なおこの就活道場 略歴

2015年10月26日

日本一難しい就活試験、実はそんなに難しくない!(下)(番頭フッキーの「就活イヤァオ!」その14)

 まいど! 「なおこの就活道場」番頭のフッキーです。毎回、就活生の陥りがちな悩みを「イヤァオ!」と一刀両断する言葉をお届けいたします。今回は前回に引き続き、ライフネット生命(本社・東京都)が課す「日本一難しい就職試験」の話題です。一見難しい課題ですが(よく見ても難しいですが)ニュースセンスを磨いておけば対応可能! と前回はお話しました。「本当か?」というツッコミにイヤァオ!と答えるべく、新聞の過去記事などを駆使して実際の課題にわたくしフッキーが取り組んでみたいと思います。頭がさびついているので解答の形まで整えるのは難しいですが、とっかかりだけでも探しだしてみます!
 さて、先日締め切られました今年(2016年4月入社採用)の「重い課題」。2つある問題のうち1問に挑戦してみましょう。

重い課題 ライフネット定期育成採用2016

 ライフネット生命は「子育て世代を応援したい」という理念のもと、生命保険商品・サービスの提供を行っています。その理念を切り口として、ライフネット生命が取り組むべき第2の事業について考えてください。

(1)高度経済成長以降、現在に至るまでの子育て世代を取り巻く時代・環境について考察してください。
(2)(1)をもとに、いまから10年後(2025年)の子育て世代のニーズを考察してください。
(3)「子育て世代を応援したい」という理念のもと、ライフネット生命が生命保険事業に次ぐ第2の事業を10年後(2025年) に立ち上げると仮定します。
(1)(2)の考察をもとに、その事業内容を考え、説明してください。その際、当社生命保険事業とのシナジーに関する説明を必ず含んでください。
※国の規制などは考慮しなくて良いものとします。
※ライフネット生命の生命保険事業は現行のビジネスモデルを維持するものとします。

課題にチャレンジ!

 今回は(1)と(2)に取り組んでみます。まず(1)から。「少子化」や「出生率」で朝日新聞の過去記事を検索してみたところ、2014年8月8日の「人口減にっぽん 近未来からの警告」という記事を見つけました。少し長いですが引用します。

<(略)この20年余り、政府は様々な少子化対策を打ち出してきたが、人口減少は止まらなかった。1970年代半ば、女性1人が産む子どもの数を示す合計特殊出生率は2.00を切り、人口を維持できる水準を割り込んだ。だが政府の危機感は薄く、少子化が問題になったのは90年。(略)94年、政府は初の総合的な少子化対策「エンゼルプラン」を発表し、その後も毎年のように対策を打ち出した。働く女性が子育てできるように保育所を拡充することが柱で、2013年までに定員を約35万人増やした。しかし、予算の投入が不十分で、保育所の拡充はニーズに追いつかず、都市部では待機児童の問題が深刻化していった。
 03年の少子化社会対策基本法では、子育てへの親の責任が強調され、社会全体で支援する方向には進まなかった。(略)非婚化も進んだ。50歳時点で一度も結婚したことがない割合を示す生涯未婚率は10年で男性が20.1%、女性が10.6%で上昇傾向が続く。低賃金で身分も不安定な非正規雇用が増え、多くの若者たちが将来の見通しが立たず、結婚を先送りしている。
 働き方に切り込めていないことも大きい。30~40代男性の2割近くは週60時間以上働き、日本は世界でも有数の「長時間労働大国」だ。女性に家事や育児の負担が偏れば、出産後も働き続けるのは難しくなる。>

 高度経済成長期以降に進んだ少子化の原因がまとめられていますね。項目をあげるとこんな感じでしょうか。

・保育所が足りない
・親の責任強調
・非婚化
・非正規雇用増加
・長時間労働

 「保育所が足りない」原因は保育所を求める女性が増えたこと、言い換えれば共働き、女性の社会進出が進んだことにあります。もちろん「核家族化」が進んでいるので祖父母に子育てをお願いするわけにもいきません。にもかかわらず、「子育ては親の責任!」という社会の風潮が全く改まらず、保育園に子どもを預けることすら罪悪感をおぼえるという時代がながーく続いてきたわけです。

 「非婚化」も高度成長期と今との大きな違いでしょう。そもそも「結婚するのが当たり前」という風潮自体がなくなり、コンビニやインターネットの発達により1人で暮らすことのハードルもすっかり低くなりました。非正規雇用が増えて経済的にも結婚が難しい人が増え、一方の正規雇用者は結婚しても長時間労働で子育てに時間を割けない――といった状況が読み取れます。
ライフネット生命の「重い課題」作成 (以下3枚の写真は「重い課題」作りにとりくむライフネット生命の皆さん=ライフネット生命提供)

 高度経済成長期以前の育児環境は、
・共働き率が少ない
・核家族化が進む前で育児を祖父母が分担していた
・結婚することが今よりもずっと当たり前だった。経済的にも終身雇用制が生きていて、給料が右肩上がりになると信じられる時代だった

 といった要素がありそうです(裏付けとなるデータが必要ですが)。ここから今までの子育て世代をめぐる時代・環境の変化を、<人手の問題><経済的問題><意識の問題>といった項目で整理してみます。

<人手の問題>
・子どもを育てる人手が核家族化や共働きの増加により減っていった。
・にもかかわらず、保育園は十分に増えなかった
・子育ては親がするもの、という意識は容易に変化しなかった

<経済的問題>
・終身雇用制が当たり前ではなくなり、右肩上がりの給与を想定できなくなった
・非正規雇用者が増え、安定した家計をキープできなくなった

<意識の問題>
・「結婚は当たり前」という意識が年々薄れていった
・単身で生活する不便さがなくなっていった

 経済的問題には、「1人あたりの教育費が増加している」というデータもつけくわえられそうです。
 では、これらをふまえて10年後の子育て世代のニーズをどうとらえればよいでしょうか。<人手の問題>は保育所を増やせば解決しそうですが、2015年7月8日の朝日新聞にはこんな記事が載っていました。

<資格を持ちながら保育士として働いていない潜在保育士は、全国に60万人以上いるとされる。2014年の賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の賃金の月平均29万9600円に対し、保育士は20万9800円。潜在保育士を対象にした2013年の調査では、働かない理由として「賃金が見合わない」「責任が重い」「休みが取りにくい」などが上位に挙がった。>

 この記事では、保育所増加に伴い保育士不足が深刻化しているという指摘がありました。しかも給料は安いというのですから、保育所が増えても保育士さんのレベルが確保できるのか、という懸念は残りそうですね。教育費の増加というトピックを考えても、「教育の質を担保したい」というニーズは10年後さらに高まっている可能性が高いと見ます。

 <経済的問題>はどうでしょうか。考えておきたいのは雇用政策の変化でしょう。安倍政権は「1億総活躍」というスローガンを打ち出しましたが、いきなり仕事がどっと増えるわけでもないので、ここで予想されるのはワークシェア、つまり仕事と給料を多くの人で「分け合う」という構図です。長時間労働は解消されるかもしれませんが、十分な給料が稼げない人が増える未来図が見えます。

 <意識の問題>は? ロボットやインターネットの進化を考えると、1人でも生活できる、結婚しなくてもいいという考え方が今後減るとは考えづらいですね。
 それでも子どもが産みたいと女性が考えた場合、どのような方法がありうるか? ヒントとなるのは出生率を増加させたフランスの「PACS」という仕組みです。結婚ではなく事実婚のようなスタイルを認める仕組みで、これに伴い婚外子も増加。出生率向上につながったとされます。2014年4月11日の朝日新聞にはこんな記事があります。
<フランスでは婚外子増加に伴い、2010年の合計特殊出生率(海外県・海外領土を除く)が36年ぶりに2を上回った。「フランス女性はなぜ結婚しないで子どもを産むのか」の編著者、井上たか子・独協大名誉教授(家族社会学)は「日本では伝統的な家族の形が守られていても、非婚化・少子化などの問題が表面化している。家族制度を再考する時ではないか」と話す。>

 となれば、シングルマザーを支援する仕組みのニーズも高まりそうな予感がしますね。このあたりをまとめると面白そうな気がいたします。

 うーむ、やっぱり難しいですかね? 私は難しかったです! しかし新聞を活用し一つひとつ情報を集めて丁寧に考えていけば、とりつく島もないほど難しいというわけでもなさそうです。実際のビジネスシーンでは「どこからとりかかったらいいやら……」という案件が連日連夜パックマンのように襲いかかってきます。そんな社会人生活の予行演習と思えば、「重い課題」に取り組むモチベーションも湧いてくるのではないでしょうか。ちなみにライフネット生命さんからは、このようなコメントをいただきました。

 「今回取り組んでいただいた2016年4月入社の“重い課題”の1つは、データを整理し論理的に考えを組み立てる力が必要な課題です。
 (1)(2)では、情報をしっかりあつめて整理する編集能力が必要ですが、それを発展させて自分なりの考えをアウトプットする力を(3)の回答で発揮いただきたいですね!


 みなさんもぜひ「重い課題」に挑戦してみてください。ほかの会社の就活が一気に楽に思えてくるかもしれませんよ。