小林製薬が製造した紅麹を原料とするサプリメントが問題になっています。摂取していた人が腎機能障害を起こしていることがわかったためです。このサプリメントは機能性表示食品というもので、薬ではなく食品にあたります。
●小林製薬問題で注目の「機能性表示食品」って何? 食の安全について考えよう【時事まとめ】
小林製薬は会社名に製薬という文字が入っていますが、売上高に占める薬の割合は4分の1ほどで、主力は健康に役立つとされるヘルスケア商品や消臭剤などの日用品です。この分野では花王やP&Gジャパンなどの会社が競合しており、「消費財業界」や「日用品(トイレタリー)業界」と呼ばれています。人々の暮らしに密着した商品なので、アイデア次第でヒット商品が生まれる余地の大きい業界です。また、細部に気配りできる日本企業が得意な分野でもあるため、最近はアジアなど海外で大きく伸びています。小林製薬は当面、業績に大きなダメージを受けることが想定されますが、消費財業界全体はまだまだ伸びる可能性のある業界といえます。
(イラストはPIXTA)
花王の売上高は1兆円以上
消費財業界で日本の大手とされるのは、花王、ユニ・チャーム、ライオン、小林製薬、P&Gジャパンなどです。この中でもっとも売上高が大きいのは花王で、1兆5325億円(2023年12月期)と1兆円を越えています。次いでユニ・チャームが9418億円(2023年12月期)、ライオンが4027億円(2023年12月期)、小林製薬が1734億円(2023年12月期)と続きます。アメリカ企業の日本法人であるP&Gジャパンは上場していないので日本での売り上げを公表していませんが、従業員数約3500人の会社であり、ブランドも浸透している大手の一角です。
成り立ちによって各社で違う強み
大手企業は成り立ちの違いなどから、強みもそれぞれ違います。花王は明治時代に石鹸の販売からスタートしており、1985年までは花王石鹸という社名でした。このため、石鹸や洗剤に強みを持っています。また、2006年には大手化粧品会社だったカネボウを買収し、化粧品部門も強化しています。ユニ・チャームは愛媛県の製紙会社を源流としているため、紙から派生した商品に強みを持っています。紙おむつのムーニー、生理用品のチャームナップなどです。また、ペットフードなどのペット用品にも力を入れています。ライオンは明治時代に粉歯磨き「獅子印ライオン歯磨」を発売して成長してきた会社であるため、今も「歯とお口のケア」に強みがあり、歯磨き粉や歯ブラシは業界をリードしています。また、解熱鎮痛剤や目薬などの医薬品メーカーでもあります。P&Gはアメリカに本社のある世界最大の消費財メーカーであり、洗剤、芳香剤、紙おむつなどの幅広い製品が世界中で使われています。社会貢献活動に熱心な会社でもあります。
(写真・「花王石鹼」の1890年の包装と、発売100周年で復刻したせっけん=東京都墨田区の花王ミュージアム)
小林製薬は「小さな池の大きな魚」戦略
小林製薬はユニークな戦略を持った会社として知られていました。まず、狙う市場はニッチ(すき間)です。ホームページには「小さな池の大きな魚」戦略と書かれています。大きな市場にはたくさん競争相手がいるため戦っても低い利益率しか得られないが、小さな市場には競争相手が少なくそこで占有率を高めれば高い利益率が得られるという考え方です。「あったらいいな」開発という言葉もホームページに出ています。潜在的ニーズを発見するアイデアを出し、とにかく速いスピードで開発。わかりやすい商品名をつけて、テレビ広告をどんどんうちます。小林製薬はこうして成長し、2023年12月期まで純利益は26期連続で増益でした。ただ、今回の健康被害問題により今後の展開は不透明です。
ユニ・チャームの海外売上比率は66.5%
各社とも海外での製造や販売に力を入れています。日本の人口が減少に入っているため、こうした消費財の国内需要が頭打ちになりつつあるためです。海外では、日本の紙おむつやヘルスケア商品などの品質への信頼は高く、人気があります。中でもユニ・チャームの国際化はめざましく、海外売上比率は66.5%に上っています。特にアジアに強く、アジアだけで46.5%に上っています。花王も海外売上比率が44.3%あり、この比率は1990年に比べると3倍になっています。海外で働く花王グループの社員は11000人を超えています。ライオンの海外売上比率は33.3%で、ユニ・チャームや花王に比べると低くなっていますが、今後、比率は上がっていくものとみられます。
(写真・サウジアラビアのリヤドにあるユニ・チャームの女性専用の工場=2019年)
商品の知名度は高いが、ロングセラーになるには
消費財業界の会社や商品には知名度が高いという特徴があります。ひんぱんに買い替える日用品が主力のため、テレビコマーシャルに力を入れる会社が多いことが一因です。ただ、一時的に耳に残った名称の商品でも、ロングセラーになる商品はそう多くはありません。生き残るのは、それまでになかった要素を備えていることで、生活になくてはならなくなった商品です。そうした商品を開発するためには、技術力だけでなくアイデアが重要になります。わたしたちが生活するうえで日々必要とするものですから幅は広く、アイデアはまだまだ出てくるはずです。そうしたことを考えることが好きな人には、面白い仕事になるのではないでしょうか。
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