業界研究ニュース 略歴

2021年04月16日

松山選手メジャー優勝に沸くゴルフ業界 コロナ禍も追い風【業界研究ニュース】

化粧品・生活用品

松山選手の優勝を追い風にできるかゴルフ業界

 ゴルフの松山英樹選手が男子ゴルフのメジャー大会 マスターズ・トーナメントで優勝しました。男子ゴルフのメジャー大会で日本人が優勝したのは初めてで、大きなニュースになりました。ゴルフ用品やゴルフ場などゴルフ関連業界は松山選手の優勝が追い風になると沸いています。ゴルフ関連市場は長く縮小傾向が続いています。バブル期に膨れた市場は、接待ゴルフが激減したことや若者のゴルフ離れにより当時の半分になっています。そんな業界をコロナ禍が襲い、さらに大きな打撃が心配されました。しかし、ゴルフは密を避けられるスポーツという認識が高まり、昨年秋以降予想外の活況になっています。松山選手の活躍に意外な活況。この機会に若者を取り込むことができると、長期低落の流れを止めることができるのではないかという期待が業界に出ています。(ジャーナリスト・一色清)

(写真は、オンライン会見に臨む松山選手=2021年4月14日)

市場規模はピークの半分以下

 日本のゴルフ関連市場の規模は、経済産業省によると2018年で約1兆3000億円。ピークだった1993年の半分以下になっています。ゴルフ場の数はピークだった2002年には2460施設ありましたが、2019年には2227施設に減っています。ゴルフをする人が減っていることが原因で、日本生産性本部が出しているレジャー白書によると、2019年のゴルフ参加人口は580万人で、2001年の1340万人から大きく減っています。年代別にみると、50代以上が半分以上を占めるようになっています。バブル崩壊後の接待汚職や働き方改革などを通じて企業の接待ゴルフが激減、さらに賃金の低迷で若者にゴルフをする経済的余裕がなくなってきたこともあり、ゴルフ関連業界は縮小を迫られています。

日本メーカーと米国メーカーが競り合う

 ゴルフ関連業界は、ゴルフ用品、ゴルフ場、ゴルフ練習場の三つに分けられます。この中で売上高が一番大きいのはゴルフ場で、2018年で8540億円。次に大きいのがゴルフ用品で3430億円。ゴルフ練習場は1240億円となっています。ゴルフ場を運営する会社としては、アコーディア・ゴルフPGMホールディングスが2大勢力で、大きなシェアを占めています。ゴルフ用品はクラブ、ボール、シューズ、ウエアなどに各メーカーがしのぎを削っています。クラブやボールでは、日本メーカーと米国メーカーが競り合っています。「スリクソン」や「ゼクシオ」というブランドの住友ゴム工業ブリヂストンが日本メーカーの代表格で、「キャロウェイ」「テーラーメイド」などが米国メーカーの代表格です。最近は米国メーカーに日本メーカーが押され気味です。ほかにもミズノアシックスヨネックスナイキ、アディダスなどのスポーツ用品メーカーもゴルフ用品に力を入れています。

(写真は、「スリクソン」のボールを持つ松山選手=住友ゴム工業提供)

秋以降、ゴルフ場に人が戻る

 2020年のゴルフ関連市場は大幅に縮小すると予測されていました。コロナ禍の影響を受けるためです。矢野経済研究所は2020年のゴルフ用品市場の予測を2020年9月に発表しましたが、その段階では前年比12.7%のマイナスと予測していました。それが、ここにきて5%程度のマイナスにとどまったとみられています。9月以降、ゴルフ場に人が戻ったためです。ゴルフは広々とした屋外でのスポーツで、昼食の時さえ注意すればリスクはほとんどないという認識が広まったためです。若者や女性の来場者が増えているというゴルフ場関係者の声もあります。松山選手の優勝でこの流れが加速すれば、長いトンネルを抜ける光が見えてきたといえるようになるかもしれません。

(写真は、松山選手優勝を祝ってキャンペーンを始めるゴルフ用品店=2021年4月12日、大阪市北区)

日本は米国に次ぎ世界2位

 スポーツの人気には盛衰があります。盛衰の要因は様々ですが、日本人選手が世界で活躍するかどうかも要因のひとつです。人気が上がれば、そのスポーツの関連市場は盛り上がります。ゴルフ関連市場は減ったとはいえ、まだ1兆3000億円もあります。プレー代にしても用具代にしてもほかのスポーツに比べると高めなので、市場規模が大きくなるのです。日本の市場規模は、世界でも米国に次いで2位の大きさです。この規模がこれから上を向くのか下を向くのか、ゴルフ関連業界に関心のある人は松山選手やそれに続く日本人選手の活躍に注目してください。

(写真は、松山選手の活躍も期待される東京五輪ゴルフ競技会場となる霞ケ関カンツリー倶楽部=2019年8月、埼玉県川越市)

◆人気企業に勤める女性社員のインタビューなど、「なりたい自分」になるための情報満載。私らしさを探す就活サイト「Will活」はこちらから。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

業界別

月別