なおこの就活道場 略歴

2015年10月07日

日本一難しい就活試験、実はそんなに難しくない!(上)(番頭フッキーの「就活イヤァオ!」その13)

 まいど! 「なおこの就活道場」番頭のフッキーです。毎回、就活生の陥りがちな悩みを「イヤァオ!」と一刀両断する言葉をお届けいたします。今回は、「日本一難しい就職試験」を課すと評判の会社にお邪魔しました。昨今の学生有利の売り手市場に立ち向かうその会社の名前はインターネット生命保険大手のライフネット生命(本社・東京都)。なぜそんな試験を出すのか、その難しい課題をクリアする方法はあるのか……いろいろ質問してきました。

 ライフネット生命は新卒既卒を問わず30歳未満であれば「定期育成採用」にエントリーすることが可能です。その時に求められるのはエントリーシートでも履歴書でもなく、「重い課題」に答えること。これは事前に提出する課題で、たとえば2015年卒採用時の試験(2問あり、うち1問を選んで解答すればOK)はこんな感じです。

<現在の小学校1年生が大学を卒業して就職する頃には、65%の人が今は存在していない仕事に就くという調査があります。現在から20年後の社会と仕事の変化について、予想してください。
(1)20年前から現在にかけてもっとも成長した産業ともっとも衰退した産業について、データを用いてその背景とともに説明してください。
(2)20年後の未来に、現在と比較して大きく変化している社会・産業の状況を予想し、理由とともに説明してください。
(3)(2)で予想した変化に伴い、20年後には、現在存在しないどんな仕事が新たに生まれているでしょうか。新たな仕事を一つ挙げ、その仕事が生まれる背景と、その仕事に就くにはどのような能力が必要か予想して説明してください。
※20年前は1990年とし、20年後は2030年とします>(文字数制限なし)
ライフネット生命の佐藤邦彦総務部長  思わず「ちょっと何言ってるかわからないです」(byサンドウィッチマン)と避けたくなる課題ですね。ライフネット生命では2011年卒採用時にいわゆる新卒採用を始めてからこの「重い課題」を出していますが、応募者の数は多くて111人、2015卒採用時は68人しか応募がありませんでした。今年は売り手市場ということもあり、応募者数は更に減少傾向であると採用担当の佐藤邦彦総務部長(写真)は語ります。

 それでも「重い課題」を課す理由は2つ。ひとつは志望度の高い学生がエントリーしてくれることです。ライフネット生命の「定期育成採用」で入社するのは毎年1~2人。「重い課題」を課すことで志望動度の低い学生はこのハードルを敬遠してしまうので、1人1人じっくりとチェックすることが可能になるわけです。

 もう一つは、保険業界のみならずビジネスマンすべてに不可欠という「考える力」をしっかり見られることです。

 「重い課題といっても、問題の中に考える筋道は示されています。いまはインターネットが発達しているのだから、集められる情報をしっかりあつめて咀嚼(そしゃく)、整理し、それを発展させて自分なりの考えをアウトプットする力をここでは見ます」

 その力を佐藤さんは「編集能力」といいます。解答の分量の多い少ないや見た目の美しさも見るポイントではありますが、メインではありません。「抜粋ばかりで分量が増えているものは、量は重くても中身は軽いなと判断します」。2問のうち1問は自由な発想力を、もう1問はデータを整理し論理的に考えを組み立てる力をみる問題を出しており、「前者の課題では見る者をワクワクさせるような内容を、後者の課題ではちゃんと論理立ててアウトプットできている内容を評価します」といいます。

 上にあげた問題はデータ整理型といえそうです。「20年前から現在にかけてもっとも成長した産業ともっとも衰退した産業」についてのデータと説明を求めているわけですから、まずそういうデータを探すところから始めればいいわけです。記事データベースやインターネットで「産業 構成 推移」や「1990年 衰退 産業」などとキーワードを入れて検索していけばそれっぽいデータやまとめ記事がいくつも見つかります。「この15年で『増えた仕事』『減った仕事』は何か」という東洋経済オンラインの記事によれば、一番増えたのは介護職員、減ったのは農耕従事者とのことです。
 ただ、これを提示して終わりでは「考える力」を見せたことにはなりません。なぜ介護職員が増えたのか、農耕従事者の減少の理由は、ほかにも増えた産業、減った産業はないだろうか……考えて調べるべきことはいくらでもあります。

 「大切なのは、こういう問題に『楽しんで』取り組むことです。ビジネスにもいろいろな種類はありますが、未知の課題にとりくみ解決策を探っていくビジネス現場において必要なのは知らないことに尻込みせず情報を集めて自分なりに考える力。こういう問題を楽しめる人は、仕事そのものも楽しんで取り組める人だと思います」(佐藤さん)

 「重い課題」で評価が高かった人をそのまま採用するわけではありませんが、この課題をクリアして入社してきた新入社員は「大人びているというか、社会人としての基礎力がある気がします」といいます。

 では、「重い課題」をクリアする力はどうすれば磨けるのでしょうか。佐藤さんは2つのポイントをあげます。
 ひとつは、日常接するニュースを「へー」「ふーん」だけで流さずに、「自分はこう思う」と毎回考えるくせをつけること。もうひとつは、自分が関心のないニュースや情報に接する機会をできるだけ設けることです。

 「いまはレコメンドシステムやRSSが発達し、日々ニュースに接しているように見えても自分の興味や関心のあるニュースしか拾えていないことが多い。新聞を広げてチェックしたり、本探しもamazonに頼らず書店に足を運んだりしてこれまで関心のなかった分野に接する機会を多く設ければ、『重い課題』にも前向きに取り組めると思います」(佐藤さん)

 ちなみにライフネット生命は現在、2016年4月入社の秋採用を実施中。この記事を読んで興味をもった方はぜひ下のリンク先から今年の「重い課題」にチャレンジしてください。※2015年10月15日(木)まで郵送とメールで受付中

 新聞を就活に活用する、といえば、われらが就活ニュースペーパーの得意分野でもあります。次回の「イヤァオ!」では、この「重い課題」に新聞を駆使して解答してみたいと思います。