今年、1年間の就職浪人を経てめでたく某大手出版社に内定した関西の大学生はんなりさん。志望する出版業界の会社はどうしても東京に集中するため、夜行バスや就活生向けゲストハウスを活用して就活にはげんでいたのですが、上京時によく足を運んでいたのが世田谷区にあります「大宅壮一文庫」です。
大宅壮一(1900~1970)は戦後のマスコミ界を長く牽引した、いわゆる「評論家」の先駆け的人物です。「駅弁大学」「恐妻」など今でも使われる言葉を多数造語したことでも知られ、その名前を冠した「大宅壮一ノンフィクション賞」は新人ジャーナリストの登竜門となっています。彼が生前に残した大量の蔵書のほとんどは雑誌。それをもとに設立された大宅壮一文庫では、日本で刊行されている雑誌のほとんどをバックナンバーも含めて閲覧することができるのです。
そこではんなりさんがやっていたことは、自分が受ける出版社の発行している週刊誌を読むこと。それも、3~4カ月前のバックナンバーを読むというのです。近くの図書館でもバックナンバーを保存しているところはあるでしょうが、大宅壮一文庫だとまとめていろいろな雑誌が見られるので便利、といいます。
なぜ3~4カ月前なのでしょうか。
「面接官に自分を印象づけるためですね。出版社だと絶対『最近興味のあった記事は?』という質問があるんですが、あまり直近の記事を出すといかにも付け焼き刃で記事を探したように思われる。でも3~4カ月前の記事からピックアップすると相手もまだ結構覚えていて、『研究熱心だな』という印象をもってもらえると思うんです」
ある社会人の大先輩からのアドバイスだったそうですが、見事その教えを守って内定をゲットしたというわけです。
このテクニック、マスコミ業界以外を志望する就活生にも使えそうです。「気になるニュース」を聞かれて、最近話題の集団的自衛権とか東京五輪問題をあげるのはいわば直球。同じニュースを取り上げる人も多いでしょうし、よほどきっちりとした、もしくは独自の視点から見た発言ができないと、面接官に自分を印象づけるのは難しいと思いませんか。
そこで役に立つのが、3~4カ月前の新聞を広げてみること。言われてみれば「あったなあ」というニュースがそこには埋もれているはずです。それを取り上げ、なぜ今でもそのニュースを取り上げるのか自分なりの理由を述べれば、独自性という点では直近のニュースを取り上げた学生よりもインパクトを与えられるのではないでしょうか。ためしに今年の5月3日(4カ月前)の紙面を見てみると、「ネパール地震から1週間」「英・キャサリン妃出産」「ボクシング世紀の一戦、パッキャオ対メイウェザー」「核抑止力依存、批判 広島・長崎市長が演説」といった記事が並んでいます。5月はこのほかにも箱根の火山活動活発化、大阪都構想が住民投票で否決、国際サッカー連盟(FIFA)幹部らが大量に収賄容疑で起訴――などのニュースがありました。
会社の志望理由を考える時もこのテクニックは使えそうです。その会社が取り組んでいる直近、最大のトピックに引き寄せるのはもちろん有効ですが、それ以外にこの会社のちょっと前の取り組みやニュースをチェックして、それに言及するとインパクトがより高まるのではないでしょうか。会社に関してはあまり古いトピックだと「実はそのプロジェクトは失敗に終わっていたんだ」ということもありますので扱いは慎重にしたほうがいいでしょうが、面接時に使える「持ち駒」を増やすのには大いに役立つと思います。ちなみに会社に入っても、営業時などにこのテクニックを使えると相手の心証をよくできますよ。