一石二鳥の作戦といえましょう。
来年就職をめざしている慶応大3年女子さんは、インターンシップの面接で「私は学生団体に所属し~」「学内ベンチャーでこのような利益をあげ~」とのたまう意識高い系の学生を見て、「私はゼミの勉強がんばることにします」と決意したそうです。3年生のこの時期から意識を高めるより、目の前の課題に打ち込むほうが簡単です。「そうは言っても、ゼミかったるいし……」とまだ言っているあなたには、ベストセラーを連発した幻冬舎の創業者社長・見城徹さんの「憂鬱でなければ、仕事じゃない」という言葉をお送りします。就活開始まであと半年、あなたなりの「憂鬱」に向き合う機会をぜひ作ってみて下さい。私も憂鬱な原稿書きを終えて今すがすがしい気分です!