ニュースのポイント
ユニリーバ・ジャパンが、大学1年生から大卒3年後までいつでもどこでも応募でき、入社のタイミングも選べる新しい新卒採用制度を導入しました。いま就活中のみなさんも、もちろん応募できます。大学に入ってすぐに就活を始めようという人は多くはないでしょうが、留学など自分の予定に合わせて都合の良いときに受けることができます。選考方法も、エントリーシート(ES)を廃止し、オンラインでのゲームやデジタル面接を実施するなどユニークです。経団連が定める就活スケジュールが形骸化するなか選択肢が広がりそうです。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(7面)の「ユニリーバ 大学1年で内定も/通年で応募可能に 留学の学生に配慮」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
いつでもどこでも
ユニリーバが19日に発表したプレスリリースでは、「革新的な新卒採用制度『UFLP365』を導入~1年を通じて世界中どこからでも応募可能な、ポテンシャルを重視した選考を実施~」とうたっています。「UFLP365」は、「ユニリーバ・フューチャー・リーダーズ・プログラム365」の略で、1年365日、「いつでもどこでも自分の未来を考えられるように」という趣旨だそうです。
ESなし、ゲームで選考
選考方法も変わっています。ESはなく、1次選考で学生はオンライン上でさまざまなゲームをします。ゲームを通じて能力や性格、考え方の傾向などを測定する仕組みです。2次選考もオンラインでのデジタル面接で、ユニリーバ独自の課題に答えます。いずれも、ユニリーバ社員としてのポテンシャルを見極めるために開発しました。ここまではオンライン上で実施するため、世界中どこからでも、スマホでも受けられます。
その後、リアルな人事面接、最終面接がありますが、最終面接までの間と、内定してから入社するまでの間を、それぞれ最大2年間空けることできます。その間に大学院進学や海外留学もできます。たとえば1年生のうちに応募して選考が進んでも、途中で留学をしてさらに成長してから最終面接に臨む、あるいは内定を得てから2年間やりたいことに没頭してから入社――といったこともできるわけです。入社時期は4月と10月から選べます。かなり自由度が高い制度ですね。ただ、応募資格には「基礎的な英語力のある方(TOEIC換算800点以上)」のラインがあるので注意してください。
WAAが話題
ユニリーバ・ジャパンは、「ラックス」や「リプトン」などのブランドをもつ世界的な消費財メーカーの日本法人で、ダイバーシティー(多様性)の推進を経営戦略に掲げています。2016年7月に、働く場所、時間を社員が自由に選べる人事制度「WAA(Work from Anywhere Anytime、ワー)」を導入して話題になりました。平日午前6時から午後9時の間なら勤務や休憩の時間を自由に決められ、勤務時間は1日1時間でも細切れでもOK。自宅やカフェ、図書館など好きな場所で働ける制度です。今回の新卒採用制度も、このダイバーシティーの考え方に基づくものです。
広がる通年採用
通年採用を導入する企業は徐々にですが、増えています。
◆「ユニクロ」のファーストリテイリング 大学1、2年生から応募でき、一定の選考を通過するとパスポートを発行。3年以内は提示すればいつでも最終面接を受けられる
◆ヤフー 30歳以下で入社時に18歳以上の人なら新卒・既卒にかかわらず誰でも通年でエントリーできる
◆リクルートライフスタイル 大学3年から27歳までいつでもエントリー可能。卒業後2年以内で入社時期を選べる
経団連の「大学3年の3月広報解禁、4年の6月面接解禁」という就活スケジュールは、加盟企業でも一部の守る企業、守ったふりをして先行採用する企業に分かれ、外資系、IT系をはじめ加盟していない企業は「無視」と、すでに形骸化しています。通年採用が当たり前になってくれば、経団連の指針自体が意味をなくすかもしれません。
ユニリーバのHPには、「キャリアを考えることに、遅いも早いもありません」という言葉が載っています。たしかにその通り。いずれにせよ、自分のキャリアについて真剣に考えることなしに、納得のいく就職はあり得ないことだけは間違いありません。
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