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2025年07月11日

国際

トランプ米大統領、日本に関税25% 今後の展開は?【時事まとめ】

関税の発動は8月1日

 アメリカトランプ大統領が7月7日、日本に課す新たな「相互関税」の税率を25%にすると表明しました。8月1日に発動することになります。もともと4月に24%の税率を発表しており、日本は必死の交渉を続けていましたが、結果として1%上乗せされた税率が公表されたことになります。
 ただし、アメリカ側は8月1日を事実上の期限とする形で、交渉の余地も残しています。アメリカへの輸出は日本の産業の大きな柱であり、高関税は日本の景気を大きく減速させかねません。今後の交渉はどうなるのか、これまでの流れもふまえてまとめてみました。(編集部・福井洋平)
(写真・G7サミットのセッションに臨むトランプ米大統領=2025年6月16日/写真、図版はすべて朝日新聞社)

特定の国への関税→品目別の関税→相互関税

 輸入品にかける税金=関税は、安い海外製品の流入をふせぎ、国内の産業を守る役割があります。アメリカは長らく世界からたくさんのものを輸入してドルをばらまく「貿易赤字」国でしたが、トランプ氏はこれを問題視。「タリフ(関税)マン」を自任し、第2次政権が発足してからいくつもの関税政策を連打してきました。4月には日本に対して、24%の関税を課すと通告しています。

 トランプ氏が課してくる関税には、今回の「相互関税」を含め大きく分けて3種類あります。①特定の国への関税 ②品目ごとの関税 ③相互関税 です。朝日新聞の記事をもとに、ここで内容を確認しておきましょう。

 まず、①の特定の国への関税ですが、これは就任直後に発動されました。相手は中国メキシコカナダです。中国には20%、メキシコとカナダには25%という関税がかけられました。中国で原材料がつくられ、メキシコとカナダから米国に流入しているとされる合成麻薬「フェンタニル」について、この3カ国の取り締まりが甘いというのが理由とされています。ただ中国はアメリカにとって最大の貿易赤字国で、メキシコは最大の輸入相手国とあって、貿易赤字を問題視するトランプ氏にとっては関税をかける優先度が高い国だったとみられています。

 次にトランプ氏が導入したのが②品目ごとの関税です。アメリカが輸入するすべての鉄鋼・アルミニウムと、すべての自動車に対して、税率を25%にしました。6月には鉄鋼・アルミの関税を50%に引き上げています。これらの品目について、アメリカ国内の産業をまもることが大きな目的です。トランプ氏は品目も増やす方針で、半導体、医薬品、鉱物、航空機やその部品などが対象になりそうだといいます。8日にはトランプ氏が、「銅にも50%の関税をかけるだろう」と記者団に語っています。銅は電気を通しやすく、電気自動車(EV)やデータセンターなどのハイテク分野で需要が高まるとみられています。

担当大臣が7回訪米も

 そして4月に発表された「相互関税」が、世界中に大きな衝撃を与えました。ほぼすべての国・地域に一律10%の最低税率を課したうえで、アメリカが貿易赤字(輸入額が輸出額を上回る状態)をかかえている相手には個別に上乗せ税率を適用する、というものです。日本は上乗せ分が14%で、合計24%の関税がかかることになりました。しかしこの上乗せ分については7月上旬まで90日間の一時停止となり、アメリカはこの90日間を「集中交渉期間」として、関税をめぐる協議をすすめてきたわけです。

 日本は赤沢亮正経済再生相が関税問題の担当となり、7回にわたって訪米を繰り返しました。最大の焦点としてきたのは、日本の主要輸出産業である自動車に対する関税です。この撤廃・見直しを求め、アメリカ側で交渉を担当するベッセント財務長官とも協議を重ねてきました。ところが、交渉は難航。トランプ氏はいらだちを隠さず、日本との貿易は「不公平だ」という批判を強め、30~35%という高関税もちらつかせるようになってきました。

 そして今回、もともとの24%からなぜか1%上乗せされた25%という関税が提示されたわけです。関税を通告したトランプ大統領の書簡には、「日本の関税および非関税措置、貿易障壁によって生じる長期的かつ非常に持続的な貿易赤字から、我々は脱却しなければならないとの結論に至りました」と記されています。また、日本が報復として関税を引き上げた場合は、アメリカ側もさらに関税を引き上げると記載されています。

トランプ氏は「わかりやすい成果」が必要

 今後の展開はどうなるのでしょうか。

 さきほどの書簡には、「もし日本が、これまで閉ざされていた日本の貿易市場を米国に開放し、日本の関税および非関税措置、貿易障壁を撤廃する意思があるのならば、本書簡の内容を見直すことを検討する用意があります」と記されています。これは、8月1日の関税発動までに猶予期間があるということです。トランプ氏がもともと発言していた30~35%という数字にくらべれば25%は比較的低く、交渉の継続を前提にした提示、とも考えられます。

 しかし、これまで協議を繰り返してきたにもかかわらず進まなかった交渉が今後どう進むかは未知数です。アメリカ側はたとえば日本のコメ市場を開放することや、自動車の輸入の拡大などを求めています。日本側はアメリカの自動車産業に対する「貢献度」に連動して税率が下がる仕組みなどを提案していたようですが、うまくいきませんでした。政府内からは「トランプ氏は複雑な話を受け入れない。『貿易赤字をゼロにする』くらいのわかりやすさが必要なのかもしれない」という見方も出ているようです。

高関税→トリプル安の再来は避けたい?

 一方、トランプ氏が追い込まれているという見方もあります。丸紅経済研究所の今村卓社長は朝日新聞のインタビューに、相互関税の水準を戻すと「トリプル安」の再来もあると指摘しています。トリプル安とはアメリカの株、債券、ドルがすべて安くなることで、4月に相互関税を発表したときにアメリカ経済の混乱を予測してトリプル安が起き、政権は関税引き上げ期限の延長を余儀なくされました。そもそもアメリカの関税が高くなって大変なのは、商品の値段が高くなるアメリカの消費者であり、企業です。トランプ氏もずっと強気ではいられない……と考えられます。そう考えれば今後、トランプ氏が面目を保てるようなわかりやすい成果を出させたうえで、関税引き下げを飲んでもらうという交渉展開もあり得るでしょう。トランプ関税にくるしむ東南アジアやヨーロッパの国との連携、ということも考えられます。そのために、日本は何を交渉カードとして使うのか。注目が必要です。

 別のシンクタンク研究員は、関税が上がってもいまの円安水準が続けば日本の輸出企業は余力が残るとしつつ、アメリカと中国の経済摩擦が悪化することで中国景気が減速し、その影響が日本にも及ぶと懸念しています。就活にも、大きな影響が出ることは間違いありません。トランプ氏関連の話題は動きが速く、先が読めないことが多いですが、影響の大きさははかりしれません。今後も継続的にチェックしていく必要があります。
(写真・G7サミット会場で歓迎セレモニーに向かうトランプ米大統領=2025年6月16日)