背景にグローバル化
就活ルールは1953年に企業側と大学側が結んだ「就職協定」以来、何度も見直されてきました。「学業優先」を訴える大学の要望を受けて経団連などがルールを決めるものの、少しでも早く優秀な学生を確保したい企業のルール破りが横行してなし崩しに――の繰り返しです。
ただ、今回の中西会長の発言には、今の時代ならではの事情もあります。グローバル化です。いま日本の企業は、人材獲得でも世界の企業と激しい競争を繰り広げています。外資系の企業は経団連のルールにとらわれず、3年夏のインターンシップから採用を始めたり、就職希望者を一年中募る「通年採用」をしたりして優秀な人材を次々に採用しています。経団連には、このままでは日本企業が世界の人材獲得競争に負けてしまうという危機感があるのです。
「通年採用」拡大か
これまでほとんどの日本企業は、年度ごとに一括して学生を募集し、在学中に内定を出して卒業直後の4月に一斉に入社させる「新卒一括採用」をしてきました。短期間に効率的に採用できるだけでなく、入社後の研修なども年次ごとに同時にできるため、企業には人事管理がしやすいメリットがあります。「年功序列」「終身雇用」との3点セットで日本独特のシステムと言われます。長く勤めれば給料が上がっていく年功序列をやめて、欧米流の「成果主義」を取り入れる企業も増えています。通年採用の広がりは、日本型の雇用システムが変わるきっかけになるかもしれません。
通年採用の意義や狙い、評価については、ファーストリテイリング、ソフトバンクの「人事のホンネ」、ユニリーバを取り上げた就活ニュースを、新卒一括採用の是非については「『新卒一括採用』の功罪 渦中にいる君たちへ」を読んでみてください。
(写真は、「人事のホンネ」に登場したソフトバンクの源田泰之さん)
何が起きる?
◆人材獲得競争が過熱し「青田買い」が激化。大学2年、1年生からとエスカレートすれば、「やっと入学したと思ったら、すぐに就活スタート」なんてことにもなりかねない。大学の勉強どころじゃなくなる? 大学の教育崩壊?
◆早期化すれば、学生も企業もじっくり見極めようとするため就活は長期化する。「4年間ずっと就活」という学生も?
◆早くから、しかも長く就活に振り回されれば、学業がおろそかになる学生は増える。「内定もらったのに、卒業できない」学生が?
しかし、見方を変えればこんなメリットもありそうです。
◇学生はじっくり企業選びができ、企業もじっくり学生を選べるためミスマッチが減る。入社3年で3割が離職するため「3年3割」といわれる早期離職が改善?
◇学業、留学やサークル活動などに注力する時期と就活する時期を、自分で決められる。自分の都合、予定に合わせて就活ができるようになる。
◇早い時期に志望する企業の内定を得られれば、そのあと安心して研究や留学に没頭できる。
(写真は、就活解禁日に合同説明会に来場した学生たち=3月1日、福岡市中央区)
どうすればいい?
今の3年生の夏からのインターンシップで始まる就活日程でも、実は同じことが言えそうです。早めにしっかり考えて、自分の意思でインターンを選んで貴重な経験を積めた人は、自分に合う企業に出合えています。将来を考えることを先延ばしして解禁直前になって慌てて準備を始めた人は、なかなかうまくいっていないのが実情です。いま2年生以下のみなさんは、ルールがどうなろうと自分の将来を見据えて早めに考えること、動くことが大事です。
(写真は、選考解禁日に面接会場に向かう学生たち=6月1日、東京都渋谷区)
採用活動は「長期休み限定」に!
最後に、今後の採用をどうすべきかについての私見です。「学業優先」を優先させつつ、学生と企業の出会いをある程度早めてミスマッチを減らすには、採用活動を大学の夏休み、冬休み、春休みに集中して行うしか道がないように思います。さすがに、1年生から「青田買い」に走る企業は多くないでしょう。「学業に配慮し、採用活動は長期休みに限定」などの合意、あるいは紳士協定を目指すべきだと考えます。今後の議論の展開を注視したいと思います。
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2021/01/27 更新
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