一色清の世の中ウオッチ 略歴

2013年12月05日

採用試験に受験料は必要か (第25回)

エントリー絞り込みに「カネ」「コネ」論争

 「今回、初めての試みですが、新卒のかたの入社試験に受験料をいただくことにしました」。就活シーズンが始まりましたが、ニコニコ動画などを運営するドワンゴが就活生から受験料をとると発表したのには、ちょっと驚きました。
 金額は、ニコニコにちなんで2525円。エントリーシートを送る際にクレジットカードなどで受験料を払わないといけません。
 
 ドワンゴは、受験料をとることにした理由をホームページで、「本気で当社で働きたいと思っている人に受験していただきたいからです」としています。つまり、一人で100社にもエントリーできる時代になり、企業にとって採用の手間ばかりが増えているので、お金を払ってでも受けたいという本気モードの人だけに絞りたいということです。徴収したお金は、「奨学制度の基金かなにかに」全額寄付するつもりだそうです。

 ドワンゴは、過去にも15歳の高校生をエンジニアとして採用したり、自己PR動画を投稿してもらう一芸採用をしたり、2チャンネルに求人広告を出したりと、世間の話題になる採用活動をしてきました。今回の受験料徴収も話題づくりではないかという見方もあります。ただ、エントリーする人が多すぎて困っているという企業は少なくなく、ドワンゴが今の就活のあり方に一石を投じているのは間違いありません。

 前年の就活戦線でも、話題になった応募条件がありました。岩波書店が社員や著者の紹介を条件としたのです。「岩波はコネがないと応募すらできない」「コネ必要を公表するだけいい」などというコネ論争が起きました。岩波は「数人の採用予定に対して応募は一千人を超え、応募者を絞り込むための措置」と説明していました。つまり、ドワンゴが「カネ」で絞り込もうとしているのに対し、岩波は「紹介」で絞り込もうとしたわけです。ちなみに今、岩波はホームページの採用のところに「2014年度の定期採用は行いません」とだけ書いています。一般公募には懲りたのかもしれません。

 エントリーシートがあまりにもたくさん送られてきて絞り込みが大変だという声は、ネット就活時代になって以降、強まっています。人気企業では数万通のエントリーシートが届くといいますから、採用担当者で全部に目を通すのは大変です。ある程度絞り込んでから目を通すという会社もあるようで、その絞り込み方の一つとして、「大学名」でという話も聞きます。ならば、「カネ」で絞り込むほうが、まだ公平なのかもしれません。
 かつての就活では、会社訪問や面接のたびに、交通費という名目でちょっとした小遣いがもらえたそうです。それが、就活生が会社にお金を払うとは。「昔はよかった」と、若い就活生だって思ってますよね。